かかりつけ薬剤師の本質的業務と機能強化のための調査研究

文献情報

文献番号
201605012A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師の本質的業務と機能強化のための調査研究
課題番号
H28-特別-指定-014
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
望月 正隆(東京理科大学 薬学部 薬学科)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿村 恵明(東京理科大学 薬学部 薬学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,865,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬局における薬剤師の業務について、従来の対物業務を中心としたものから、患者が医薬分業のメリットを実感できる対人業務中心のものへとシフトするためには、薬剤師の本質的な業務が何かを整理することが重要である。本研究では薬剤師の業務のうち、薬局において、かかりつけ薬剤師が実施すべき本質的業務の内容、薬学的管理・指導の質を向上させるための方策等について整理を行うとともに、対人業務の推進に向けた課題を検討することを目的とした。 また、分担研究では、今後、患者のための薬局ビジョンの実現に向けて、患者本位の医薬分業の質を評価する指標を全国的に把握する調査手法等について検討することを目的とした。
研究方法
本研究では、過去から現在の医薬分業の流れを踏まえつつ、法的な観点、患者中心の医療及び医療安全の確保という観点から、薬剤師業務について整理した。また、「患者のための薬局ビジョン」で求められている対物業務から対人業務へのシフトについて、対人業務の質の向上のための取組事例を示した。さらに、対人業務を推進するために必要な時間の確保や業務の正確性を高める目的で調剤機器・鑑査支援機器の現状を調査した。分担研究では、医薬分業の質を評価するための効率的なデータの入手方法として、各都道府県で実施されている「薬局機能情報提供制度」を今後活用することを考え、その実態調査により現状の問題点の抽出を行った。また、「薬局機能に関する実態調査」を通じて指標や調査手法の妥当性を検証し、医薬分業の質の評価により効果的な具体的方法について検討した。
結果と考察
薬剤師は患者や住民に品質の担保された医薬品を供給するという役割を担っており、調剤の過程においても、薬剤の有効成分を始めとした化学物質の専門家としての役割を発揮することの重要性が改めて確認された。患者本位の医薬分業を実現するためには、医師の処方に基づき調剤するだけでなく、薬剤師が有する薬学的知見を活かし、処方医と連携の下で、主体的に患者に対する医療の提供に関与するとともに、それに伴う責任を薬剤師は負っているということを自覚させるような意識改革が必要である。薬剤師は、対人業務の質の向上に努めるだけでなく、薬剤師の業務について、地域住民、患者及び多職種に対して自ら普及・啓発していかなければならない。薬剤師が薬剤の有効成分を始めとした化学物質の専門家であり、その知識に基づいた薬学的管理・指導という対人業務をも職能としていることを伝えていく必要がある。
都道府県における薬局機能情報提供制度の実態調査結果では、現状では都道府県によって報告時点や報告時期にばらつきがあり、統一性のあるデータを取得することが困難であることが判明した。
薬局機能に関する実態調査では、複数の医療機関の処方箋を受け付けた患者数は、指標として活用できるが、回答が困難であったため、このような数が把握できるような方法について検討する必要がある。要指導医薬品・一般用医薬品への取組や在宅業務への取り組みについては、現状ではあまり進んでいなかったが、地域包括ケアシステムで活躍する薬局の質の評価に重要な評価項目となると考える。また、医療機関への受診勧奨の数や相談応需業務の数は、かかりつけ薬局機能の評価の1つとして有用と考える。疑義照会については、形式的疑義照会を除いた薬学的疑義照会のみを指標とすることが望ましい。医薬品の副作用等の発生情報をPMDAに報告したことがある割合は、少なかったが、これらの報告の有無を薬局の指標とすることも検討すべきである。
結論
「患者のための薬局ビジョン」の実現に向けて、薬剤師・薬局は地域包括ケアシステムの下で患者に医療を提供する地域のチーム医療の一員としての自覚を持ち、患者の薬物療法の安全性・有効性の向上に資するよう、本研究により収集された事例等を参考にして、薬学的管理・指導の質の向上を目指して継続的な自己研鑽を行い、個々の患者に応じた業務に努めることが必要である。これにより、真の患者本位の医薬分業が実現できるものと考える。また、 都道府県の公表情報から指標を集めて解析できるようにするためには、今回把握した薬局機能情報提供制度の実態を踏まえて、制度を改善していく必要がある。薬局機能に関する実態調査の結果から、重要と考えられる指標について、全国の薬局での取組実態が「見える化」されれば、各薬局が自局の取組状況が全国でどれくらいの位置にあるのかを知ることができるようになり、これを元として、各薬局レベルでのPDCAサイクルの実施が可能となる。かかりつけ薬剤師・薬局を評価する指標だけでなく、それを把握・分析する体制も含めた議論を今後さらに発展させ、最終的には全国的なかかりつけ薬剤師・薬局の機能強化につながることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605012C

収支報告書

文献番号
201605012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,524,000円
(2)補助金確定額
10,821,555円
差引額 [(1)-(2)]
702,445円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,021,350円
人件費・謝金 2,184,973円
旅費 375,552円
その他 3,742,680円
間接経費 2,497,000円
合計 10,821,555円

備考

備考
当初の計画より、旅費を節約することができたため、余剰金が発生した。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-