臨床検査における品質・精度の確保に関する研究

文献情報

文献番号
201605006A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床検査における品質・精度の確保に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
矢冨 裕(東京大学 医学部付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮地 勇人(東海大学医学部 基盤診療学系臨床検査学)
  • 村上 正巳(群馬大学 医学部附属病院)
  • 佐々木 毅(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療において、検体検査の品質・精度を確保することは極めて重要であるが、我が国の法令上では、検体検査の結果の質を担保する事項について、医療機関から業務委託される場合にのみ医療法と臨床検査技師等に関する法律(以下、臨検法)において規定されているが、医療機関自らが検体検査を実施する場合においては、これまで、その品質・精度を確保するための基準は定められていなかった。また、従来の医療法施行令及び臨検法上の検体検査の分類は、現在の検体検査体系と乖離しており、今後の臨床検査の発展に追随できない危惧がある。以上の状況を踏まえ、本研究では、現行法(医療法、臨検法)における検体検査の品質・精度の確保のために必要な項目を挙げ、それに解説を加えることを目的とした。
研究方法
研究参加者がそれぞれの専門性を踏まえ、現在の我が国の検体検査における現況、諸外国における検体検査の状況、遺伝子関連検査・染色体検査における品質・精度の確保のあり方、病理学的検査における品質・精度の確保のあり方を研究・調査するとともに、その結果も踏まえた上で、計9回の対面の会議で議論を行い、1.医療機関が自ら検査を実施する場合に設定する基準、2.衛生検査所及びブランチラボに追加すべき基準、3.遺伝子関連検査等を実施する場合に追加的に設定する基準、4.検体検査の分類に関して、意見をとりまとめた。
結果と考察
【医療機関が自ら検査を実施する場合に設定する基準】
 一律の基準として採用するものとして、臨検法を参考に、構造設備関係、管理組織関係の基準を設定した。内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検に関しては、検査結果の質の確保・維持のためには大変重要であるが、本邦の医療機関の現状を踏まえ、画一的に基準として導入することは困難と考えられたため、全医療機関に対しては、これを努力義務として求めることが現実的であると考えられた。ただし、高度な医療の提供を担う特定機能病院、臨床研究の実施において中核的な役割を担う臨床研究中核病院については、その果たすべき機能に鑑みて、内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検を義務とすることが適当と考えられた。
【衛生検査所及びブランチラボに追加すべき基準】
 衛生検査所及びブランチラボについては、それぞれ、臨検法及び医療法において細かな規定が設定されてきたが、臨床検査の品質・精度管理に関連する部分では、外部精度管理についての基準の整備が不十分であると考えられた。また、昨今重要視されている個人情報の保護や情報セキュリティーなどについても、時勢に合わせた基準に修正する必要があると考えられた。これらを中心に、衛生検査所及びブランチラボに追加すべき基準を定めるべきと考えられた。
【遺伝子関連検査等を実施する場合に追加的に設定する基準】
 遺伝子関連検査等は、その検査結果が臨床診断において特に影響が重大であるため、内部精度管理の実施、外部精度管理調査への参加・受検を義務として求めるべきものと考えられた。さらには、遺伝子関連検査等の品質・精度管理の保証の確保・継承のためには、適切な研修・教育・トレーニングなどのシステムを構築・継続維持することが重要と考えられた。検査施設の第三者認定については、遺伝子関連検査等の質の保持や、セキュリティー確保など、国際的基準のISO 15189等に準じた高い施設基準や設置運営規則が必要との判断に至ったが、遺伝子関連検査には多種のものが存在し、各々、精度評価が異なるため、検査の性質に即して必要性を吟味すべきと考えられた。そのため、施設で実施される遺伝子関連検査の内容によっては例外的な対応が必要と考えられた。
【検体検査の分類】
 新たな一次分類「遺伝子関連検査・染色体検査」を設定し、その中に、病原体核酸検査、体細胞遺伝子検査、生殖細胞系列遺伝子検査、染色体検査の4つの二次分類項目を設定することが適当と考えられた。また、尿・糞便・寄生虫等一般検査を新設して、この中に寄生虫検査を含めるべきと考えられた。病理検体を用いる体細胞遺伝子検査については、病理学的検査から遺伝子関連検査・染色体検査に移行させることに対する二つの考え方が示された。
結論
以上、本研究により、検体検査の品質・精度を確保するために必要な項目が明確になり、予定されている医療法への新たな基準設定や臨検法の基準の見直しなど、今後関係法令等を改正する上での基本資料となることが期待される。ただ、今後、本研究成果を元に、検討会等の公開の場で議論される必要がある。また、本邦の医療機関は規模、機能が多様であり、院内で実施されている臨床検査の実態も多様であることから、基準・規定を策定する上で、現状に即した検討が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605006C

収支報告書

文献番号
201605006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,755,000円
(2)補助金確定額
1,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
180,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,117,790円
人件費・謝金 0円
旅費 52,858円
その他 0円
間接経費 405,000円
合計 1,575,648円

備考

備考
自己資金 648円

公開日・更新日

公開日
2018-02-21
更新日
-