人工芝グラウンド用ゴムチップの成分分析及びその発がん性等に関する研究

文献情報

文献番号
201605004A
報告書区分
総括
研究課題名
人工芝グラウンド用ゴムチップの成分分析及びその発がん性等に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年人工芝を敷設したグラウンドが増加しており、これらには主に廃タイヤから製造されたゴムチップが充填剤として使われている。米国では女子サッカー選手の血液性のがん発症とゴムチップの関連性が報じられ、不安が高まった。2016年2月に米国環境保護庁(EPA)等は、人工芝用のゴムチップの安全性に関して調査研究を実施すると発表した。欧州化学品庁(ECHA)やオランダ国立公衆健康環境研究所(RIVM)なども調査研究を進めており、我が国でも同様に調査が必要である。本研究は、人工芝用ゴムチップの発がんリスク等の健康影響評価に資する情報を収集することを目的として、日本国内で流通しているゴムチップを対象に成分分析及び発がん性等の情報収集を実施した。
研究方法
人工芝施工業者10社から人工芝用ゴムチップ46製品を入手し、含まれる金属類、多環芳香族炭化水素類とその類縁化合物(PAHs等)、及び加硫促進剤や老化防止剤等のゴム添加剤並びにそれらに由来する化合物(ゴム添加剤等)、揮発性有機化合物(VOCs)を分析した。既存文献から選び出した、ゴムに関連し人工芝グラウンドで検出される可能性のある物質、及び化学分析で検出された複数の物質を抽出し、国際的評価機関による評価書等からそれらの発がん性等の情報を収集した。さらに、米国ワシントン州や欧州関係各局における評価状況を合わせて調査した。
結果と考察
ゴムチップ中の金属類に関して、Zn、Fe、Alの濃度は他の元素に比べて高い値を示した。Pbの濃度の最大は29μg/g、Hgは最大でも0.1μg/g未満であった。2製品には他の製品に比べて高い濃度のCrが検出された。PAHs等は46化合物を測定対象にし、32化合物を検出した。ECHAはゴムチップの健康リスク評価にベンゾ[a]ピレン等8種類のPAHsの濃度の合計値を用いているが、比較すると、本研究で分析した製品中のそれらのPAHsの濃度の方が低かった。加硫促進剤、老化防止剤等のゴム添加剤36化合物を対象にGC-MS及びLC-MS/MSでターゲット分析し26化合物を定量した。ノンターゲット分析では可塑剤など16化合物を検出、定量した。これらについて得られた濃度はゴム製品としては想定される範囲内であった。ゴムチップから空気中に揮発する可能性のあるVOCsの特定を目的とした成分分析を行った。対象とした44化合物のうち28化合物を検出したが、ベンゼンは定量下限未満であった。ゴムチップに関わる文献・資料、あるいは化学分析で検出された物質から126物質を抽出し、その発がん性等の有害性情報を収集し、評価シートを作成した。この評価結果は、今後詳細な暴露及びリスク評価を行うことが必要になった際に、有用な情報を提供するものと考えられた。RIVMは人工芝競技場から採取したゴムチップの有害化合物の溶出量が少ないことを示し、健康リスクは無視できると結論づけている。ECHAは、既存の学術文献及び最近の複数の研究結果を基に、人工芝競技場に使用されるリサイクルゴムチップ中のPAHs、金属類等について初期評価し、発がん等の健康リスクは低いと評価した。米国ワシントン州保健局の疫学調査では、州住民におけるがん発症率とサッカー選手におけるがん発症数に差がないことが報告されている。EPAは現在暴露評価に関する調査研究を進めており、2017年後半に報告する予定であり、ECHAはEPAの報告書を踏まえ再評価を行うこととしている。
結論
本研究は、人工芝用ゴムチップの発がんリスク等の健康影響評価に資する情報を収集することを目的として実施した。国内で使用されるゴムチップのほとんどを入手し、それらに含まれる金属類、PAHs等、ゴム添加剤等、及びVOCsを分析した。また、人工芝グラウンドで検出される可能性のあるゴム関連物質について、国際的評価機関による評価書等から発がん性等の評価情報を収集して評価シートを作成し、それらの物質を特に発がん性に基づき分類した。さらに、諸外国公的機関における人工芝用ゴムチップに対する評価状況を合わせて調査した。ECHAは既存の研究結果を基に、RIVMはゴムチップに含まれる化合物の曝露レベルが低いことから、ゴムチップによる発がん等の健康リスクは低いとした。今後、本研究成果をもとに曝露評価を実施するとともに、今後公表されるEPAの報告書などの国際的な動向を踏まえながら、日本国内で流通される人工芝グラウンド用ゴムチップの健康リスクについて、評価を行うことが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605004C

収支報告書

文献番号
201605004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,223,762円
人件費・謝金 0円
旅費 51,522円
その他 4,724,885円
間接経費 0円
合計 8,000,169円

備考

備考
自己資金として169円支出しました。

公開日・更新日

公開日
2018-05-08
更新日
-