ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)達成に寄与する要因の解明と我が国による効果的な支援施策に関する研究

文献情報

文献番号
201604005A
報告書区分
総括
研究課題名
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)達成に寄与する要因の解明と我が国による効果的な支援施策に関する研究
課題番号
H28-地球規模-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克(公益財団法人結核予防会 結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大角 晃弘(公益財団法人結核予防会 結核研究所)
  • 岡田 耕輔(公益財団法人結核予防会 結核研究所)
  • 伊達 卓二(保健医療経営大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,603,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本を含むいくつかの工業先進諸国とアジア・アフリカ諸国におけるUHCの達成状況に関する情報を収集・比較分析し、1960年代にUHCを達成した日本を一つのモデルとして、結核対策とUHCの発展との関係と、結核対策がUHC達成に寄与した要素を明らかにし、我が国としての支援施策について具体的に提言する。
研究方法
本研究は、日本及び他の先進国やアジア・アフリカ諸国のUHCに関する既存の関係資料や関係者からの面接及び電子メール等による情報収集、情報を整理・分析することによるUHC達成状況の評価、UHC達成の阻害要因と促進要因の検討、UHC達成と結核対策との関連性の検討からなる、記述的研究である。調査対象国は、(1) UHCをすでに達成している国々(UHCの達成成熟期の国々):日本、英国、カナダ。(2) UHC達成を目指している国々(UHCの達成準備・開始期、拡大期の国々):フィリピン、タイ、カンボジア、ケニアとした。面接調査対象者は、各調査対象国を担当する研究(協力)者が、UHC達成状況についての知見を提供する人材として適当と考えられる人材を選定し、各国の状況に応じて適宜変更してUHC達成状況に関する情報を収集した。
結果と考察
日本におけるUHC成立の背景については、1.戦後の民主化、公衆衛生の強化、社会主義政党や労働運動の拡大等により社会保障が拡充していった、2.第二次世界大戦後の復興と経済成長が皆保険制度の基盤を支えた、3.日本国民の強い連帯感と地域への帰属意識が、医療における不平等は容認できないという世論を形成した、4.初期の社会保障において公的医療保障制度が重要な役割を果たした、5.皆保険に好意的な与党政策、地域保健等の好機があった。日本の保健所における保健師の活動は、訪問活動を中心として地域の住民のニーズを把握し、住民と行政の橋渡しの役割を担い、住民参加の活動へ発展させていく、プライマリヘルスケア(PHC)レベル専門職のモデルともいえるものであった。フィリピンでは、1995年に国民健康保険法が制定されたことにより、the Philippine Health Insurance Corporation(PhilHealth)が設立された。PhilHealthが提供する保健医療サービスのうちのTB-DOTSパッケージは、2003年にPhilHealthによるPHCの外来医療サービスの一環として導入されたが、その後に導入されたMalariaパッケージやHIV/AIDSパッケージ等の見本となった。カンボジアでは、母子保健や結核治療成功率などの保健指標に着実な改善がみられる一方、入院率、保健従事者密度等の保健システムに関する指標は、十分に達成されているとはいえなかった。貧困層を対象にしたHealth Equity Fundや公的セクターの就労者向けのNational Social Security Fundも導入されているが、人口の大多数を占める農民は、十分にカバーされていなかった。タイにおけるUHCは、2001年に確立したUCS(Universal Coverage Scheme)と呼ばれる医療サービス(公的医療保険)に支えられており、近年は、全人口の約75%がUCSに属している。UCS導入後、医療費により家計に支障をきたす家族の数も減少しており、UCSによる医療サービスが実際に活用されていることが示唆された。ケニアでは、結核やHIV感染症のような疾患に罹患した場合、日常生活における経済的側面への影響は大きく、生活資金の支援など包括的な社会保障体制が求められる一方、社会保障を支える経済成長や政治的関与なども重要と考えられた。
結論
日本におけるUHC成立には、公衆衛生、皆保険、社会保障の拡充の中で、結核対策や母子保健を担う保健所保健師の活動が基礎を構築した。フィリピンでは、2003年に導入されたPhilHealthの医療サービスの一つであるDOTSパッケージは、その後の外来医療サービスパッケージの雛形としての役割を果たした。カンボジアでは、総保健支出増加を抑制してUHC実現の条件整備を行うには、家庭やコミュニティーにおける疾病予防活動の強化が必要と考えられた。タイでは、結核対策上、私的医療機関との連携、人口移動/都市部の結核、マイノリティーへの対応などの課題が挙げられ、これらの課題におけるUHC及び結核対策の関連について、さらなる調査・検討が必要である。ケニアでは、保健省が導入している医療情報ネットワークシステム(DHIS)や結核患者情報システムのTibu、NHIFの電子マネーなど、インターネットや情報通信システムを使い、保健システム強化が行われており、UHC達成を促進する支援策としての可能性を検討するために、今後も調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201604005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,683,000円
(2)補助金確定額
4,683,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 254,432円
人件費・謝金 608,400円
旅費 2,346,188円
その他 319,094円
間接経費 1,080,000円
合計 4,608,114円

備考

備考
研究資金を期間内に適正に執行した結果、平成28年度分については不足とはならず、一部余剰が出た為(不足となった場合は自己資金で充当を予定していた)。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-