文献情報
文献番号
201604002A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア、ASEAN諸国の人口高齢化と人口移動に関する総合的研究
課題番号
H27-地球規模-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 中川雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 佐々井司(福井県立大学 地域経済研究所)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 中川聡史(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本を追って急速な経済発展を果たしたアジアNIEsと中国に続き、発展の波はASEAN諸国へと波及している。これらの国々では出生率が急激に低下し、日本以上に急速な高齢化が予想される。東アジア・東南アジアの多くの国で人口ボーナスは消失しつつあり、十分な経済発展と社会保障制度の整備が達成される前に人口高齢化の負の影響が現れる「未富先老」が懸念される。世界で最も高齢化した日本の先行事例を伝えるとともに、これらの国の政策対応を比較分析することは、日本に有益な示唆を与え得る。同時に大都市への人口集中が地方の高齢化を加速させ、高齢化が外国人労働者、国際結婚、退職者の移住等を促進する側面にも注目する必要がある。
研究方法
本事業においては、まず東アジア、ASEAN諸国における人口変動過程(少子化、長寿化、高齢化、国内・国際人口移動等)および関連する政策(少子化対策、家族政策、健康医療介護政策、地方分権政策、移民政策等)の比較分析により、個々の特徴や問題点を明らかにする。また、人口変動に対処する社会保障制度、とりわけ高齢化により需要が急増する医療・介護人材に関する比較を行い、現状や課題、対応策などの多様性を明らかにし、各国の介護政策のあり方とともに、わが国の医療・介護施策の東アジアでの位置、施策の普遍性、今後のあり方に資する知見を得ることを目指す。さらに低出産・高齢化と国内・国際人口移動の交互作用、及び政策との関連を分析する。
結果と考察
日本・韓国・台湾・シンガポールが外国人労働者・外国人花嫁の受入国であるのに対し、シンガポール以外のASEAN諸国は送出国の性格が強い。中国は送出国と受入国の両面を持つと言える。比較的厳格な出入国管理を維持している東アジア諸国に比べ、ASEAN域内の国際人口移動は相対的に多いと思われる。マレーシアはシンガポールに次いで受入国の性格が強く、インドネシア人、フィリピン人、シンガポール人、タイ人が多く滞在している。インドネシアは送出国の性格が強く、女性の出国者が増加している。中国やASEAN諸国の労働者・人材に対しては、今後分野によって日本・韓国・台湾といった受入国の間で獲得競争が激化する可能性がある。
結論
出生率低下の原因は、若年労働市場の悪化、教育費の高騰、家族親和的でない状況下での女性の労働力参加といったポスト近代的変動で、都市化は出生率低下の第一動因ではない。都市化を出生率低下の主犯とみなす議論は、日本以外ではほとんど見られない。韓国では圧縮的都市化により高齢者への家族支援の弱体化が進んだが、台湾は都市化が緩慢で状況はは韓国ほど悪化していない。韓国が首都機能移転に踏み切ったのは、ソウル首都圏への一極集中を問題視したためで、政策が人口分布にどの程度影響を与え得るかの重要な試金石となる。中国は農村戸籍者を都市住民に編入することで社会保障を拡充しようとしているが、高齢化の速度に追いつけない懸念がある。
公開日・更新日
公開日
2017-05-23
更新日
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