文献情報
文献番号
201603014A
報告書区分
総括
研究課題名
Deep Learning技術を用いた腎生検病理画像の自動分類による病理診断の効率化と診断補助に関する研究
課題番号
H28-ICT-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
- 河添 悦昌(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
- 松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科)
- 中山 浩太郎(東京大学大学院工学系研究科)
- 宇於崎 宏(帝京大学 医学部)
- 堂本 裕加子(新谷 裕加子)(東京大学医学部附属病院)
- 柏原 直樹(川崎医科大学 )
- 清水 章(日本医科大学大学院医学研究科)
- 長田 道夫(筑波大学医学医療系)
- 南学 正臣(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、腎生検(糸球体)病理画像のデータベースを構築し、人工知能手法のひとつで深層学習の手法であるCNN(Convolutional Neural Network)による画像識別を活用した腎病理診断手法を開発する。またこのプロセスから得られる知見を腎糸球体病理画像診断プロセスの標準化に役立て腎病理診断の効率化と診断補助に資することを目指す。さらにその臨床現場への応用として腎病理診断支援システムを構築し、遠隔病理診断の補助機能としての活用を目指す。
研究方法
本研究は、初年度以下の5項目を実施する。1)腎生検病理画像と病理診断情報との収集体制整備の準備:画像蓄積状況を分担研究者らからヒアリングして検討した。また蛍光抗体画像デジタルデータについて所見情報とともに東大病院病理部からデータ件数の調査と試験的な収集を行った。
2)腎病理画像に対する形態所見情報の注釈付け支援システムの開発:1糸球体ごとに画像を表示して、その所見を入力登録するWebシステムを開発する。
3-1)所見分類の入力データのあり方に関する検討:手作業による「糸球体の切り出しを行った画像セット」と「オリジナルの画像セット」を作成し、CNNによる5クラス分類の識別誤差、正解率を指標とし5分割交差検定で評価した。3-2)糸球体領域抽出手法の検討:バーチャルスライドの病理画像から糸球体部分を自動的に切り出す手法としてR-CNNにより画像から糸球体部分を自動的に判別抽出処理できる手法の試験開発と評価実験を行った。4) 統一的な所見分類リストの策定:本研究で使用する統一的な所見分類リストの作成を目的として腎臓病理専門家で協議して案を策定した。
2)腎病理画像に対する形態所見情報の注釈付け支援システムの開発:1糸球体ごとに画像を表示して、その所見を入力登録するWebシステムを開発する。
3-1)所見分類の入力データのあり方に関する検討:手作業による「糸球体の切り出しを行った画像セット」と「オリジナルの画像セット」を作成し、CNNによる5クラス分類の識別誤差、正解率を指標とし5分割交差検定で評価した。3-2)糸球体領域抽出手法の検討:バーチャルスライドの病理画像から糸球体部分を自動的に切り出す手法としてR-CNNにより画像から糸球体部分を自動的に判別抽出処理できる手法の試験開発と評価実験を行った。4) 統一的な所見分類リストの策定:本研究で使用する統一的な所見分類リストの作成を目的として腎臓病理専門家で協議して案を策定した。
結果と考察
1)東大病院病理部から蛍光抗体画像デジタルデータについて以下の各染色(括弧内は件数)の画像と所見のデータベースを構築した。蛍光抗体画像デジタルデータはJPEG形式ファイルで 900KB~1400KB程度のサイズ、1920x1440程度のピクセルサイズの画像として作成されていたものの提供を受けた。総件数は約29000画像となった。
2)腎病理画像に対する形態所見情報の注釈付け支援システムの開発
糸球体1個ごとに所見を登録できるソフトウエアを開発し、そのソフトウエアを用いて腎病理専門家が所見を登録できるようにした。
3-1)所見分類の入力データのあり方に関する検討
IgG染色による3903枚の画像から1874枚をランダムに選択し対象とした。オリジナル画像を入力とした場合(上)のほうが、糸球体切り出し画像を入力(下)とした場合よりも、誤差曲線、Accuracy曲線ともによい傾向を示した。切り出し処理しない元画像のままのほうが精度がよいことが示された。しかし切り出し範囲の取り方に影響されている可能性もあり、さらなる検討が必要であった。
3-2)糸球体領域抽出手法の検討
精度についてはさらに向上させる余地があるものの、R-CNN手法により画像から糸球体部分を自動的に判別抽出処理できる手法の試験開発できた。
4)統一的な所見分類リストの策定
検討のたたき台として蛍光抗体法画像所見リスト、光学顕微鏡画像所見リストを作成した。(±)所見については所見をつける段階では認めておき、データ処理時には陰性(マイナス)とみなすことがよいと考えられた。疾患によって指すものが違うので、診断標準化に際しては各所見の定義を疾患別に明確にすべきと考えられた。
2)腎病理画像に対する形態所見情報の注釈付け支援システムの開発
糸球体1個ごとに所見を登録できるソフトウエアを開発し、そのソフトウエアを用いて腎病理専門家が所見を登録できるようにした。
3-1)所見分類の入力データのあり方に関する検討
IgG染色による3903枚の画像から1874枚をランダムに選択し対象とした。オリジナル画像を入力とした場合(上)のほうが、糸球体切り出し画像を入力(下)とした場合よりも、誤差曲線、Accuracy曲線ともによい傾向を示した。切り出し処理しない元画像のままのほうが精度がよいことが示された。しかし切り出し範囲の取り方に影響されている可能性もあり、さらなる検討が必要であった。
3-2)糸球体領域抽出手法の検討
精度についてはさらに向上させる余地があるものの、R-CNN手法により画像から糸球体部分を自動的に判別抽出処理できる手法の試験開発できた。
4)統一的な所見分類リストの策定
検討のたたき台として蛍光抗体法画像所見リスト、光学顕微鏡画像所見リストを作成した。(±)所見については所見をつける段階では認めておき、データ処理時には陰性(マイナス)とみなすことがよいと考えられた。疾患によって指すものが違うので、診断標準化に際しては各所見の定義を疾患別に明確にすべきと考えられた。
結論
蛍光抗体画像を対象としたDeep Learningによる画像分類の基本的な方針、チューニング手法、糸球体部分の自動画像抽出手法の確立について必要な知見が得られたことに加え、次年度に向けて必要な光顕画像データ収集体制構築の準備ができた。また所見分類リストを国際分類(Oxford分類)に従って統一基準のたたき台が作成できた。さらに糸球体毎に所見を登録でき蛍光抗体画像と光学顕微鏡画像の両方に適応できるWebソフトが完成し、これを用いた正解ラベル(所見)の登録環境が整った。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
-