文献情報
文献番号
201603013A
報告書区分
総括
研究課題名
病理デジタル画像・人工知能技術を用いた、病理画像認識による術中迅速・ダブルチェック・希少がん等病理診断支援ツールの開発
課題番号
H28-ICT-一般-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 毅(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 高澤 豊(がん研究会がん研究所)
- 山口 拓洋(東北大学大学院医学系研究科)
- 宮路 天平(東京大学大学院医学系研究科)
- 野村直之(メタデータ株式会社)
- 宮越 徹(インスペック株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,475,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交代
村上 知広(平成28年10月13日から平成28年12月31日)→ 宮越 徹(平成29年1月1日から現在)
研究報告書(概要版)
研究目的
①:術中迅速病理診断の見逃し等をチェックする人工知能(深層学習:Artificial Intelligence:以下AI)を活用した画像認識病理診断支援ツールを開発する。認識精度を平成29年8月までに90%を超えることを目標値とした。
②:AIの深層学習に活用可能な病理デジタル画像(Whole Slide Images:バーチャルスキャナ機器で取り込んだ病理画像:以下WSI)の加工法を開発する。(WSIは9億画素から36億画素。一方、AIに活用する画素数は9万画素程度。効率よく画像を切り出すツールを開発する)。
③:SNOMED-CTの使用に関して詳細調査を行い、その要否についての検討を行う。また平成29年度開始の希少がん等のAI病理診断支援ルール開発のための研究デザインを作成する。
④:希少がんのデータベースの整理を行い、画像と診断名の紐づけがなされた教師データを作成する。
②:AIの深層学習に活用可能な病理デジタル画像(Whole Slide Images:バーチャルスキャナ機器で取り込んだ病理画像:以下WSI)の加工法を開発する。(WSIは9億画素から36億画素。一方、AIに活用する画素数は9万画素程度。効率よく画像を切り出すツールを開発する)。
③:SNOMED-CTの使用に関して詳細調査を行い、その要否についての検討を行う。また平成29年度開始の希少がん等のAI病理診断支援ルール開発のための研究デザインを作成する。
④:希少がんのデータベースの整理を行い、画像と診断名の紐づけがなされた教師データを作成する。
研究方法
*症例:まずはリンパ節転移の見逃し等をチェックするAI病理診断支援ツールの開発のため、乳癌のセンチネルリンパ節の術中迅速症例のWSIおよび通常のリンパ節のWSIを抽出する(症例選択担当佐々木)。
*画像加工法の開発:デジタル化された病理標本から、AI深層学習用画像を切り出すツールを開発する(担当宮越)。
*AIの開発:アノテーションをつけた正解データ(担当佐々木)約100,000枚を用いて、高性能ディープラーニングマシン(当該研究費で購入)で深層学習しAI病理診断支援ツールを開発(担当野村)。
*SNOMED-CTに関しては、SNOMED-CTによる診断名のマッピングを検討、階層構造や運用状況の調査を行い、本研究での使用の要否について検討。また希少がんの研究デザイン(症例数等)を作成(担当宮路、山口)
*平成29年度開始予定の希少がんのために、がん研究会がん研究所の希少がんを含むサルコーマ等の病理診断の確認と確定、およびWSIとの紐づけなどによるデータベースの整備を進める(担当高澤)
*画像加工法の開発:デジタル化された病理標本から、AI深層学習用画像を切り出すツールを開発する(担当宮越)。
*AIの開発:アノテーションをつけた正解データ(担当佐々木)約100,000枚を用いて、高性能ディープラーニングマシン(当該研究費で購入)で深層学習しAI病理診断支援ツールを開発(担当野村)。
*SNOMED-CTに関しては、SNOMED-CTによる診断名のマッピングを検討、階層構造や運用状況の調査を行い、本研究での使用の要否について検討。また希少がんの研究デザイン(症例数等)を作成(担当宮路、山口)
*平成29年度開始予定の希少がんのために、がん研究会がん研究所の希少がんを含むサルコーマ等の病理診断の確認と確定、およびWSIとの紐づけなどによるデータベースの整備を進める(担当高澤)
結果と考察
*リンパ節の症例数は術中迅速病理標本、通常の病理標本合わせて約1,000枚のWSIが用意できた(担当佐々木)。
*画像加工技術で、WSI表示画面上で、操作者が指定する任意の正方領域を解像度(画素):64x64,128x128,256x256,512x512、記録形式:BMP,JPG,PMG,TIFFで保存するツールを開発に成功し、人工知能が学習するための画像作成が可能となった(担当宮越)。現在は、LINUXで起動する自動で切り出しを行うツールのプロトタイプまで開発が進んでいる。
*AIにより病理診断支援ツールの開発では約100,000枚の画像データを用いてプログラムを開発。当初平成29年度8月までに90%以上の診断精度を目標としていたが、一時精度100%、症例を増やしても95%以上の診断精度を保っており、かなり前倒しでツールの開発に成功した。今後は、元のWSI画像に「転移部位」を「赤」などの濃淡で確率表示し、病理医不在病院あるいは1人病理医病院の術中迅速診断・ダブルチェック用病理診断支援ツールとして完成し、平成29年8月を目途に試験運用を行う(担当野村)
*SNOMED-CTに関しては、本邦では十分に活用されておらず、臨床現場への一般化可能性を考慮し、導入を見送った。また開発された病理システムについては、妥当性の検証のためのValidation研究を計画することになるため、研究デザイン上考慮すべき事項(エンドポイント、データのサンプリング等)を検討した。さらに改正個人情報保護法案に対応すべく対策等を検討し助言した(担当宮路、山口)。
*がん研究会がん研究所の希少がん症例等を含むサルコーマ症例の病理診断確定と病理画像のデータベース整備に関して、23,000症例のうち1,500症例の診断確定とWSI取り込みを完了した(担当高澤)。AI学習用の画像としてはLINUXで起動する自動切り出しツールの活用により、約2,500万枚相当が見込まれ、一部は平成29年4月より開始予定。
*画像加工技術で、WSI表示画面上で、操作者が指定する任意の正方領域を解像度(画素):64x64,128x128,256x256,512x512、記録形式:BMP,JPG,PMG,TIFFで保存するツールを開発に成功し、人工知能が学習するための画像作成が可能となった(担当宮越)。現在は、LINUXで起動する自動で切り出しを行うツールのプロトタイプまで開発が進んでいる。
*AIにより病理診断支援ツールの開発では約100,000枚の画像データを用いてプログラムを開発。当初平成29年度8月までに90%以上の診断精度を目標としていたが、一時精度100%、症例を増やしても95%以上の診断精度を保っており、かなり前倒しでツールの開発に成功した。今後は、元のWSI画像に「転移部位」を「赤」などの濃淡で確率表示し、病理医不在病院あるいは1人病理医病院の術中迅速診断・ダブルチェック用病理診断支援ツールとして完成し、平成29年8月を目途に試験運用を行う(担当野村)
*SNOMED-CTに関しては、本邦では十分に活用されておらず、臨床現場への一般化可能性を考慮し、導入を見送った。また開発された病理システムについては、妥当性の検証のためのValidation研究を計画することになるため、研究デザイン上考慮すべき事項(エンドポイント、データのサンプリング等)を検討した。さらに改正個人情報保護法案に対応すべく対策等を検討し助言した(担当宮路、山口)。
*がん研究会がん研究所の希少がん症例等を含むサルコーマ症例の病理診断確定と病理画像のデータベース整備に関して、23,000症例のうち1,500症例の診断確定とWSI取り込みを完了した(担当高澤)。AI学習用の画像としてはLINUXで起動する自動切り出しツールの活用により、約2,500万枚相当が見込まれ、一部は平成29年4月より開始予定。
結論
平成28年度は、10月からの4回の対面連絡会議により、連携や問題点の抽出が随時なされたことで、AI用画像加工技術の開発およびAI病理診断支援ツールの開発が、予想よりも大幅に早く進み、実用運用が早まる見込みとなった。次年度の課題として、「LINUXで起動するAI用画像自動切り出しツールの完成」や「AI病理診断支援ツール(リンパ節転移Wチェックなど)の実臨床での応用」を計画。さらにAI希少がん病理診断支援ツールの完成を目指す。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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