プライマリケアの日常診療におけるウィルス感染症スクリーニング支援システムの構築

文献情報

文献番号
201603007A
報告書区分
総括
研究課題名
プライマリケアの日常診療におけるウィルス感染症スクリーニング支援システムの構築
課題番号
H28-ICT-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
森川 和彦(東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 矢作 尚久(東京大学大学院工学系研究科 品質・医療社会システム工学寄付講座)
  • 加藤 省吾(国立成育医療研究センター臨床研究開発センターデータ管理部データ科学室)
  • 岡田 唯男(亀田ファミリークリニック館山)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,524,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、迅速検査が広まっているウィルス感染症について、症状・身体所見によるスクリーニングを支援するシステムを構築することを目的とする。患者の症状・身体所見から、要介入・要検査を判定する手法、判定に基づくアクションを取った場合の費用対効果を評価する手法を開発し、これらの手法に基づいて、院内および院外における要介入・要来院判断を支援するスクリーニング支援システムを、小児医療情報収集システム基盤で構築するプライマリケアで迅速検査が広まっている、Respiratory Syncitial Virus (RSV)、インフルエンザウィルス、ノロウィルスを対象とする。
 本研究で開発されるスクリーニング支援システムを適切に運用することで、治療効果の改善、患者家族の負担軽減、医療費の削減が期待できる。小児医療情報収集システム基盤で稼働するシステムを構築することで、電子カルテデータセットと連結して多様な解析が可能となり、解析結果に基づいて診療成績が向上するPDCAサイクルを創出する基盤となる。医療の質向上・均てん化・診療支援に必要なエビデンスを提供するものとして、臨床研究等ICT基盤構築研究事業の目的と合致するものである。
研究方法
 本研究では、迅速検査が広まっているウィルス感染症について、症状・身体所見によるスクリーニングを支援するシステムを構築することを目的とする。患者の症状・身体所見から、要介入・要検査を判定する手法、判定に基づくアクションを取った場合の費用対効果を評価する手法を開発し、院内・院外におけるスクリーニング支援システムを、小児医療情報収集システム基盤で構築する。プライマリケアで迅速検査が広まっているRSV、インフルエンザウィルス、ノロウィルスを対象とする。
 平成28年度は、構築に当たり、スクリーニング支援システムの構築に当たり、特定すべきスクリーニング対象、既存データ解析によるスクリーニング手法設計、既存データの解析による費用対効果評価手法の設計、スクリーニング支援システムの開発と実装、およびプライマリケア領域における院外問診の効果についての文献レビューを行った。
結果と考察
 主訴ごとに、陽性率がRSVでは咳嗽・鼻閉や呼気性喘鳴でそれぞれ14.3%と12.8%と比較的高い結果となった。院率は、呼吸停止や無呼吸発作、喀血で高かった。蘇生や緊急を要するような状態が、呼吸停止、呼気性喘鳴、息切れ、乳児無呼吸発作、吸気性喘鳴で40%を超えた。検査費用削減効果の例として、気道症状を有する患者の割合が30%、スクリーニング陽性の割合が5%の場合、全国で年間約1,960億円を削減できる可能性があると試算された。院外利用を含む医療費削減効果の例として、スクリーニング陰性の割合が70%、気道症状はあるがスクリーニング陰性の割合が25%、スクリーニング陽性の割合が5%の場合、全国で年間約2,487億円を削減できる可能性があると試算された。スクリーニング支援システムを小児医療情報収集システムが導入されている協力医療機関へ実装し、臨床現場での利用の可能性を確認した。
結論
 プライマリケアで問題となる感染症について、症状・身体所見からの診断手法、スクリーニング支援システムの情報収集機能の実装および診断手法に従ってアクションを取った場合の医療経済評価手法が検討した。既存の評価指標では、年齢区分という軸が不足しているなど、年齢区分の精査やそれに合わせたスコアデータの見直しが必要である。医療経済を考慮すると、スクリーニング支援システムの導入が望ましいことがわかった。また、Clinial Data Management System (CDMS)基盤を利用した機能拡張は、開発期間やコストを低減化させ、それぞれが必要な項目のみを収集することを可能にし、さらに同様の研究の推進が望まれる。
 来年度はスクリーニング対象の問診や身体所見情報の有用性、実臨床への応用可能性を評価すると共に、スクリーニング支援システムを構築する。システムの精度分析・医療経済評価を実施し、診断、重症度等に応じたリスク・成績・予後等を提示する機能を設計する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201603007Z