文献情報
文献番号
201603006A
報告書区分
総括
研究課題名
腎臓病データベースの拡充・連携強化と包括的データベースの構築
課題番号
H28-ICT-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 美保子(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 医療情報学科)
- 横山 仁(金沢医科大学医学部 腎臓内科学)
- 南学 正臣(東京大学大学院医学系研究科 腎臓内科学/内分泌病態学)
- 山縣 邦弘(筑波大学医学医療系 腎臓内科学)
- 和田 隆志(金沢大学医薬保健研究域医学系 腎臓内科学・腎病態統御学)
- 中島 直樹(九州大学病院 メディカルインフォメーションセンター)
- 杉山 斉(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液浄化療法人材育成システム開発学)
- 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 腎臓内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,473,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本腎臓学会は日本医療情報学会と共同し、厚生労働省臨床効果データベース事業として全国規模の包括的慢性腎臓病臨床効果情報データベース(J-CKD-DB)の構築に着手した。CKDはeGFR 60mL/分/1.73㎡未満、あるいはタンパク尿(+)で定義され、個々の腎疾患を包含する広範な概念である。一方、日本腎臓学会は (1)腎生レジストリ(J-RBR)、(2) 各種腎疾患DB(J-RBRから生成);難治性ネフローゼ症候群(JNSCS),IgA腎症(J-IGACS)及び糖尿病性腎症(JDNCS)等の疾患単位のDBなど腎臓病に関する規模の異なる複数のデータベースを構築してきた。(1)、(2)はいずれもWebを用いた手作業での入力であるため入力負荷が大きく、数10万人規模以上のDB構築が困難等の課題に直面していた。またJ-CKD-DBとの連結方法も未開発である。本研究では、上記課題を克服し、腎臓病に関する全国規模の包括的データベースを構築し、腎臓病の実態調査、予後規定因子の解析、腎臓病診療の質向上、健康寿命延伸に寄与することを目的とする。
研究方法
J-CKD-DBでは、すべてのデータ項目をSS-MIX2標準化ストレージ(以下、SS-MIX2)から抽出している。データ登録には東京大学で開発された多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を用いている。データは、SS-MIX2からプログラムを用いて自動抽出し、匿名化処理を行う。この一連の処理は施設内にて行われる。匿名化したデータはVPN接続により送信するか、または参加施設にて可搬媒体に出力し、可搬媒体をJ-CKD-DB事務局に送付して、事務局からデータベース登録を行う。抽出対象期間は2014年1月1日~12月31日までの間である。
結果と考察
J-CKD-DBは21施設からの参加を得て、デーベース構築を進めている。平成28年度は6施設からの登録もしくは再登録があった。これまでの登録は全部で8施設、78,755件となっている。開発を通じて見出された課題と対応策、考察を述べる。
(1) SS-MIX2標準化ストーレッジの整備: SS-MIX2は各種の国の補助事業等で大病院を中心に導入されてきたが、導入目的、導入時期、また病院により、SS-MIX2への出力状況は異なる面がある。S-MIX2は電子カルテシステムのベンダーが実装し、ユーザに提供するのが一般的であるが、ソフトウェア製品ではなく、何をどこまで対応すべきか必ずしも明確に定められていない面がある。本研究では当該期間の再出力を行う過程で、整備をはかった。
(2) 院内の標準化: 医薬品はHOTコードを、臨床検査はJLAC10を用いることとしているが、いずれも対応していない施設がほとんどで、参加施設では院内ローカルコードと標準コードとの対応付けを行い、SS-MIX2への再出力を行った。必要なときローカルコードを標準コードに対応づけるという方法では、今後ますます臨床データの活用が進む中、結果的には院内専門部署の負担に繋がることになる。外部との相互運用性を有するシステムの要件として標準化をはかる必要があるのではないか。
(3) データクレンジング: 一般的なデータクレンジングの作業の他に、データベースに医薬品のローカルコードが登録されている場合があり変換処理が発生している。これには単独の要因の場合も、複数の要因が関係している場合もあり、要因によっては施設に戻る必要がある。臨床データベースでバラバラの薬剤コードが混在することを防ぐため、常時、病院のマスターに標準コードが反映されるような枠組みを考える必要がある。
(4) 既存の疾患別腎臓病データベースとの関係: データ項目の対応関係を含め、J-CKD-DBとの比較検討を行った。両者は相互に補完的であり、平成29年度は両者の連携により統合的なデータベースの活用が可能となる方法について研究開発を行う予定である。
(1) SS-MIX2標準化ストーレッジの整備: SS-MIX2は各種の国の補助事業等で大病院を中心に導入されてきたが、導入目的、導入時期、また病院により、SS-MIX2への出力状況は異なる面がある。S-MIX2は電子カルテシステムのベンダーが実装し、ユーザに提供するのが一般的であるが、ソフトウェア製品ではなく、何をどこまで対応すべきか必ずしも明確に定められていない面がある。本研究では当該期間の再出力を行う過程で、整備をはかった。
(2) 院内の標準化: 医薬品はHOTコードを、臨床検査はJLAC10を用いることとしているが、いずれも対応していない施設がほとんどで、参加施設では院内ローカルコードと標準コードとの対応付けを行い、SS-MIX2への再出力を行った。必要なときローカルコードを標準コードに対応づけるという方法では、今後ますます臨床データの活用が進む中、結果的には院内専門部署の負担に繋がることになる。外部との相互運用性を有するシステムの要件として標準化をはかる必要があるのではないか。
(3) データクレンジング: 一般的なデータクレンジングの作業の他に、データベースに医薬品のローカルコードが登録されている場合があり変換処理が発生している。これには単独の要因の場合も、複数の要因が関係している場合もあり、要因によっては施設に戻る必要がある。臨床データベースでバラバラの薬剤コードが混在することを防ぐため、常時、病院のマスターに標準コードが反映されるような枠組みを考える必要がある。
(4) 既存の疾患別腎臓病データベースとの関係: データ項目の対応関係を含め、J-CKD-DBとの比較検討を行った。両者は相互に補完的であり、平成29年度は両者の連携により統合的なデータベースの活用が可能となる方法について研究開発を行う予定である。
結論
J-CKD-DBの構築において、SS-MIX2からの自動抽出、データベース登録、登録されたデータのクレンジングに至る過程で直面した課題、見出した問題について、1つひとつ解決にあたってきた。多数の臨床データベース、患者レジストリの構築が進む現在、臨床現場の医師の入力負担は増す一方である。手入力のみでは、数万あるいは、それを超える大規模な収集は望めず、データの精度にも自ずと限界がある。本研究では手入力をなくし、SS-MIX2から自動抽出するという方法でデータベース開発を行っている。第1期の登録に対しバリデーションを実施中であるが、見出された課題と、解決にあたり得られた知見は、今後の各種臨床効果データベース構築に寄与するものと考える。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
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