文献情報
文献番号
201602006A
報告書区分
総括
研究課題名
死亡個票統計における循環器疾患関連死因の妥当性に関する検討
課題番号
H27-統計-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻保健社会行動学分野)
研究分担者(所属機関)
- 磯部 光章(東京医科歯科大学大学院 循環器学)
- 興梠 貴英(自治医科大学 企画経営部医療情報部)
- 石井 太(国立社会保障人口問題研究所 人口動向研究部)
- 篠原 恵美子(山田 恵美子) (東京大学医学部附属病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢社会において心不全は臨床的病態としてその有病率が高まり、疾病負担の増加が指摘されているが、死因統計において心不全は不適切な死因病名とされている。そこで本研究事業では死亡個票の直接・間接死因病名を精査し、心不全に関連する死亡統計の妥当性を検証し、持て厚生労働統計において高齢社会に対応した心不全の実態把握を図るための方策について提案することを目的とした。
研究方法
初年度に引き続きテキストベースで提供された死亡事故原票情報について標準コード化のアルゴリズムを適用し、アルゴリズムの精緻化を進めた。また期間欄の情報化も図った。また人口学的指標を用いて心不全を中心とした循環器疾患病名を含む複合死因病名の相互関連を検討した。2018年発行予定のICD11の準備会議に参加し、心不全の扱いをめぐる議論について取材した。最後にこれらの知見をベースに、今後わが国における心不全死因病名の扱いについて、国内の主たる心不全専門循環器医にインタビューを行い意見聴取した。
結果と考察
自動コード化を死亡事故原票の96%まで対応できるように改善を図ることに成功した。これによって得られた病名を精査したところ、以前として年間10万件あまりの死亡事故報告に直接ないし間接死因に心不全が含まれており、このうち4万件近くでは心不全病名以外の情報が含まれていないものが見られた。また高齢者において複合死因として心不全が含まれる割合が高いことが明らかとなり、高齢社会において心不全の死因統計の整備の必要性が示唆された。ICD11では臨床的利用も考慮して病名を現実の病態に近い形でコーディングできるようになることが明らかとなったが、依然として死因病名としての心不全の採択は見送られた。専門家の意見として、死因統計における従前の心不全病名の取り扱いについてさらなる啓もうが必要である一方、学会などにより心不全概念の統一的再構築が必要であるとの見解が示された。
結論
現行の死因統計における「心不全」は妥当性・信頼性の裏付けに乏しいものが含まれており、死亡診断書マニュアルの遵守を図る啓もうが必要である一方、器質的原因疾患が不詳で臨床病態として心不全治療を施されたケースなどにおける死因の取り扱いについて専門学会などの統一的見解をまとめる必要があると考えられた。また死因統計そのものの標準化を図る方策も喫緊の課題である。
公開日・更新日
公開日
2018-07-04
更新日
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