文献情報
文献番号
201601019A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療・在宅看取りの状況を把握するための調査研究
課題番号
H28-政策-指定-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究分担者(所属機関)
- 飯島勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 堀田 聰子(国際医療福祉大学大学院)
- 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部 )
- 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
患者の希望に添った看取りを実現するためには、在宅での終末期医療・介護提供体制や提供状況に関する実態を地域毎で把握し、関係者間で課題・阻害要因を共有し、対策を検討するといったマネジメント展開が必要となるが、現時点では、実態把握のための手法すら確立できていない状況にある。
そこで、本研究では、在宅看取りの実態を把握するための手法を開発するとともに、死亡診断書に基づく現行の統計管理/運用上の課題の抽出と改善策の提言を行うことを目的とする。
そこで、本研究では、在宅看取りの実態を把握するための手法を開発するとともに、死亡診断書に基づく現行の統計管理/運用上の課題の抽出と改善策の提言を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では、3つのテーマ(1.先行研究調査、2.既存データ分析、3. 死亡診断書の運用等に関する課題の抽出)を設定し、これらテーマ毎に研究を進める。
本年度は、1)在宅看取りの実態把握に関する先行研究調査、2)厚生労働省が公表した「在宅医療にかかる地域別データ」の分析(自宅死亡割合(対数オッズ比)を被説明変数とした回帰分析)、3)在宅療養支援診療所及び病院における看取りの実態に関するデータ(厚生局報告分)の収集及びデータベース、4)横浜市の死亡診断小票のデータ分析、5)死亡診断書の記載および運用上の課題に関する臨床家へのヒアリングを行った。なお、4)では、厚生労働省から入手した横浜市の人口動態死亡小票の記載内容(死因の種類、診断書を発行した医師の氏名、備考欄の自由記載の3項目)をもとに、死亡診断書/検案書のいずれの発行による死亡かを推定する方法を開発した上で、同ロジックを用いて、全死亡に占める死亡診断書の発行割合を算出し、その経年変化を分析した。
本年度は、1)在宅看取りの実態把握に関する先行研究調査、2)厚生労働省が公表した「在宅医療にかかる地域別データ」の分析(自宅死亡割合(対数オッズ比)を被説明変数とした回帰分析)、3)在宅療養支援診療所及び病院における看取りの実態に関するデータ(厚生局報告分)の収集及びデータベース、4)横浜市の死亡診断小票のデータ分析、5)死亡診断書の記載および運用上の課題に関する臨床家へのヒアリングを行った。なお、4)では、厚生労働省から入手した横浜市の人口動態死亡小票の記載内容(死因の種類、診断書を発行した医師の氏名、備考欄の自由記載の3項目)をもとに、死亡診断書/検案書のいずれの発行による死亡かを推定する方法を開発した上で、同ロジックを用いて、全死亡に占める死亡診断書の発行割合を算出し、その経年変化を分析した。
結果と考察
先行研究調査から、1) DNARの意思表示のある終末期がん患者が臨死の際に救急車要請となってしまうといった現場レベルの問題が指摘されている。DNARに対する社会的整備がまだ未確立であることも、在宅看取りを阻害している1つの要因として挙げられていた、2)在宅看取りになりやすい患者特性上の特徴として、①がん患者であること、②非がん患者でもADL低下が顕著であることなどが指摘されていた。終末期と認識しやすい状態の場合に在宅看取りが選択されやすい可能性が示唆されたなどがわかった。
また、既存データ分析から、1)自宅死亡割合を被説明変数とした回帰分析を行った結果、自宅死亡割合の促進要因は「看取りを実施する診療所数」、阻害要因は「療養病床数」が抽出された、2)横浜市における2015年時点の「死亡者数に占める死亡診断書発行割合」は、「病院」89.5%に対し、「自宅」は51.8%であった(約半数は死体検案死であった)、3)死亡診断書に記載された死亡場所種別と実際の死亡場所を比較した結果、病院や診療所の一致率はほぼ100%であるのに対し、介護老人保健施設(以下、老健)の場合は約7割と低かった(約14%は有料老人ホームと誤認識されていた)などがわかった。
本年度実施した様々な調査から、1)在宅看取りを推進するためには、看取りの文化の再考とそれを実現するための仕組みの構築(DNARに対する社会的整備など)が必要である、2)在宅看取り率には、死亡診断書が記載された死亡以外に死体検案死も含まれているため、在宅看取りの実態を正確に表した数字にはなっておらず、両者を分離した形でデータベース化する必要がある、3)死亡診断書で記載する死亡場所の選択が、多様な住まい(特別養護老人ホーム、老健施設、有料老人ホーム、サービス付高齢者住宅など)間では正確に記載されていない割合が高いことから、これらの差異に対する理解を促進するような研修が必要であると考えた。
また、既存データ分析から、1)自宅死亡割合を被説明変数とした回帰分析を行った結果、自宅死亡割合の促進要因は「看取りを実施する診療所数」、阻害要因は「療養病床数」が抽出された、2)横浜市における2015年時点の「死亡者数に占める死亡診断書発行割合」は、「病院」89.5%に対し、「自宅」は51.8%であった(約半数は死体検案死であった)、3)死亡診断書に記載された死亡場所種別と実際の死亡場所を比較した結果、病院や診療所の一致率はほぼ100%であるのに対し、介護老人保健施設(以下、老健)の場合は約7割と低かった(約14%は有料老人ホームと誤認識されていた)などがわかった。
本年度実施した様々な調査から、1)在宅看取りを推進するためには、看取りの文化の再考とそれを実現するための仕組みの構築(DNARに対する社会的整備など)が必要である、2)在宅看取り率には、死亡診断書が記載された死亡以外に死体検案死も含まれているため、在宅看取りの実態を正確に表した数字にはなっておらず、両者を分離した形でデータベース化する必要がある、3)死亡診断書で記載する死亡場所の選択が、多様な住まい(特別養護老人ホーム、老健施設、有料老人ホーム、サービス付高齢者住宅など)間では正確に記載されていない割合が高いことから、これらの差異に対する理解を促進するような研修が必要であると考えた。
結論
在宅看取りを推進するためには、看取りの文化の再考とそれを実現するための仕組みの構築(DNARに対する社会的整備など)が必要である。また、死亡に関する正確なデータベースを構築するためには、1)死亡診断書と死体検案書の区分のデータベース化、2)多様な住まいにおける死亡の場所選択の正確さを高めるような研修の実施が必要である。
公開日・更新日
公開日
2017-09-06
更新日
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