文献情報
文献番号
201601016A
報告書区分
総括
研究課題名
真のエイジング・イン・プレイス実現に向けた包括的実証研究
課題番号
H28-政策-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(福島県立医科大学医学部放射線医学県民健康管理センター情報管理・統計室)
- 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院・公共経営研究科)
- 柏木 聖代(横浜市立大学医学部看護学科)
- 松田 智行(茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科)
- 植嶋 大晃(筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
要介護高齢者が長く在宅で過ごすことは地域包括ケアの中核であるが、そのためには適切な医療および介護サービス、そして家族・地域の三者のバランスが重要である。単に在宅を強いるのではなく、本人、家族そして地域の選択を尊重した真のエイジングインプレイスを目指すことが重要である。我々はこれまでの研究で、全国介護レセプトを用いた独自の指標として、一定期間において対象者が在宅で生活した全ての日数である在宅日数を算出し、在宅日数は地域間に違いがあることを明らかにした。しかし、その要因までは明らかになっていない。
そこで本研究では、地域差に焦点を当てて在宅期間の促進要因や阻害要因を同定することを目的とする。また、地域の介護力および介護負担については、国民生活基礎調査等を用いて、全国における実態およびその関連要因を明らかにする。これらの結果に加え、モデル地域(A市)のレセプトや、茨城県B市における調査、事例検討会の記録の集計結果を用いた研究から、在宅生活の限界点を引き上げるための具体的政策課題を市町村と連携して明らかにする。
そこで本研究では、地域差に焦点を当てて在宅期間の促進要因や阻害要因を同定することを目的とする。また、地域の介護力および介護負担については、国民生活基礎調査等を用いて、全国における実態およびその関連要因を明らかにする。これらの結果に加え、モデル地域(A市)のレセプトや、茨城県B市における調査、事例検討会の記録の集計結果を用いた研究から、在宅生活の限界点を引き上げるための具体的政策課題を市町村と連携して明らかにする。
研究方法
A市のレセプトを用いた研究については、2016年10月より分析に着手した。
B市の事例検討会のデータを用いた研究については、困難事例の分類に関するレビューと、これまでに実施された検討会の事例の集計および分析を4月より実施し、10月の公衆衛生学会で発表した。B市の事例検討会は毎月第3金曜日に実施され、その都度データを蓄積しており、分担研究者である松田が基本的に毎回参加している。またB市の調査については、2016年12月および2017年1月に調査を実施した。
全国介護レセプトおよび国民生活基礎調査については、現在データ申請中であるが、2016年4月より文献レビューを進めるとともに、データを受領次第速やかに分析を行えるよう、「戦略研究」において申請したデータを用いて、2016年7月から予備的な分析を実施した。
B市の事例検討会のデータを用いた研究については、困難事例の分類に関するレビューと、これまでに実施された検討会の事例の集計および分析を4月より実施し、10月の公衆衛生学会で発表した。B市の事例検討会は毎月第3金曜日に実施され、その都度データを蓄積しており、分担研究者である松田が基本的に毎回参加している。またB市の調査については、2016年12月および2017年1月に調査を実施した。
全国介護レセプトおよび国民生活基礎調査については、現在データ申請中であるが、2016年4月より文献レビューを進めるとともに、データを受領次第速やかに分析を行えるよう、「戦略研究」において申請したデータを用いて、2016年7月から予備的な分析を実施した。
結果と考察
A市のレセプトを用いた研究では、後期高齢者(75歳以上)の低所得者と低所得者以外の医療費、介護費用についての分析に着手した。
B市の事例検討会のデータを用いた研究では、まず、困難事例の検討の分類に関する文献レビューを行い、体系的な困難事例の分類方法について検討を行った。次に、B市における過去の事例検討会で討議された76事例について、その問題を分類して検討し、困難事例の問題点の内容や所在を明らかにした。また、解消しやすい問題点の種類についての示唆が得られた。さらに、それを踏まえてB市と共同で作成した新たな記録様式を用いて個別事例の検討を行い、問題点や課題を明らかにした。本記録様式により多職種で検討を行って個別課題を類型化し、事後評価を類型別に行うことは、地域課題のPDCAサイクル構築に有効であると考えられた。
B市の調査については、本年度にB市と協力して調査票を作成し、調査を実施した。前期高齢者1500人、後期高齢者1500人、要支援認定者1388人、要介護認定者1500人、若年者1500人、ケアマネージャー243人に調査票を送付し、回収数および回収率はそれぞれ、759人(50.6%)、798人(53.2%)、689人(49.6%)、552人(36.8%)、544人(36.3%)、141人(58.0%)であった。分析は来年度より着手する。
全国介護レセプトは、データの二次利用について厚生労働省への申請を行うと共に、市区町村に関する公表データを整理した。また、厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「地域包括ケア実現のためのヘルスサービスリサーチ―二次データ活用システム構築による多角的エビデンス創出拠点―」(以下、「戦略研究」)による既存のデータを用いて、「在宅日数」の市区町村別の算出が可能であることを確認した。
国民生活基礎調査も同様にデータの二次利用について厚生労働省への申請を行うと共に、既存のデータを用いて、介護者の介護時間をアウトカム、各種介護動作を説明変数とした分析が実施可能であることを確認した。
B市の事例検討会のデータを用いた研究では、まず、困難事例の検討の分類に関する文献レビューを行い、体系的な困難事例の分類方法について検討を行った。次に、B市における過去の事例検討会で討議された76事例について、その問題を分類して検討し、困難事例の問題点の内容や所在を明らかにした。また、解消しやすい問題点の種類についての示唆が得られた。さらに、それを踏まえてB市と共同で作成した新たな記録様式を用いて個別事例の検討を行い、問題点や課題を明らかにした。本記録様式により多職種で検討を行って個別課題を類型化し、事後評価を類型別に行うことは、地域課題のPDCAサイクル構築に有効であると考えられた。
B市の調査については、本年度にB市と協力して調査票を作成し、調査を実施した。前期高齢者1500人、後期高齢者1500人、要支援認定者1388人、要介護認定者1500人、若年者1500人、ケアマネージャー243人に調査票を送付し、回収数および回収率はそれぞれ、759人(50.6%)、798人(53.2%)、689人(49.6%)、552人(36.8%)、544人(36.3%)、141人(58.0%)であった。分析は来年度より着手する。
全国介護レセプトは、データの二次利用について厚生労働省への申請を行うと共に、市区町村に関する公表データを整理した。また、厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「地域包括ケア実現のためのヘルスサービスリサーチ―二次データ活用システム構築による多角的エビデンス創出拠点―」(以下、「戦略研究」)による既存のデータを用いて、「在宅日数」の市区町村別の算出が可能であることを確認した。
国民生活基礎調査も同様にデータの二次利用について厚生労働省への申請を行うと共に、既存のデータを用いて、介護者の介護時間をアウトカム、各種介護動作を説明変数とした分析が実施可能であることを確認した。
結論
A市のレセプトを用いた研究は、来年度に成果を発表できるよう、引き続き分析を進めていく。B市の事例検討会については、本研究における成果をもとにして引き続きデータを蓄積し、多職種連携による地域の課題解決に貢献していく。B市の調査についても、回収された調査票の分析を進めていく予定である。全国介護レセプトおよび国民生活基礎調査を用いた研究は、本年度の予備的な分析に基づき、データの利用許可が下り次第、速やかに分析に着手する。
公開日・更新日
公開日
2017-08-30
更新日
-