社会保障費用をマクロ的に把握する統計の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201601013A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障費用をマクロ的に把握する統計の向上に関する研究
課題番号
H27-政策-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹沢純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 渡辺久里子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 黒田有志弥(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 沼尾波子(日本大学経済学部)
  • 山重慎二(一橋大学経済学研究科 国際・公共政策大学院)
  • 高端正幸(埼玉大学大学院 人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,290,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障費用統計の国際基準(OECD、ILO基準)に従えば地方単独事業も集計対象となる。しかし同統計では、地方政府が財源を負担する費用のうち、国庫補助事業は国庫補助金と補助率から推計値を計上しているが、地単事業はデータの制約により一部(公立保育所運営費、医療費)しか計上されていない。
2012年2月に閣議決定された社会保障・税一体改革大綱において「地方単独事業を含め、財源構成に関わりなくその事業の機能・性格に着目した社会保障給付の全体像の整理」が指摘された。地方自治体が社会保障政策の実施に果たす役割が高まるなかで、一定の客観的基準に沿って地方政府が独自の財源と基準で実施する社会保障にかかる事業(以下、地単事業)データを収集し、社会保障費用の全体像を把握する方法の開発が求められている。
そこで、本研究は、社会保障関係の地方単独事業を国際基準に沿って把握するための基礎的研究として、国際基準の検討と自治体事例調査に基づき、集計範囲や分類基準の理論的整理を目的とする。
研究方法
自治体を対象に、「『社会保障施策に要する経費』に関する調査」を作成している自治体担当者へのヒアリング調査を実施するとともに、研究者それぞれの関心に沿ってヒアリングを行った。
また、EU統計局ESSPROS基準に関する作業部会への参加を通じて得た情報、および同基準に関する各種文書、データを利用して分析及び考察をおこなった。そのほか、文献や行政報告書を基にした考察を実施した。
結果と考察
1) 自治体事例調査
3年計画の2年目である平成28年度においても、1年目と同様に、総務省の社会保障費調査の記入に関して、自治体ヒアリングを実施した。また、研究分担者が自らの関心に沿った政策領域に関して事例分析を行った。自治体の子ども子育て支援にかかわる歳出について、単独事業と補助事業に分けて、国の補助率あるいは単価に基づく推計額と、実際の歳出を比較したところ、いずれも国の推計額は大幅な過少推計になることを明らかにした。また、対人社会サービスにかかわる歳出に関して、近年地域で行政と住民が協働して同サービスが提供されるしくみを、自治体の事例から考察するとともに、サービス提供にかかる費用は社会保障費用統計において給付ではなく管理費に該当すると考えられるが、これらの費用は地域のソーシャルキャピタルの構築コストとして把握が必要であることを指摘した。
2)国際基準調査および国際比較
国際基準調査として、EU統計局の社会保護統計(ESSPROS)の2016年基準改定にむけた動向を把握するとともに、ESSPROS2016年版の日英対訳を整備した。また、統計により社会保障財源に占める地方政府負担割合は異なり、ILO基準で約10%に対して、SNA基準をベースに独自に改変した41~48%と推計する研究がある。SNAは経済セクター間の取引の記録を目的とするため、社会保障財源は各セクター表に記録され、社会保障全体の財源をひとつの表でみることができないが、ILOおよびESSPROS基準では社会保障制度全体が一つの表に財源出所別で示される。今後、国際比較が不可能なILO基準ではなくESSPROS基準に拠り、地方単独事業も加えて整備することにより、国際比較でみた日本の社会保障財源の特徴が明らかになる。
3)関連研究
総務省社会保障費調査の詳細公開を阻む要因と今後の活用見通しについて、地方自治財政の政策執行過程からの考察を行った。些細な事業別歳出額や自治体ごとの開示は、地方財政計画の策定における地方単独事業の調整弁的活用を困難とさせることから、今後国際基準に沿った分類整理を目的とした総務省データの活用は困難が見込まれる。また、社会保障の地方単独事業のうち、子ども医療費助成の理論的根拠について考察した。結論としては、現状の子どもの医療費助成制度は、あくまで地方単独事業であり、その実施の是非や、給付の範囲、水準は都道府県及び市町村の裁量に委ねられていることから、理論的には、その権利性は脆弱であり、同度と同水準の給付(自己負担の軽減)を現行の公的医療保険制度の枠内で行うことは、理論的には困難と考えられることを指摘した。
結論
総務省地方単独事業の事業別詳細の自治体単位データの利用は大きな壁がある。その理由として、それらを公表し、精査を可能とすることは、現状の地方財源保障システムのあり方に疑義をさしはさむ材料を提供することを意味するからである。しかしながら、本研究において自治体における詳細データの分類整理やそのためのマニュアル案作成により、それら具体的成果をもとに今後総務省データの活用可能性を総務省や自治体と協議するにあたり有益な材料となりうる。

公開日・更新日

公開日
2017-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-08-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201601013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,290,000円
(2)補助金確定額
3,290,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,560,312円
人件費・謝金 569,940円
旅費 431,203円
その他 729,657円
間接経費 0円
合計 3,291,112円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-27
更新日
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