国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善や有用性の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201601012A
報告書区分
総括
研究課題名
国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善や有用性の向上に資する研究
課題番号
H27-政策-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 水島  洋(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
  • 冨田 奈穂子(国立保健医療科学院国際協力研究部)
  • 佐藤 洋子(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ICD-11への改訂に向けた我が国におけるフィールドトライアルのシミュレーションとして、WHO主導のプレテスト(予備調査)を行い、本番のフィールドトライアル実施上の諸課題を整理し対応策を検討することにある。また、本研究で得た知見はWHO-FIC(国際統計分類)協力センターの活動などを通じてWHOへのフィードバックを行い、必要に応じてWHOが作成する国際的なフィールドトライアル指針に反映させる。
研究方法
予定されていたWHOの公式のフィールドトライアルが延期となり、WHOが準備したコーディングツール、ケースサマリーを使用してWeb(ICD-FiTと呼ばれるシステム)を使ってインターネット上で、より本番に近い形でのパイロットテストの実施となった。
具体的には、国立保健医療科学院研究情報支援研究センター(WHO-FIC協力センターの1つ)がフィールドトライアル・センター(FTC)となり、その下に複数のフィールドトライアル・サイト(FTS)を置き、FTSの下に取りまとめ担当者(Key Informant)と複数の評価者(Rater)(本パイロットテストでは平成27年度のプレテストで協力をお願いした7名)を選定して行った。また、コーディングの対象となるケースサマリー(コーディングの対象となる)はWHOが用意した308例である。すなわち、全体で延べ2156例のコーディングが行われた。また、コーディングに際しては、評価者間のばらつきが少なくなるように事前に方法論に関する共通認識を持つための機会を設けた。このような組織体制の構築は、本番のフィールドトライアルに活かされる。
結果と考察
本研究で実施したプレテストにおいて、同一ケースについて評価者のコーディング結果にバラツキを生じたかどうかを示す指標として、1ケースについて延べで何個のコードが付与されたかを用いた。すなわち、評価者によるバラツキが全くなければ付与されるコードは1ケースにつき1個となる。本パイロットテストでは同じケースをICD-10とICD-11の両方でコーディングを行っているので、上記の指標を用いて両者のコーディングのバラツキの程度を比較できる。例えば、7名の評価者のうち、4名以上がコーディングを終えた81ケースについて付与されたコードの個数ごとにケース数の集計を行った。また、同様に3名以上がコーディングを終えた148ケースについて、付与されたコードの個数ごとにケース数の集計を行った。いずれもICD-11の方が全員一致したケースの数は多いことが分かった。また、各ケースについて、「コードを付与する際に難しい点があったかどうか」という質問に対して「あった」と答えた割合は、ICD-10では87%、ICD-11では90%で、両者に大きな差はなかった。さらに「あいまいな点があったかどうか」という質問に対して、「なかった」と答えた割合は、ICD-10では73%、ICD-11では82%で、ICD-11の方が若干曖昧な点が少なかった。
上記の結果は、ICD-11がインターネットを効果的に活用することを念頭に置いて構築されていることを考えると、コーディングの際のバラツキや曖昧さを減らすことに関して、ICD-11がある程度成功している可能性が示唆された。
ICD-10からICD-11の改訂前に行われるフィールドトライアルは、改訂が統計データに与える影響を検討する際に有用な情報となるだけでなく、改訂プロセスの合理性を高めるための重要な根拠となる。このフィールドトライアルの実施とその分析を通して以下のような成果が期待される。
1) ICDの変更に伴う諸課題について一般的かつ科学的知見が得られ、今後の国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善に資する。
2) ICDの科学的根拠との関係を整理することにより、統計分類の有用性を示す。
3) ICDに関する問題について我が国としての合理的な見解を示すことにより、WHOの活動への貢献につながる。
4) 随時行われているICDのアップデートに際して、統計データに対するそれらの分類変更の影響を合理的に評価するための基礎情報となりうる。
結論
本年度に実施したWHO主導のパイロットテストについては、Webベースで実施したため、評価者がWebの使い方に慣れることが重要であることが分かった。一旦評価者がWebによるコーディングに習熟すれば、特にICD-11に関してこの方法が有効である可能性が示唆された。これらの成果は、WHO-FIC協力センターの活動などを通じて、厚生統計の行政への合理的な有効活用につながる。

公開日・更新日

公開日
2017-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201601012B
報告書区分
総合
研究課題名
国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善や有用性の向上に資する研究
課題番号
H27-政策-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 水島  洋(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
  • 冨田 奈穂子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 佐藤 洋子(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD-10(国際疾病分類第10版)からICD-11(同第11版)の改訂においては、改訂前にフィールドトライアルを行いICD-11の適用性、信頼性、有用性などを検討する必要がある。このフィールドトライアルは、上記改訂が統計データに与える影響を検討する際に有用な情報となるだけでなく、改訂の合理性を高めるための重要な根拠となる。我が国においてこれを実施するには、WHOのガイドドラインの適用において想定される諸課題を考慮しなければならない。
本研究の目的は、ICD-11への改訂に向けた我が国におけるフィールドトライアルのシミュレーションとしてのプレテスト(予備調査)を行い、本番のフィールドトライアル実施上の諸課題を整理し対応策を検討することにある。
研究方法
平成27年度においては、現時点におけるWHOのガイドライン・ドラフト版に準じて、研究班独自にプレテストを実施し、本番のフィールドトライアル実施上の問題点を整理する。具体的には、①倫理審査申請による計画承認、②現場のコーディング担当者が用いるリファレンスガイド(ドラフト版)の翻訳、③ケースサマリー(テストで用いる症例)の選択、④テストに用いる質問票の翻訳などを行う。本プレテストでは、主な3領域(小児領域、がん領域、生活習慣病領域)の疾患について、国立成育医療センター、国立国際医療研究センター、九州医療センターなどの機関の協力をいただき、実際のフィールドトライアルに近い形でシミュレーションとしてプレテストを実施し、課題を整理する。また、関連した国際的な情報を合わせて整理する。
平成28年度においては、WHOが準備したコーディングツール、ケースサマリーを使用してWeb(ICD-FiTと呼ばれるシステム)を使ってインターネット上で、より本番に近い形でのパイロットテストの実施となった。具体的には、国立保健医療科学院研究情報支援研究センター(WHO-FIC協力センターの1つ)がフィールドトライアル・センター(FTC)となり、その下に複数のフィールドトライアル・サイト(FTS)を置き、FTSの下に取りまとめ担当者(Key Informant)と複数の評価者(Rater)(本パイロットテストでは平成27年度のプレテストで協力をお願いした7名)を選定して行った。また、コーディングの対象となるケースサマリー(コーディングの対象となる)はWHOが用意した308例である。すなわち、全体で延べ2156例のコーディングが行われた。また、コーディングに際しては、評価者間のばらつきが少なくなるように事前に方法論に関する共通認識を持つための機会を設けた。
結果と考察
平成27年度は本番のフィールドトライアルを想定したシミュレーションとしてのプレテスト(予備調査)を行った。このプレテストの目的は、実際のフォールドトライアルを実施する際に生じる可能性のある問題を予め把握し、本番のフィールドトライアルをWHOのガイドラインに沿って実施する前に、これらの問題点への対応策を検討した。その結果、本番のフィールドトライアル実施に向けて、入力用のWeb環境の整備、セクションごとの評価の必要性、プロトコルの完全な翻訳化、などの課題が示された。
平成28年度においては、WHOの提供するガイドラインおよびデータに関してフィールドトライアル(パイロットテスト)を実施した。その際、必要な文書の翻訳もあわせて行った。本テストは本番のフィールドトライアル実施に向けて、Webベースで実施したため、評価者がWebの使い方に慣れることが重要であることが分かった。一旦評価者がWebによるコーディングに習熟すれば、特にICD-11に関してこの方法が有効である可能性が示唆された。
結論
平成27年度に実施したプレテスト(本研究班主導)では、本番のフィールドトライアル実施に向けて、入力用のWeb環境の整備、セクションごとの評価の必要性、プロトコルの完全な翻訳化、などの課題が示された。WHOの指針に従って統一的な方法でフィールドトライアルを実施するには、国際的な情報連携を含めた様々な調整が必要である。平成28年度に実施したWHO主導のパイロットテストについては、Webベースで実施したため、評価者がWebの使い方に慣れることが重要であることが分かった。一旦評価者がWebによるコーディングに習熟すれば、特にICD-11に関してこの方法が有効である可能性が示唆された。
ICD-10からICD-11の改訂前に行われるフィールドトライアルを効果的に実施することは、改訂が統計データに与える影響を検討する際に有用な情報となるだけでなく、改訂プロセスの合理性を高めるための重要な根拠となる。

公開日・更新日

公開日
2017-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ICD-11への改訂に向けた我が国におけるフィールドトライアルのシミュレーションとして、WHO主導のプレテスト(予備調査)を行い、本番のフィールドトライアル実施上の諸課題を整理し対応策を検討した。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないため該当なし。
ガイドライン等の開発
ICD-10からICD-11の改訂前に行われるフィールドトライアルは、改訂が統計データに与える影響を検討する際に有用な情報となるだけでなく、改訂プロセスの合理性を高めるための重要な根拠となる。本研究で得た知見はWHO-FIC(国際統計分類)協力センターの活動などを通じてWHOへのフィードバックを行い、必要に応じてWHOが作成する国際的なフィールドトライアル指針に反映させている。
その他行政的観点からの成果
ICD-11がインターネットを効果的に活用することを念頭に置いて構築されていることを考えると、コーディングの際のバラツキや曖昧さを減らすことに関してはICD-11がある程度成功しているというエビデンスを示すことができた。これらの成果は、WHO-FIC協力センターの活動などを通じて、日本の現状に関してWHOへのフィードバックにつなげている。
その他のインパクト
ICDの変更に伴う諸課題について一般的かつ科学的知見を示すことにより、1)今後の国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善、2)ICD-11の有用性の提示、3) ICDに関する諸問題についてWHOの活動への貢献、などにつなげている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
医療情報学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
WHO-FIC Annual Meering

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201601012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 607,863円
人件費・謝金 391,082円
旅費 1,035,148円
その他 965,995円
間接経費 0円
合計 3,000,088円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-