文献情報
文献番号
201601010A
報告書区分
総括
研究課題名
地方公共団体が行う子ども虐待事例の効果的な検証に関する研究
課題番号
H27-政策-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
- 相澤 仁(大分大学福祉健康科学部)
- 内ヶ崎 西作(日本大学医学部)
- 中板 育美(日本看護協会)
- 西澤 哲(山梨県立大学人間福祉学部)
- 溝口 史剛(前橋赤十字病院)
- 宮本 信也(筑波大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,374,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2007年の児童虐待の防止等に関する法律の改正により、都道府県で子ども虐待の重大事例に関する分析を行うことが義務付けられたが、その効果的検証のあり方が包括的に示されてこなかった。現状での実態を明らかにして、効果的検証のための手引きを作成し、更に現在の枠組みを超えた効果的検証を提言することを目的に研究を行っている。
研究方法
昨年度行った全国自治体への実態調査を分析し、12カ所の自治体にヒアリングを行った。エキスパートコンセンサスで検証のあり方を提示して、既報告事例を当てはめて検討。昨年抽出した保健情報の問題を複数事例の検証経験のある司法関係者、医師、保健師にヒアリングで検証への情報提示について検討。死亡事例検証報告書と刑事裁判判決文から予防のための心理的把握について提示。死亡事例の見逃しを防ぐ方法を児童相談所職員、医師、司法関係者それぞれ5名への面接を分析して提示。大学法医学教室と監察医施設92カ所に質問紙で虐待死亡事例検証への参加の実態を調査。全国小児科3次医療機関110カ所および法医学施設92カ所に質問紙による乳幼児の予期せぬ突然死(SUID)に関する対応に関する実態調査。全体として、ワークショップとシンポジウムを行い、関係者の意見を抽出した。
結果と考察
【ガイドライン作成に関して】検証委員を経験した研究者の議論及び自治体への質問紙調査とヒアリングから、自治体側からは、①検証対象の範囲の明確化、②個人情報を踏まえた報告書のあり方、③業務量増加への対応、④関係機関が全く関わっていない無理心中事例等の検証のあり方、などを知りたいとの要望があげられており、ヒアリング側からは⑤検証委員会のあり方等に関する自治体間格差の解消、⑥検証が自治体施策のみならず現場の技能の向上に資する方策、⑦検証効果の判定方法の提示、などが求められると考えられた。
検証における分析のあり方として、検証の論点が虐待死の予防なのか虐待の予防なのかを明確にする必要から、それぞれの具体的検証方法を提示した。ガイドラインではそれぞれに対応する形で組み込む予定。
研究者間の議論により、検証に必要な情報に関して、情報へのアクセス方法を提示し、年齢、死因、関係機関関与による分類別に必要情報を提示した。
母子保健情報に関し、検証委員会に提示すべきミニマムリストとして母子保健活動時から意識して活用するためのリスト、様式1)保健師配置状況、様式2)妊娠期から子育て(就学前)の要支援家族を把握・理解するための情報、様式3)および情報収集・支援決定プロセス、支援経過を整理するためのフローチャート(例)を試作した。
心理的背景に関し、虐待死を招く、よくある心理機序を提示した。それらをガイドラインで提示することにより、それに合致する情報を検討することが可能になると考えられた。
【より効果的な検証への提言作成に関する研究】 医療機関で虐待が疑われた死亡事例が実際に検証になっていない原因に関して、医療、警察、司法、福祉への半構造化面接により、検証に至らない要因が明らかになった。疑いがあった場合の対応に関して具体的な方法を提示する必要がある。
乳幼児の予期せぬ突然死に関し、臨床医と法医に関してアンケート調査を行った。臨床医はSIDSガイドラインの活用が低く、新法解剖についての認識も低かった。また、SUIDに関する意識は法医と臨床医で差はなかったが施設間の差が大きく、多機関連携の推進が望まれた。
法医学への質問紙調査から、虐待死亡事例検証に法医学者が関わることは現時点では少なく、参加しやすい環境づくりが必要と考えられた。
検証における分析のあり方として、検証の論点が虐待死の予防なのか虐待の予防なのかを明確にする必要から、それぞれの具体的検証方法を提示した。ガイドラインではそれぞれに対応する形で組み込む予定。
研究者間の議論により、検証に必要な情報に関して、情報へのアクセス方法を提示し、年齢、死因、関係機関関与による分類別に必要情報を提示した。
母子保健情報に関し、検証委員会に提示すべきミニマムリストとして母子保健活動時から意識して活用するためのリスト、様式1)保健師配置状況、様式2)妊娠期から子育て(就学前)の要支援家族を把握・理解するための情報、様式3)および情報収集・支援決定プロセス、支援経過を整理するためのフローチャート(例)を試作した。
心理的背景に関し、虐待死を招く、よくある心理機序を提示した。それらをガイドラインで提示することにより、それに合致する情報を検討することが可能になると考えられた。
【より効果的な検証への提言作成に関する研究】 医療機関で虐待が疑われた死亡事例が実際に検証になっていない原因に関して、医療、警察、司法、福祉への半構造化面接により、検証に至らない要因が明らかになった。疑いがあった場合の対応に関して具体的な方法を提示する必要がある。
乳幼児の予期せぬ突然死に関し、臨床医と法医に関してアンケート調査を行った。臨床医はSIDSガイドラインの活用が低く、新法解剖についての認識も低かった。また、SUIDに関する意識は法医と臨床医で差はなかったが施設間の差が大きく、多機関連携の推進が望まれた。
法医学への質問紙調査から、虐待死亡事例検証に法医学者が関わることは現時点では少なく、参加しやすい環境づくりが必要と考えられた。
結論
来年度に行われる自治体の子ども虐待重大事例検証の手引き編集に向けて、自治体の実態が明らかになり、盛り込むべき内容が明確になった。また、事例の種類による集めるべき情報のリストも提示された。検証委員会に保健師が提示する情報および心理的情報も提示され、手引きを編集する基礎が整った。加えて、死亡事例の見逃しをなくし、法医学関係者の参画を得る方向性も示された。
公開日・更新日
公開日
2017-08-30
更新日
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