若年性認知症と高次脳機能障害者の社会保障のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
201601007A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性認知症と高次脳機能障害者の社会保障のあり方に関する調査研究
課題番号
H26-政策-一般-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 駒村 康平(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,251,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,40代~50代という働き盛りに発症し得る若年性認知症及び関連生涯としての高次脳機能障害等を対象とした国内外における現状と課題を把握し,中途障害者の社会保障制度を整備するための基礎資料を得ることを目的とした.

研究方法
平成28年度は,(1) リハビリテーションインターナショナル復職国際セミナー,(2)高次脳機能障害者に対する就労支援のための評価尺度の開発,(3)英国における若年性認知症支援の取り組み(認知症にやさしい職場づくり-雇用者のための実践ガイド-の翻訳,当事者・家族・地域住民・研究者・サービス実践者・行政関係者を対象とした若年性認知症日英ネットワーク国際会議),(4)全国の特例子会社404社を対象とした若年性認知症・高次脳機能障害者の就労支援に関する郵送調査の再分析,(5)障害者の所得等に社会保障制度,雇用が与える影響に関する既往データの再分析を行った.(倫理面への配慮)所属教育機関の研究倫理委員会による承認を得て調査を実施した.
結果と考察
リハビリテーションインターナショナル復職国際セミナーでは、米国、ドイツ、インド、ニュージーランド、フィンランド、そして我が国の研究者を迎え、当該研究課題に関する各国の現状と課題について討議した結果、共通課題として早期発見システム化が挙げられた。また、高次脳機能障害の社会心理的リハビリテーションに関する米国研究者を招聘し当該研究の国際研究ネットワーク会議を開催し、家族全体の適応支援を早期に開始することによってレジリエンスの向上が期待できることがわかった。英国の「認知症にやさしい職場づくり-雇用者のための実践ガイド-」及び高次脳機能障害者就労支援効果尺度の翻訳を行った。また、特例子会社における若年性認知症、高次脳機能障害、発達障害、難病を持つ雇用者の状況を探るために、全国の特例子会社調査の結果、特に障害の4症状(若年性認知症、高次脳機能障害、発達障害、難病)のうち、最も雇用が進展しているのは発達障害であり、57社の企業が同症状を持つ従業員を雇用していること、22社が高次脳機能障害を持つ従業員を雇用し、17社が難病患者を雇用していること、若年性認知症を持つ従業員を雇用している企業は1社のみであり、その雇用数は1名であったことなどを把握した。加えて、社会保障・労働政策におけるインプリケーション,障害者のいる世帯の貧困率および障害者のいる世帯の構成員の就労状況,障害者雇用率制度の実証分析等を行なった.
結論
若年性認知症と高次脳機能障害者の社会保障のあり方として、以下を提言する。
1. いずれの障害も若年で起こりうるため、当事者及家族の財政的な支援を得るための社会保障を確保する。
2. 若年性認知症及高次脳機能障害者の雇用による社会保障費の抑制効果を検証する。
3. 雇用支援としての総合的な職業リハビリテーションシステムを見直す。
4. 発症からトリートメントに致るまでの期間を短縮化する。
5. 早期アセスメントにより総合的な個別リハビリテーション計画書を策定し共有化する。
6. 当事者・家族・地域住民・医学的リハビリテーション従事者・特別支援教育教員・保健福祉サービス従事者・障害者職業カウンセラー・職場適応援助者・事業主と職場同僚等による複合的な連携支援と移行支援システムを見直す。
7. 働くことを希望する当事者の就職前、就労中、離職後のソーシャルケアと生涯発達支援を一貫して行う。
8. 働く当事者の包括的な支援として、①症状が初期段階にある職員と家族への支援(経済支援と心理的支援を含む)、②継続的な支援と管理(合理的配慮・リハビリテーション工学・援助付き雇用支援の合併活用)、③離職段階のソフトランディング支援(若年当事者の家族介護支援、セカンドライフ支援、生涯発達支援の合併活用)を提供する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201601007B
報告書区分
総合
研究課題名
若年性認知症と高次脳機能障害者の社会保障のあり方に関する調査研究
課題番号
H26-政策-一般-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 駒村 康平(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、働き盛りの世代に発症する若年性認知症、高次脳機能障害等を対象に国内外実態調査を行い、中途障害者の社会保障制度を整備するための基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
研究実施3カ年計画の1年目には、中途障害者の生活・就労ニーズ対応型サービスの実践に関する国内外の情報収集を専門家へのヒアリングを通じて行った。2年目は、中途障害者リハビリテーションの医療、就労、福祉領域における科学的な知見を得るための調査を実施した。3年目には、その知見をもとに中途障害者の新しい社会保障制度のモデルを構築し、その妥当性と実効可能性について当事者及び関連機関に対するヒアリングを行った。
結果と考察
 平成26年度は、米国、オーストラリア、台湾における当該研究機関を対象とした研究者ネットワーク会議を実施した。対象となったのは、①米国;サンフランシスコ州立大学、ニューヨーク市立大学、南イリノイ大学、②オーストラリア;シドニー大学、モナシュ大学、③台湾;国立台湾彰化師範大学の関連研究者であった。ヒアリングを通して明らかになった若年性認知症・高次脳機能障害の社会保障及び就労支援に関する課題として、(1)早期アセスメントと介入の必要性、(2)現行社会保障制度内での対応困難性、(3)本人による障害認知と社会心理的な行動制限の問題、(4)家族中心的アプローチへの期待と限界、(5)事業主を含む地域社会の障害理解不足、(6)若年性認知症及び高次脳機能障害の地域就労支援に関する人材整備、(7)科学的根拠に基づく実践と量的・質的研究の不足が挙げられた。
 平成27年度は,(1)東京都の急性期・回復期リハビリテーション病棟の医療職及び医療福祉職1,090名を対象とした郵送調査,(2)就労している高次脳機能障害者8名への面接調査,(3)高次脳機能障害者の家族10名を対象とした面接調査,(4)英国における若年性認知症就労支援と社会保障に関する聞き取り調査,(5)障がい者雇用にかかわる団体として,企業,特例子会社,社会福祉法人,NPO法人,家族会に対するヒアリング調査,(6)全国の特例子会社404社を対象とした若年性認知症・高次脳機能障害者の就労支援に関する郵送調査,(7)障害者の所得等に社会保障制度,雇用が与える影響に関する既往データの再分析を行った.
 平成28年度には、4月11日にリハビリテーションインターナショナル復職国際セミナーを開催し、米国、ドイツ、インド、ニュージーランド、フィンランド、そして我が国の研究者を迎え、当該研究課題に関する各国の現状と課題について討議した。7月28日-31日には、高次脳機能障害の社会心理的リハビリテーションに関する米国研究者を招聘し当該研究の国際研究ネットワーク会議を開催し、当事者のレジリエンス研究に関する知見を得た。平成28年10月21-28日には国際・学際的研究状況及び英国若年性認知症の社会的ケアとネットワークに関する実態把握のためリハビリテーションインターナショナル国際会議に参加し英国アルツハイマー協会を訪問した。11月から現在までの間に、就労支援尺度としてWorkability Support Scale(WSS)を取り上げ、日本語版開発研究を実施中である。また、平成29年1月13日に若年性認知症ネットワーク研究会議と国際シンポジウムを経て最終的な提言に向けて検討した。また,社会保障・労働政策におけるインプリケーション,障害者のいる世帯の貧困率および障害者のいる世帯の構成員の就労状況,高次脳機能障害,特例子会社アンケート調査および関連ヒアリング調査,障害者雇用率制度の実証分析を行なった.
結論
我が国の若年認知症をもつ方と高次脳機能障害のある方の社会保障のあり方に関する研究については、諸外国と比べて極めて少ない。これらの障害を持つ人々が離職後に働く場所として存在する作業所の賃金は依然として低いが、地域社会との接点として貴重な居場所であることは事実である。作業所で当事者自身が他の障害者とともに作業をすることに抵抗を感じることは少なくない。同様に、介護保険制度による高齢者デイケア等でのプログラムにも、本人と家族は抵抗を感じる場合が多い。これらを解消するためには、若年性認知症を持つ方と高次脳機能障害のある方の尊厳を守る特別なプログラムの提供が必要となる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
若年性認知症と高次脳機能障害という中途障害者に対する社会保障とそれを補う可能性のある就労支援と職業リハビリテーションについて、我が国を含めた9カ国等の現状及び課題を踏まえ、我が国における世帯側(障害者貧困率と就労状況)、雇用側(特例子会社)、障害者雇用全体(パネルデータ実証分析)、当事者及び家族を対象としたヒアリング調査等により多角的に研究を実施し、就労支援効果尺度、認知症にやさしい職場づくり-雇用者のための実践ガイド-等の翻訳を行い、今後取り組むべき研究課題や政策課題等について提言を行った。
臨床的観点からの成果
本研究は国際動向、国内動向、社会保障、社会調査を主軸とした研究であるため、臨床的な成果については該当しない。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
高次脳機能障害及び若年性認知症の国際シンポジウムを公開により開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
池田絵美、八重田淳
高次脳機能障害者の医療から就労への移行:量的研究
職業リハビリテーション , 30 (1) , 38-46  (2017)
原著論文2
小泉香織、八重田淳
働く高次脳機能障害者の声:質的研究
職業リハビリテーション , 30 (1) , 47-56  (2017)
原著論文3
山田篤裕、百瀬優、四方理人
障害等により手助けや見守りを要する人の貧困の実態
貧困研究 , 15 , 99-121  (2015)

公開日・更新日

公開日
2017-08-29
更新日
2019-06-25

収支報告書

文献番号
201601007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,039,000円
(2)補助金確定額
6,039,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,026,897円
人件費・謝金 843,462円
旅費 2,530,641円
その他 850,000円
間接経費 788,000円
合計 6,039,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-08-02
更新日
-