人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究

文献情報

文献番号
201601004A
報告書区分
総括
研究課題名
人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究
課題番号
H26-政策-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部 )
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部 )
  • 小池司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部 )
  • 岩澤美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,933,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人口減少期における将来推計にあたっては、先進諸国等における人口学界の最新の研究動向を反映した人口・世帯の動向分析の深化や、地域・世帯の将来に関する情報提供により重点を置きこれに全国的な少子化・長寿化の傾向を整合させるという新たな観点を導入した将来推計モデルの開発が求められる。一方、世界から注目を浴びるわが国の人口高齢化とその政策的・技術的対応は「日本モデル」として中長期的な成長戦略分野となり得るものであり、その企画には人口・世帯の将来推計を用いた政策的シミュレーションが必要となる。そこで本研究は、人口減少期に対応した新たな人口学的将来推計に関して総合的な研究を行うことを目的としている。
研究方法
研究は、大きく分けて以下の3項目の課題領域ごとに進められる。
1.最先端技術を応用した人口減少期における総合的な人口・世帯の動向分析
2.地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的研究
3.将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究
なお、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な連携を図って研究を進める。
結果と考察
本研究は人口減少期に対応した新たな人口学的将来推計に関して総合的な研究を行うことを目的とし、①最先端技術を応用した人口減少期における総合的な人口・世帯の動向分析、②地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的研究、③将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究の三領域から研究を推進する。
3年度は、①について、地方人口ビジョンにみる地域別将来人口の見通し、施設人口と高齢者の移動、初婚/第1子出生率の動向分析:競合リスクモデルによるアプローチ、市区町村別生命表作成の課題、子どもが幼い時期の就業規範と母親の就業、日本における外国人女性の出生力、外国人の子どもの地理的分布と住宅、外国人集住地区の分布と集住地区居住外国人の特性に関する分析に関する研究を行った。また、②については、全国と都道府県の整合性を保つ将来人口推計モデルの検討、地域推計と世帯推計の統合に関する研究を、③については、外国人受入れ政策に対応した人口動態変動を織り込んだ公的年金財政シミュレーションに関する研究を行った。
結論
人口・世帯の動向は広範な分野の施策に影響を及ぼすことから、本研究で得られた動向分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が期待される。例えば、晩産化型出生パターンの定着傾向が続くかどうかは、この年齢層の女性が妊娠・出産を先送りしてきたことに関連する障害を取り除けるかどうかによることを指摘したが、この背景として、女性の両立支援など就業の課題、子育ての経済的負担、不妊治療などのARTの利用しやすさなど、政策的サポートが可能な様々な要因が関連している可能性があることから、少子化対策を行う上では本研究で得られた人口学的な動向分析を踏まえて検討が行われることが望ましい。
また、次世代の地域推計や世帯推計に向けての基礎的研究成果は、今後の地域推計・世帯推計の精度を向上させることに直結しており、これにより、子育て・医療・介護等の施策立案に必要な地域の将来人口や高齢世帯の見通しなど、厚生労働行政施策のニーズにマッチした地域・世帯に関する詳細な将来推計結果の提供が可能となるものである。
一方、将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究における、外国人受入れの公的年金財政への影響シミュレーションの成果は、今後の年金制度の検討の基礎資料としての活用が期待される。特に、平成26年財政検証を踏まえてとりまとめられた「社会保障審議会年金部会における議論の整理」(平成27年1月21日)では、財政検証において基礎年金のマクロ経済スライド調整に30年程度を要し、将来の基礎年金の水準が相対的に大きく低下していく点を問題として指摘するとともに、これは被用者年金制度における所得再分配機能を弱める効果を持つことなどから放置できないとの認識を示しているが、本研究の成果によれば、外国人を受け入れて厚生年金に適用することは、現行の年金制度が抱える基礎年金水準低下問題の解決に一定程度寄与することとなる。外国人受入れが公的年金制度に及ぼすこのような効果は他の研究ではあまり指摘されておらず、政策議論においても注目すべきポイントであると考える。

公開日・更新日

公開日
2017-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201601004B
報告書区分
総合
研究課題名
人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究
課題番号
H26-政策-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部 )
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部 )
  • 千年よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部 )
  • 小池司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部 )
  • 岩澤美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人口減少期の将来推計にあたっては、先進諸国等における人口学界の最新の研究動向を反映した人口・世帯の動向分析の深化や、地域・世帯の将来に関する情報提供により重点を置きこれに全国的な少子化・長寿化の傾向を整合させるという新たな観点を導入した将来推計モデルの開発が求められる。一方、わが国の人口高齢化とその政策的・技術的対応は「日本モデル」として中長期的な成長戦略分野となり得るものであり、その企画には人口・世帯の将来推計を用いた政策的シミュレーションが必要となる。
そこで本研究は人口減少期に対応した新たな人口学的将来推計に関して総合的な研究を行うことを目的として研究を行うものである。

研究方法
研究は、大きく分けて以下の3項目の課題領域ごとに進められる。
1.最先端技術を応用した人口減少期における総合的な人口・世帯の動向分析:先進諸国等における最新の出生・死亡研究、地域別の出生・死亡・移動とその人口学的メカニズム、離家・結婚・同棲・離婚等の世帯形成・解体行動、外国人人口の地理的分布と国内移動の動向に関する研究動向や最先端技術のレビューとデータ整備、新たな指標の開発など、国内・国外の人口・世帯の動向を総合的に分析する。
2.地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的研究:
1.で行われた総合的な人口・世帯の動向分析を踏まえて、地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的な研究を行う。
3.将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究:
将来推計を活用した政策的シミュレーションのための基礎的な研究として、地方自治体の政策と地域別人口変化との関係分析、人口減少社会における持続可能な地域政策に関する研究、世帯・居住状態の変化やその変化が政策的・行政的ニーズに及ぼす影響、高齢者ケア需要と人口移動に関する国際比較研究レビューと動向分析、総合的モデルの検討、さらに、国際人口移動の選択肢と将来人口に与える効果分析と、出生・死亡動向の変動を加えた社会保障シミュレーションに関する研究を行う。
なお、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な連携を図って研究を進める。

結果と考察
本研究の成果は多岐にわたることから、3年間全体の研究成果を、結婚・出生の動向分析、移動の動向分析、次世代地域推計の開発、外国人受入シミュレーション、次世代世帯推計の開発と地域・世帯に関する政策の5領域に体系化した。結婚・出生の動向分析として、近年のコーホート初婚率・第一子出生率は、かつての年齢パターンとは異なり、分散が拡大する傾向が見られているが、この背景として妊娠先行型結婚・出生とそれ以外の結婚・出生との分離の拡大傾向があることが確認された。これは、若年層において一定の妊娠先行型結婚・出生が安定的に存在しているのに対し、それ以外については、30歳代以上で駆け込みとも呼ばれるような出生パターンが発生してきており、このような晩産化型の出生パターンが一定の定着傾向を見せながら分布の高齢化に結びついていることが要因となっている。このような新たな年齢パターンのモデリングについて、両者を分離した多重減少モデルの適用を試み、その有効性を明らかにした。移動の動向分析としてわが国の外国人人口統計については新たな在留管理制度の導入により国勢調査との整合性は増したものの時系列データの連続性に関する問題点が存在していることが明らかとなった。次世代地域推計の開発として、プールモデルによる都道府県別将来人口推計からは、人口移動に関して矛盾がなく年齢各歳別という細かい単位でも長期間にわたって安定した推計結果が算出されること、プールモデルによれば各仮定が他地域も含めた推計結果に及ぼす影響も定量的に評価することが可能であることなどが明らかとなった。外国人受入れシミュレーションについては、受け入れた外国人を厚生年金に適用する場合には所得代替率上昇効果があるのに対して、国民年金に適用する場合は大きな効果は見られなかった。特に、受け入れた外国人を厚生年金へ適用する場合、基礎年金の水準低下幅の拡大が抑えられ、基礎年金水準低下問題に対応する効果があることが明らかとなった。
結論
人口・世帯の動向は広範な分野の施策に影響を及ぼすことから、本研究で得られた動向分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が期待される。また、次世代の地域推計や世帯推計に向けての基礎的研究成果は、今後の地域推計・世帯推計の精度を向上させることに直結しており、これにより、子育て・医療・介護等の施策立案に必要な地域の将来人口や高齢世帯の見通しなど、厚生労働行政施策のニーズにマッチした地域・世帯に関する詳細な将来推計結果の提供が可能となるものである。

公開日・更新日

公開日
2017-08-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-08-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究における次世代の地域推計や世帯推計に向けての基礎的研究成果は、今後の地域推計・世帯推計の精度を向上させることに直結しており、これにより子育て・医療・介護等の施策立案に必要な地域の将来人口や高齢世帯の見通しなど、厚生労働行政施策のニーズにマッチした地域・世帯に関する詳細な将来推計結果の提供が可能となる。一方、将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究における、外国人受入れの公的年金財政への影響シミュレーションの成果は、今後の年金制度の検討の基礎資料としての活用が期待される。
臨床的観点からの成果
対象外
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた動向分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が期待される。例えば晩産化型出生パターンの定着傾向が続くか否かは、この年齢層の女性が妊娠・出産を先送りしてきた事に関連する障害を取り除けるか否かを指摘したが、背景として女性の両立支援など就業の課題、子育ての経済的負担、不妊治療などのARTの利用しやすさなど、政策的サポートが可能な様々な要因が関連している可能性があることから、少子化対策を行う上では本研究で得られた人口学的な動向分析を踏まえて検討が行われることが望ましい。
その他のインパクト
本研究の成果によれば、外国人を受け入れて厚生年金に適用することは、現行の年金制度が抱える基礎年金水準低下問題の解決に一定程度寄与する。外国人受入れが公的年金制度に及ぼすこうした効果は他の研究ではあまり指摘されておらず、政策議論においても注目すべきポイントである。また、平成30年3月に公表された「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)においては、本研究において研究が進められたプールモデルが適用された。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
52件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
石井太、是川夕
国際人口移動の選択肢とそれらが将来人口を通じて公的年金財政 に与える影響
日本労働研究雑誌 ,  (662) , 41-53  (2015)
原著論文2
小池司朗
東京都区部における「都心回帰」の人口学的分析
人口学研究 ,  (53) , 23-45  (2017)
原著論文3
菅桂太
市区町村別生命表作成の課題――小地域における死亡数の撹乱的変動とベイズ推定における事前分布のパラメータを設定する「地域」区分が平均寿命へ及ぼす影響
人口問題研究 , 74 (1) , 3-28  (2018)
原著論文4
鈴木透
地域・世帯推計の統合モデルにおける方法論的課題
人口問題研究 , 74 (1) , 29-41  (2018)
原著論文5
小池司朗
新潟県内20市の人口移動分析―その1 1980~2015年の変化の概況―
人口問題研究 , 74 (1) , 42-60  (2018)
原著論文6
余田翔平、新谷由里子
母親の就業と祖父母からの育児支援―「個体内の変動」と「個体間の差異」の検討―
人口問題研究 , 74 (1) , 61-73  (2018)
原著論文7
林玲子
施設人口を考慮した健康寿命の動向
人口問題研究 , 74 (2) , 118-128  (2018)
原著論文8
小池司朗
新潟県内20市の人口移動分析―その2 モビリティ変化の分析を中心として―
人口問題研究 , 74 (3) , 224-241  (2018)
原著論文9
林玲子
国際人口移動の数え方
統計 ,  (2019(1)) , 38-44  (2019)

公開日・更新日

公開日
2017-08-28
更新日
2019-06-24

収支報告書

文献番号
201601004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,933,000円
(2)補助金確定額
4,933,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,603,094円
人件費・謝金 991,200円
旅費 892,789円
その他 448,661円
間接経費 0円
合計 4,935,744円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-