国際生活機能分類児童版(ICF-CY)の妥当性に関する研究

文献情報

文献番号
201601002A
報告書区分
総括
研究課題名
国際生活機能分類児童版(ICF-CY)の妥当性に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 圭司(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 発達評価センター、臓器・運動器病態外科部 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 内川 伸一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 発達評価センター、臓器・運動器病態外科部 整形外科)
  • 上出 杏里(後藤 杏里)(国立障害者リハビリテーションセンター 病院第一診療部)
  • 山田 深(杏林大学医学部 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,854,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類(ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)は、世界保健機関国際分類ファミリー(WHO-FIC: World Health Organization Family of International Classification)の一つと位置づけられている。本研究の目的は、2007年に発表された生活機能分類―児童版(ICF-CY)の妥当性を検証し、今後の展望を検討することである。
研究方法
本研究では、ICFの成り立ち及びその概要についてレビューするとともに、国際的動向を明らかにし、小児(障害を有する児を含む)等を対象に今後期待されるICF活用の可能性について考察した。ICF-CYの実践的的有用性については、小児基本動作評価スケール(Ability for Basic Movement Scale for Children; ABMS-C)、小児基本動作評価スケール・タイプT(Ability for Basic Movement Scale for Children Type T; ABMS-CT)、小児摂食嚥下評価スケールABFS-C(Ability for Basic Feeding and Swallowing Scale for Children)、小児言語コミュニケーション評価スケールABLS-C (Ability for Basic Language and communication Scale for Children)などの信頼性・妥当性を検証することによって具体化した。そして、それらの概念を統括して表現したものが、小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)であり、その信頼性と妥当性について検証を行った。
結果と考察
ABMS-C(2011宮村)やABMS-CT(2012橋本)、ABFS-C(2015上出)については、それぞれ信頼性と妥当性の検証が行われており、全て学術誌に掲載済みである。本研究において、2014年度はABPS-CとABLS-Cの考案を行い、2015年度には、障害児32名を対象にABPS-Cの信頼性と妥当性を検証した結果、医師と作業療法士の検者間信頼性ではκ値0.734-0.949, P=0.000と高い相関を示し、Performance Status:PSとLansky Performance Status:LPS、Functional Independence Measure for Children(WeeFIM),Child and Adolescent Scale of Participation: CASPによる妥当性検討では、ABPS-C合計点とPS(R値=-0.883, P=0.000)、LPS(R値=0.925, P=0.000)、WeeFIM総得点(R値=0.563, P=0.001)、CASP総得点(R値=0.56, P=0.001)などと有意な相関を示した。2016年度には、障害児26名を対象にABLS-Cの信頼性と妥当性の検証を行い、母親によるtest-retest法にて「覚醒」のみκ値-0.054, P=0.768と信頼性が低く、その他の4項目「言語理解」「言語表現」「明瞭度」「社会性」ではκ値0.469-0.737, P=0.000-0.002と有意な相関を示し、妥当性の検討では、ABLS-C合計点と新版K式発達検査2001の言語・社会(R値=0.819, P=0.000)や乳幼児発達スケール(KIDS)による総合発達月齢(R値=0.864, P=0.000)と高い相関を示した。
ABPS-Cは小児の活動度と社会参加状況を評価するスケールとして高い信頼性と妥当性があることが確認された。一方で、ABLS-Cについては、「覚醒」についての理解が一般の母親には理解しにくく有意な信頼性を得るには至らなかった。患者の覚醒レベルについては専門職種による適切な評価が必要と考えられた。
結論
本研究により生活機能分類―児童版(ICF-CY)の全人的視点を取り入れた小児言語コミュニケーション評価スケールABLS-C (Ability for Basic Language and communication Scale for Children)や小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)の信頼性と妥当性の検討を行い、それぞれ有意な信頼性が確認され、今後、リハビリテーション医療・福祉の現場での活用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-08-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201601002B
報告書区分
総合
研究課題名
国際生活機能分類児童版(ICF-CY)の妥当性に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 圭司(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 発達評価センター、臓器・運動器病態外科部 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 安保 雅博 (東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座)
  • 宮村 紘平(東京都立大塚病院 リハビリテーション科 )
  • 上出 杏里(後藤 杏里)(国立障害者リハビリテーションセンター 病院第一診療部)
  • 内川 伸一 (国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部 整形外科)
  • 山田 深(杏林大学医学部 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国際的な障害に関する分類は、2001年5月に「国際生活機能分類(ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)がIWHO総会で採択された。本研究の目的は、2007年に発表された生活機能分類―児童版(ICF-CY)の妥当性を検証し、今後の展望を検討することである。
研究方法
 小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)学童期版の妥当性・信頼性検証:対象者への問診内容からABPS-Cによるスコアリングを行い、同時に日常活動度の評価の一つであるECOG(米国腫瘍学団体の一つ)が定めたPerformance Status:PS(0-4の5段階)とLansky Performance Status:LPS(10-100まで10段階で評価、16歳以下対象)による評価、また日常生活動作能力全般の評価the Functional Independence Measure for Children(WeeFIM)、小児の社会参加の指標となるChild and Adolescent Scale of Participation:CASP(20項目について4段階で評価)を実施し、ABPS-Cとの相関関係についてSpearmanの順位相関係数を用いて検証した。信頼性の検証については、同対象者について、作業療法士と医師が同時期にABPS-Cによる評価を行い、各項目のweighted κ係数から検者間信頼性を検証した。
 発達障害児におけるICFの妥当性:国立成育医療研究センター発達評価センターを2012年12月から2014年12月の間に受診した患児の中から13名を無作為に抽出し、新版K式発達検査2001(新版K式)とABPS-Cを用いて、生活月齢と新版K式全領域の発達月齢、ABPS-C総合点との相関について比較を行った。
 整形外科疾患患児の就学再開時期に関する研究:2014年8月から2015年1月までに当院整形外科に入院し下肢の手術を行った患児の中から8名を無作為に抽出し、ABPS-Cを用いて評価した.
 障害のある子どもの言語発達評価表の開発:国立成育医療研究センター発達評価センターを受診した障害児28名(実施時の平均月齢=23.5±15.1、男児12名、女児16名)を対象に、新版K式発達検査2001とABLS-Cを実施し、新版K式の全領域、認知-適応、言語-社会それぞれの発達月齢とABLS各項目得点と総合点との関係について検討した。ABLS-Cは新版K式と並行して実施し、対象児の養育者に評価を依頼し、test-retest法により信頼性検討も行った。
結果と考察
 ABPS-C合計点とPS、LPS、WeeFIM、CASPとの有意な相関関係を認めた。また、各下位項目においてもPS、LPS、WeeFIMとの有意な相関関係を認め、活動性・教育・余暇活動の項目のみCASPとの有意な相関関係を認めた。
 発達障害児におけるICFの妥当性においては、生活月齢と新版K式の総合発達月齢は有意に相関した一方で、生活月齢とABPS-C総合点との間には相関が認められなかった。今回の結果から、対象となった患児では、新版K式の各領域を総合した全領域の発達が成長と共に獲得されているにも関わらず、日常生活活動度の伸びが思わしくない可能性を示唆している。
 整形外科疾患児のうち、普通学級へ就学再開した患児では、ABPS-C各項目の平均点が、基本動作3点、セルフケア3点、活動性1.75点、学校生活3点、余暇活動1.5点であった。一方、院内学級に就学再開した患児では基本動作0.5点セルフケア1点、活動性0.5点、学校生活1.5点、余暇活動0.5点であった。
 また、母親が評価したABLS-Cの合計点と新版K式の全領域、認知-適応)、言語-社会はいずれも有意な相関を示した。しかし、ABLS-Cの「覚醒」は新版K式のいずれの領域とも有意な相関は認められず、信頼性も低かった。
結論
 本研究によりICF-CYの全人的視点を取り入れた小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)や小児言語コミュニケーション評価スケールABLS-C (Ability for Basic Language and communication Scale for Children)の信頼性と妥当性の検討を行い、それぞれ有意な信頼性と妥当性が確認され、今後、リハビリテーション医療・福祉の現場での活用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-08-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により生活機能分類―児童版(ICF-CY)の全人的視点を取り入れた小児言語コミュニケーション評価スケールABLS-C (Ability for Basic Language and communication Scale for Children)や小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)の信頼性と妥当性の検討を行い、それぞれ有意な信頼性が確認された。
臨床的観点からの成果
小児言語コミュニケーション評価スケールABLS-C (Ability for Basic Language and communication Scale for Children)や小児活動・社会参加評価スケールABPS-C(Ability for basic activity scale for children)は、今後リハビリテーション医療・福祉の現場での活用が望まれる。
ガイドライン等の開発
特記すべきことなし。
その他行政的観点からの成果
本研究で開発したABPS-Cで評価する項目は、ICF-CY「活動と参加」の第一レベルに基づいた小児の活動・社会参加に関わる基本的5項目(基本動作、セルフケア、活動性、教育、余暇活動)で構成されている。これらの項目を、障害児リハビリテーションを行う際のリハビリテーション実施計画書に反映し、より簡便かつ有効な小児リハビリテーション医療・福祉の連携が促進されることが期待される。
その他のインパクト
橋本圭司.パネルディスカッション「乳幼児発達スケールを用いたICFの活用」.第6回厚生労働省ICFシンポジウム .東京,2017年3月18日.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
5件
WHO – Family of International Classification Network Annual Meeting
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hashimoto K, Honda M, Kamide A, et al.
Investigation of Normal Data for the Mother-Rated Ability for Basic Movement Scale for Children (ABMS-C) During the First Year of Infancy.
Pediatr Neonatal Nurs. ,  (2)  (2016)
doi http://dx.doi.org/10.16966/2470-0983.109
原著論文2
山田 深
ICFコアセットマニュアル日本語版翻訳に当たって
Jpn J Rehabil Med , 53 , 676-680  (2016)
原著論文3
Hashimoto K, Tamai S
Investigation of Mean Data for the Parent-Rated Ability for Basic Movement Scale for Children Type T (ABMS-CT) in Toddlerhood.
Pediatr Neonatal Nurs. , 3 (1)  (2017)
doi http://dx.doi.org/10.16966/2470-0983.120
原著論文4
上出 杏里, 橋本 圭司
小児リハビリテーション領域におけるICFの活用
総合リハビリテーション , 46 (1) , 37-43  (2018)
原著論文5
Tamai S, Aoki S, Hashimoto K.
Assessment of Basic Language and Communication Ability in Early Childhood: Validity and Reliability of the Ability for Basic Language and Communication Scale for Children (ABLS-C).
Pediatr Neonatal Nurs , 4 (1)  (2020)
doi.org/10.16966/2470-0983.122.
原著論文6
橋本圭司
ICFの活用の実際と展望 小児分野での活用.
総合リハビリテーション , 47 (10) , 1027-1030  (2019)

公開日・更新日

公開日
2017-08-24
更新日
2022-05-31

収支報告書

文献番号
201601002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,432,000円
(2)補助金確定額
4,432,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,246,211円
人件費・謝金 0円
旅費 390,770円
その他 1,217,019円
間接経費 578,000円
合計 4,432,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
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