大規模災害復興期等における地域保健活動拠点のマネジメント機能促進のための評価指標ツール開発に関する研究

文献情報

文献番号
201525021A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害復興期等における地域保健活動拠点のマネジメント機能促進のための評価指標ツール開発に関する研究
課題番号
H27-健危-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 美砂子(千葉大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥田博子(国立保健医療科学院健康危機管理研究部)
  • 春山早苗(自治医科大学看護学部)
  • 上林美保子(岩手県立大学看護学部)
  • 安齋由貴子(宮城大学看護学部)
  • 高瀬佳苗(福島県立医科大学看護学部)
  • 丸谷美紀(鹿児島大学医学部保健学科看護学専攻)
  • 金谷泰宏(国立保健医療科学院健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害時には事象の進展に応じて、支援人材を効果的に確保・活用しながら活動推進を図っていくマネジメントが必須であり、現状及び活動の評価に基づきマネジメントが効果的に行えるよう、支援人材活用等マネジメントの判断や行動を根拠づける評価指標ツールの開発が求められている。本研究の目的は、大規模災害復興期等における地域保健活動拠点の支援人材活用等マネジメントの実際及び課題を明らかにすることを通して、大規模災害復興期等における地域保健活動拠点のマネジメント機能促進のための評価指標ツールを開発することである。
研究方法
1.災害時の人材活用等マネジメントの実際及び課題に関する実態調査
東日本大震災を経験した3県(岩手県、宮城県、福島県)並びに離島での噴火災害を経験した鹿児島県の各地域保健活動拠点(県庁、保健所、市町村)において災害時の支援人材活用等マネジメントを担った保健師並びに復興期に派遣・任期付雇用された保健師を対象にヒアリングを行った(合計25名)。各地域保健活動拠点の保健師への調査内容は、人材活用にかかわる業務の分掌、人材活用等のマネジメントの実際及び課題・評価等である。被災市町村に派遣または任期付き雇用されている保健師への調査内容は、派遣の背景(職種、派遣形態、スキーム、担当業務・体制等)、役割・やりがい、課題・評価等である。
2.評価指標の検討及びツールの開発
実態調査結果を踏まえて、評価指標として反映すべき内容を抽出し指標(案)を作成した。次いで各活動拠点の機能並びに発災後の各フェーズの健康支援ニーズを踏まえ妥当性、有用性、活用効果の点から研究者及び関係者間の複数回の討議により精査した。
(倫理面への配慮)データの管理・保管・破棄及び研究成果の公表に際して個人情報保護を遵守した。また千葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会において承認を得た(承認年月日 平成27年8月11日;承認番号27-41)。
結果と考察
1.災害時の支援人材活用の現状及び課題:実態調査から専門職の支援人材は、被災地域の復興支援になくてはならない存在であることが示された。しかしながら、雇用形態のうち、特に任期付の場合、雇用条件が不安定で数年先まで責任の持てない立場にあるため、仕事に意欲的に取り組みにくい状況があった。予想外の業務内容や所属機関・採用機関への対応に不満感を抱き易い傾向もあった。派遣ルート、採用時期、背景は多様であり、採用後の実態の把握や研修等の体制整備が困難であることもわかった。
2.評価指標の検討及びツールの開発:実態調査の結果を踏まえ、支援人材活用に有用と考えられる評価指標を検討した。その結果、被災地のアセスメント、支援人材活用のマネジメント、評価の3大項目、下位項目として10の中項目、26の小項目に整理された。被災地のアセスメントの下位項目には地域・ヘルス・リソースに関するアセスメントが含まれた。地域アセスメントは、情報収集・伝達の窓口と手段、自治体の取組体制、被害及び被災者の状況、被災地の背景・物理的・社会経済的環境に細分化された。ヘルスアセスメントは、緊急対応の必要な健康問題、継続的に支援・配慮の必要な要援護者の問題、公衆衛生の観点から対応の必要な健康問題、健康づくりの観点から対応の必要な健康問題、各地域保健活動拠点が中心となり対応すべき健康課題・活動、事業継続及び再開に関する計画、職員の健康管理に細分化された。リソースアセスメントは、地域保健活動拠点の被災状況、地域保健活動の稼働状況、医療・福祉資源の稼働状況、健康支援に必要な専門職人材の把握、住民の自助・共助の状況、組織間の連携状況、緊急支援活動の状況、受援に向けた準備・対応、記録・資料化と活用の体制に細分化された。支援人材活用のマネジメントの下位項目は人材の確保、配置・調整、人材の育成、人材の開発、仕組み・体制づくり・施策化に整理された。評価の下位項目は、人材配置による効果・成果の把握、今後の体制・施策等への反映に整理された。
評価指標数は、県本庁138、保健所141、市町村149となった。評価指標の実用性を高めるため、評価指標の各内容について、検討済、検討中、未対応の3段階でチェックできるようにし、それぞれ2点、1点、0点を付して、評価指標の小項目(26項目)の平均数をレーダーチャートにより確認できるようにした。
結論
県本庁、保健所、市町村の各地域保健活動拠点のマネジメント担当者が、人材活用の判断や行動の根拠を得たり、実施に漏れがないかどうかを確認したり、実施したことを評価したりするために有用なチェック機能をもつ評価指標を示すことができた。今後、評価指標の妥当性及び実用性を高めるために、現場での適用による検証へと繋げ、洗練させていく意義及び必要性がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201525021C

収支報告書

文献番号
201525021Z