健康安全・危機管理対策に関連する研究開発の動向と将来予測に関する研究

文献情報

文献番号
201525020A
報告書区分
総括
研究課題名
健康安全・危機管理対策に関連する研究開発の動向と将来予測に関する研究
課題番号
H27-健危-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
  • 齋藤 智也(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 健康安全・危機管理対策研究に関して、将来の発展に向けた研究シーズ・ニーズの探査及び把握により、今後推進すべき研究領域と研究テーマの同定を行う。また研究評価・進捗管理の手法を開発することにより、効果的・効率的な推進方策の検討を行う。
研究方法
①健康安全・危機管理研究のシーズの探査及びニーズの把握
 過去の研究報告書等の文献的探索および本研究分野の学識経験者を対象としたヒアリング等によって、研究領域・研究テーマに関する意見を収集し、革新的な研究開発の方向性を同定する。
②効果的な研究評価・研究支援手法の開発
 本研究事業の研究班会議への参加、サイトビジットを実施し、研究課題の進捗状況の把握、研究課題の遂行上の問題点の抽出等を行う。また研究事業を円滑かつ効率的に遂行するために、研究課題評価システムの開発を行う。
結果と考察
①健康安全・危機管理研究のシーズの探査及びニーズの把握
【地域保健基盤形成】文献データベースを使用し、「健康危機管理」、「情報」をキーワードとして文献検索を行い、直近10年の論文内容について、共通要素を抽出・整理した。東日本大震災の発生前には、健康危機発生時の情報共有・情報発信のあり方、感染症患者発生予測、情報収集能力向上のための人材育成、などが主なテーマであった。東日本大震災後は特に、避難所における感染症予防、独居高齢者の安否確認のためのIT活用、災害時人材派遣のための情報システムの整備、などの研究が行われている。
【水安全対策】水安全対策については、浄水処理対応困難物質の抽出、排水側での管理促進、水質事故把握の体制整備、リスク把握のための研究を進める必要がある。飲用井戸等の衛生対策については、有害化学物質、病原生物の汚染リスクの把握・評価が急務である。そのためには、複雑な地下水の流動や水収支、地表水と地下水の関係、帯水層の構造、地下水採取の影響等の解明が不可欠である。また水循環政策の推進に必要な調査研究は、流域を基本単位として実施されるため、流域内の関係者の連携を一層強化する必要があり、水質事故防止のための汚染源等に関する情報管理手法の開発等の研究を進める必要がある。
【生活環境安全対策】住居衛生については、超高齢社会、地球温暖化、都市・建築の高度化と老朽化、居住形態の多様化等の変化の中で、新たな対応が必要となっている。超高齢社会の新たな課題として、劣悪な冬期室内環境による健康影響が全国的な課題として注目されている。また住宅の気密化や換気不足、水害などの災害など新たな状況に関連する結露、カビ、ダニなどによるアレルギー等の健康リスクも指摘されている。
 建築衛生については、平成10年以降、特定建築物の室内環境の不適率は持続的に上昇している状況にある。また建築物衛生法の特定建築物は、一定規模以上の特定用途となっているため、高齢者施設等の福祉施設は対象外だが、福祉施設はハイリスクな利用者が多いため、室内環境の要求レベルは高くより高度な建築・設備設計と維持管理が必要だと思われる。
【健康危機管理・テロリズム対策】この研究分野にて継続的に行われている研究課題は1)災害医療関連課題、2)CBRNE災害に対するプレホスピタル対応、3)CBRNテロ対応、4)生物テロ対応などである。CBRNEによるテロの脅威は継続しているが、発生が稀であるため、研究成果の検証やフィールドでの実用化には常に困難が伴うが、その対処にかかる検討は中長期的な観点で進めていく必要がある。なお危機管理・テロリズム対策システム研究分野における今後の課題として、事前の資金調達計画、研究プロトコルの作成、人員の確保、倫理委員会等の承認、資機材の準備等、「Science Preparedness」と呼ばれる準備体制が不可欠であることが認識されつつある。

②効果的な研究評価・研究支援手法の開発
 平成27年度健康安全・危機管理対策総合研究事業全21課題のうち、研究班会議の開催連絡があったものに対して研究事業推進官(PO)がオブザーバー参加し、研究推進の方法、研究成果の行政施策への還元方法等について、助言を行った。また健康安全・危機管理対策総合研究事業FA事務局と、評価委員および研究代表者との間で執り行われる評価業務の、円滑かつ適切な遂行を目的とした研究課題評価システムの開発を行った。
結論
 健康安全・危機管理対策総合研究事業の4研究分野について、研究動向ならびに将来予測を行った。厚生労働科学研究は行政の政策課題に直結した政策研究を行う研究事業であるため、行政側は研究に対する政策的ニーズを明確にする一方、研究者側も求められる実用的なアウトカムを指向した研究提案を行い、ニーズに応えていく必要性があると思われる。

公開日・更新日

公開日
2016-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201525020C

収支報告書

文献番号
201525020Z