エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
201525019A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究
課題番号
H27-健危-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
  • 舘田 一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
  • 鷲崎 久美子(東邦大学医学部皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,107,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エステティックにおける施術は、消費者ニーズの高まりとともに普及している。一方で、エステティックには法的な規制がなく、実態が十分に把握されていないため、衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される。本研究は、エステティックの健康被害を防止するための原因究明及び施設の衛生環境の向上を目指し、安全に施術が提供される環境を整備することを目的とした。
研究方法
Aエステティックサービスによる健康被害の実態把握及び原因の究明
1 医療機関にエステティックによる健康被害症例の収集を依頼した。
2 国民生活センターの平成26年度健康被害情報の公開を受け集計。
3 アトピー性皮膚炎患者、糖尿病患者、健常女性に対しエステティックの利用実態等についてアンケートを行った。
4 施術の皮膚に対する影響 ヒートマットの安全性調査を行った。

B施設の衛生管理の徹底について 
1 施術者の施術前後の手指細菌調査を行った。
2 被験者から施術者への細菌類の伝播を調査する目的で被験者の顔面皮膚の細菌検査を行った。
3 被験者からのヒートマットへの細菌類の伝播について検査を行った。
4 技術者養成施設における衛生管理教育に関する実状について調査を行った。
結果と考察
エステティックの利用者背景について様々な人が利用する可能性がある。顧客の状況や条件で施術を変更する必要がありその技量が施術者に備わっているかどうかは疑問である。施術による健康被害は、皮膚障害、熱傷が主であるが、皮膚障害の中には、被施術者側に過敏性要素など心身の状況で健康被害に繋がることも予想される。アトピー性皮膚炎患者へのアンケート調査では、健常者群と比べ、皮膚炎群では半数以上が施術を受けたことがあり、健常者群に比べて健康被害を受ける割合が多いことが判明した。利用者側から皮膚過敏であることの申告が必要だが、施術者が利用者の皮膚質を把握して施術を提供すれば健康被害は防止できるかもしれない。また手技による皮膚機能について検証、能力差(実務経験20年、1年)のある技術者では両者での変化はなかった。ヒートマットは、通常の使用方法では温度上昇は軽微であったが、長時間の施術による熱傷の危険性があることは啓発の必要がある。
衛生では、技術者の手を介した細菌類の伝播について調査を行った。能力差のある技術者で比較検討をした所有意な差はなかった。ヒートマットを介した細菌類の伝播についても、有意な伝播が無いことを確認した。技術者養成施設における教育の現状について講師などに対する調査を行い、その結果衛生管理実習が十分ではないなどの課題が提起された。
結論
施術の安全性は、これまで検証した施術について通常の使用方法では健康被害につながる可能性は少なく、顧客の要望により通常の手順を逸脱、心身の健康度を無視して過剰な施術を行うと皮膚障害が発生し得ることを啓発していきたい。被施術者側に皮膚過敏性素因などのリスクがある場合、健常人では問題がなくても健康被害発生が考えられる。健康被害を防止するためには、個々の施術の安全性を検証、慢性疾患などで健常人より健康被害リスクが高いことを感じながらも施術を受ける可能性もあることを踏まえ、被施術者の心身健康度を把握する問診表の提供、脆弱皮膚の扱い方に関する基礎知識が得られるような施術者への啓発教育をすべきと考えている。
衛生環境の向上では、教育方法が施設によって異なることや講師の理解に差があることが分かり、感染対策の実習教育などが課題として提起されている。いままでの研究で得た成果を元に技術者養成における衛生教育が均質化できるよう、経営者啓発も含め検討する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201525019Z