地方衛生研究所における病原微生物検査の外部精度管理の導入と継続的実施のための事業体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201525007A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所における病原微生物検査の外部精度管理の導入と継続的実施のための事業体制の構築に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 岸本 壽男(岡山県環境保健センター)
  • 山本 容正(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 岡野 素彦(北海道立衛生研究所)
  • 猿木 信裕(群馬県衛生環境研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所)
  • 木村 博一(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,454,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方衛生研究所(地衛研)の微生物検査の技術水準を維持するために、外部精度管理の手法を導入し、地方衛生研究所全国協議会(地全協)として継続的に実施することの妥当性評価を目的として研究を行った。
研究方法
本年度は1)ウイルスおよび細菌の外部精度管理モデル調査、2)ウイルス外部精度管理調査後のトラブルシューティング研修、3)手足口病と細菌性赤痢についての外部精度管理調査のたたき台案の作成、4)病原体検査の信頼性確保の取組み、および5)外部精度管理調査の実施体制について検討した。
結果と考察
1)ウイルスおよび細菌の外部精度管理モデル調査では、ノロウイルスのPCR産物を試料としてシーケンスと樹状解析、およびコレラ菌の生菌を配付し同定検査を行った。シーケンスには62機関が参加し、75.8%で適切に解読され、相同性解析では遺伝子型は100%一致したが、いくつかの問題も明らかとなった。コレラ菌の調査では74機関が参加しおよそ正しい同定結果を回答した。良い調査モデルとなった。2)昨年実施したリアルタイムPCRの外部精度管理調査後、うまく結果を出せた機関とそうでなかった機関に依頼し10機関の参加を得て、小グループで発表と討論の後、トラブルシューティング研修を行ったところ、良好な評価を得た。3)手足口病の外部精度管理調査案として、CODEHOP PCRによる遺伝子増幅と塩基配列の解析による型別のための作業手順書案を作成した。細菌性赤痢の原因菌である赤痢菌の検査についても検査法の精度と実施体制を確認する手順書等を作成した。可能ならば、次年度以降に作業班を設けて実施したい。4)WHOによる実験室評価指標と比較すると、外部精度管理調査は検査施設内の質の改善には有効な指標であるが、検体採取から検査、報告までの一連のフローの中で、信頼性を保証する必要がある。そのための評価の指標を今後、開発していくことが必要である。5)これまでの検討結果から外部精度管理調査の実施に当たっては、内部精度管理調査支援とトラブルシューティング研修を一体化させて実施すること、外部精度管理調査を継続的に実施可能な予算や人員のある組織が必要で、運営組織には地全協と感染研や厚労省が、実施組織には感染研を中心とすることが望ましいとの結論を得た。すなわち感染研に事務局といったものを設置するのが適当である。また検査の経験ある地衛研職員の積極的参加が必須である。
結論
定期的継続的な外部精度管理調査の実施が地衛研の微生物検査の技術水準の維持や感染症検査の質確保および地衛研担当者の人材育成に役立つと考えられ、ひいては国や自治体の感染症発生動向調査や健康危機管理対応に役立てられるので事業化を強く要望したい。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201525007B
報告書区分
総合
研究課題名
地方衛生研究所における病原微生物検査の外部精度管理の導入と継続的実施のための事業体制の構築に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 岸本 壽男(岡山県環境保健センター)
  • 山本 容正(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 岡野 素彦(北海道立衛生研究所)
  • 猿木 信裕(群馬県衛生環境研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所)
  • 木村 博一(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方衛生研究所(地衛研)の微生物検査の技術水準を維持するために、外部精度管理の手法を導入し、地方衛生研究所全国協議会(地全協)として継続的に実施することの妥当性評価を目的として研究を行った。
研究方法
平成26および27年度の二年間で、1)感染症検査の精度管理に関する地衛研の実態についてのアンケート調査、2)ウイルスおよび細菌の外部精度管理モデル調査(ウイルス検査ではリアルタイムPCRとシークエンス・樹状解析、細菌検査ではサルモネラ属菌とコレラ菌)、3)ウイルス外部精度管理調査後のトラブルシューティング研修、さらに、4)手足口病と細菌性赤痢についての外部精度管理調査のたたき台案の作成、5)病原体検査の施設指針案の検討、6)病原体検査の信頼性確保の取組み、および7)外部精度管理実施要綱案の作成および外部精度管理調査の実施体制について検討した。
結果と考察
1)平成26年10月時点の地衛研における感染症検査の実態について全79地衛研を対象とするアンケート調査を行った。感染症検査の担当者の状況、検査可能な感染症疾患、感染症検査実施状況、検査法の根拠、標準作業手順書の有無、外部精度管理が必要な感染症等、内部精度管理の実施状況、外部精度管理導入の可否、などについて基礎資料を得た。2)ウイルスおよび細菌の外部精度管理モデル調査では、ウイルスでは遺伝子検査技術、細菌では菌の同定検査を行った。外部精度管理調査に必要な検討事項を洗い出し書類を作成した。実施後にも検討課題が明かとなった。3)外部精度管理調査に関する研修はこれまでほとんど行われていない。外部精度管理モデル調査で試薬や機器の管理と基本的手技と知識に課題がみつかり、小グループミーティング形式で職場訓練(OJT)を模して実施し、トラブルシューティング研修は高い評価を得た。4)二年間の調査の課題を踏まえて、手足口病と細菌性赤痢について外部精度管理調査のたたき台案を作成した。5)病原体検査の施設指針案として遺伝子検査における環境汚染のリスクを最小とする案を提示した。6)病原体検査の信頼性確保の取組みとして、検体採取から検査、報告まで信頼性を保証する必要があることを示した。および7)外部精度管理実施要綱案の作成および外部精度管理調査の実施体制について検討し、外部精度管理調査の実施に当たっては、内部精度管理調査支援とトラブルシューティング研修を一体化させて実施すること、外部精度管理調査を継続的に実施可能な予算や人員のある組織が必要で、運営組織には地全協と感染研や厚労省が、実施組織には感染研を中心とすることが望ましいとの結論を得た。その場合、感染研にその事務局をおくこと、検査に経験ある地衛研職員の積極的参加が必須である。
結論
定期的継続的な外部精度管理調査の実施が地衛研の微生物検査の技術水準の維持や感染症検査の質確保および地衛研担当者の人材育成に役立つと考えられ、ひいては国や自治体の感染症発生動向調査や健康危機管理対応に役立てられるので、事業化を強く要望したい。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201525007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
外部「精度管理」調査方法には3種類程度あると記載されているが、わが国の感染症法の枠内で実施可能で意義ある方法として調査案を作成し実施しその評価を得ることができた。結果として、地衛研の技術レベルの維持と向上や感染症検査の質確保および人材育成のみならず、地衛研の将来、および地衛研と国立感染症研究所との感染症等のネットワークの維持向上や健康危機管理に役立てられる貴重なデータが得られ、今後に役立てられる基礎資料ができた。
臨床的観点からの成果
今回の研究目的に含まれていない
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
改正感染症法に基づく外部精度管理事業についての企画検討委員会(仮称)の準備会合でこの研究班の成果について報告した。とくに外部精度管理調査の仕組みや個々の調査内容と結果について紹介した。
その他のインパクト
2年間の研究期間中、地方衛生研究所全国協議会関連の会合(理事会、臨時総会、総会時の精度管理部会、臨時理事会等)、仙台での衛生微生物技術協議会における感染症法改正に関するシンポジウム、国立感染症研究所の希少感染症診断技術研修会で、研究活動の進捗状況や今後の予定等、また外部精度管理調査結果の報告を行い、関係者等への外部精度管理に関する研究への理解を深め、成果に生かしてきた。2016年度の厚労省の外部精度管理事業実施にも役立てられる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
H26年5月に実施した病原体サーベイランス等に関する調査よりー地方衛生研究所における検査実施体制について
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
感染症法改正と病原体検査指針④検査の信頼性確保、および、コレラ菌の検査と精度管理
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成28年度から厚労省で外部精度管理事業が実施される
その他成果(普及・啓発活動)
1件
地衛研関係者には、衛生微生物技術協議会や国立感染症研究所希少感染症研修会で紹介した

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2020-05-29

収支報告書

文献番号
201525007Z