新規in vitro評価系とマーカーの開発によるナノマテリアルのリスク評価及びリスク低減化に関する研究

文献情報

文献番号
201524014A
報告書区分
総括
研究課題名
新規in vitro評価系とマーカーの開発によるナノマテリアルのリスク評価及びリスク低減化に関する研究
課題番号
H27-化学-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 昌俊(横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 林 幸壱朗(名古屋大学 エコトピア科学研究所)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター研究所 発がん研究システム分野)
  • 中江 大(東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 花方 信孝(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 ナノテクノロジー融合ステーション)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
16,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ナノマテリアルの適切な物性解析、新規in vitro評価系の確立、細胞内応答機構等の解析で従来の評価系との比較検討、新たなマーカーの確立、適切な動物実験等による妥当性の検証を目的する。具体的には、(i)ナノマテリアルのリスク評価のための新規in vitro評価系およびマーカーの開発(ナノマテリアルのDNA損傷性新規評価系およびマーカーの開発, 共培養及び3Dモデルを用いたナノマテリアルの気道毒性新規評価系の開発、共培養及び3Dモデルを用いたナノマテリアルの皮膚毒性新規評価系の開発)、(ii)従来のin vitroリスク評価系との比較検討、in vivo動物実験による当該リスク評価系の検証、 (iii)それらを用いたナノマテリアルのリスク評価、(iv)当該評価結果に基づくリスク低減化方策の考案と検証を柱とした。
研究方法
(1)ナノマテリアルの作成・キャラクタリゼーションは、金(Au)、銀(Ag)ナノ粒子(NPs)の合成および評価を行った。(2)細胞応答に及ぼすナノマテリアルの物性解析は、異なる一次粒子径の酸化ニッケル(II)(NiO) NPsより同程度の二次粒子径の懸濁液の作成と評価を行った。(3)ナノマテリアルの細胞毒性・遺伝毒性発現メカニズムの解析は、酸化亜鉛(ZnO) NPsの懸濁液中の特性および細胞毒性・免疫応答解析を行った。(4)ナノマテリアルによるDNAの直接・間接的損傷性評価系の構築は、ICRマウスに非修飾磁性体ナノ粒子(Fe3O4 NPs)懸濁液の経気道的曝露後、DNA付加体を網羅的に分析した。また、共培養系を用いたナノマテリアルの遺伝毒性評価系の構築として,GDL1とRAW264利用し、Fe3O4 NPsを各細胞単独に、あるいは共培養系に曝露後、gpt遺伝子の変異を解析した。(5)in vivo動物実験による新規in vitroリスク評価系の有効性の検証では、ナノ粒子の皮膚毒性に関する新規in vitroスクリーニング評価系を開発に着手した。(6) ナノマテリアル曝露による網羅的遺伝子発現解析・エピジェネティクスマーカーの検索は、A549細胞に修飾/非修飾Fe3O4 NPsを曝露し, miRNAの網羅的発現解析を行った。(7)切片担体培養系を用いたナノマテリアルのリスク評価系の構築は、A549細胞の試行培養を行った。また、DU145細胞へのFe3O4 NPsとFe3O4 NPs-COOHの曝露実験を行い、Western blotting等で、細胞内シグナリングの解析を行った。
結果と考察
(1)Au NPs濃度が2 mg/mLの溶液を合成できたが、Ag NPsは新しい合成法を開発することになった。(2)Ni NPsは、1 mg/mLでは二次粒子径サイズの異なる懸濁液が調製できたが、10 mg/mLを懸濁原液の調製を検討する必要性を認めた。(3) 2種類のZnO NPs分散製品について、懸濁液及び培地懸濁液中での物理化学的性質が異なり、あるZnOが強い細胞毒性を示し、IL-8産生量、CD54発現量も高い結果を得た。これらより、マテリアルの物理化学的性状の重要性を認めた。(4)非投与群と比べて、Fe3O4 NPs投与群においてより多くのDNA付加体が生成され、酸化ストレス及び炎症由来の付加体であるエテノ-dC(εdC)等を抽出した。Fe3O4 NPsのGDL1細胞単独曝露に比べ、RAW264単独及び両細胞に曝露させた時の変異頻度の上昇や、Fe3O4 NPsを両細胞に曝露時のスペクトルがgpt deltaマウスへのFe3O4 NPs曝露時の肺の変異スペクトルに類似することより、in vitro共培養系を用いた遺伝毒性評価は生体を模倣した新たな遺伝毒性評価システムとしての可能性が示された。(5)再構成ヒト皮膚培養系を用いることに決定した。Au NPs曝露実験では、LDH assayを行った。 (6)非修飾NPsと修飾NPsに暴露された細胞での特徴的なmiRNA変動を認めた。(7) A549細胞の担体培養を行ったが、増殖不良にて、新しい組織片の準備が必要と考えられた。また、細胞生存シグナルであるNFκBの発現量は、Fe3O4 NPs曝露群では抑制され,Fe3O4NPs-COOH曝露群では増強され、表面修飾の有無による影響等を明らかにした。
結論
平成27年度では、新規in vitroリスク評価系として、in vivo 実験 (gpt delta mouse)-DNAアダクトーム-共培養系の流れを構築、非修飾/修飾磁性体ナノ粒子のA549細胞への曝露実験で、網羅的遺伝子発現解析を行い、ナノマテリアルの曝露における細胞障害等のマーカーとして特異的なmiRNAを抽出,表面修飾の有無によるNFκB axisへの影響を明らかにした事が特筆と考える。

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201524014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,580,000円
(2)補助金確定額
21,580,205円
差引額 [(1)-(2)]
-205円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,099,326円
人件費・謝金 0円
旅費 584,825円
その他 916,054円
間接経費 4,980,000円
合計 21,580,205円

備考

備考
預金利息205円

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-