家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201524006A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究
課題番号
H25-化学-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部 環境科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 東野 晴行(独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 環境暴露モデリンググループ)
  • 神野 透人(名城大学 薬学部 衛生化学研究室)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、室内環境での化学物質曝露に関する精緻な健康リスク評価モデルを確立することを目的として、放散試験で得られる化学物質放散速度に関する情報や、実態調査によって得られる室内空気中の化学物質濃度に関する情報に基づいたシミュレーション手法を確立するとともに、”時間” に関する情報を包含する曝露シナリオを構築する。
研究方法
化学物質の室内放散源として、市販の家庭用スプレー製品計32製品(室内空間や衣類の芳香・脱臭剤、衣類お手入れ剤およびリネンウォーター等であり、全て水性製品)について、前年度に確立したGC/MSによる分析法を用いて、グリコール類およびグリコールエーテル類等の揮発性有機化合物18種類を対象として実態調査を実施した。また、ウレタン製の枕やアイロン台、ジェルネイル、接着剤、床用敷物、壁紙等計30製品を対象としてマイクロチャンバー用いた放散試験を実施し、イソシアネート類および揮発性有機化合物の放散速度から、室内気中濃度ならびに呼吸域曝露濃度を推定した。曝露濃度推計ソフトウェアの開発に関しては、スプレー噴霧を対象としたシミュレーション手法の開発、スプレー噴霧および防虫剤の使用に関する暴露係数の収集、およびスプレー噴霧および防虫剤使用に関するシミュレーション手法の適用を試みた。さらに、家庭用品から放散される化学物質の気道刺激性を評価する目的で、欧州連合の化粧品指令でアレルギー物質としてラベル表示を義務付けられた香料成分を対象として、ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて、細胞内カルシウム濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネル活性化能を評価した。
結果と考察
室内空気汚染を引き起こす可能性のある瞬時型放散源として、芳香剤等の非エアゾール型家庭用水性スプレー製品32製品について実態調査を実施した。その結果、dipropylene glycol(DPG)や、propylene glycol(PG)等7種類の化合物が検出され、その検出頻度はDPGが最も多く、22製品から(1.7~1.8×104 μg/mL)、次いでPGが10製品(1.7~1.5×104 μg/mL)から検出された。各化合物が最も高濃度で検出された試料を使用した際の、平均室内空気中濃度を推定したところ、2-ethyl-1-hexanolを除く6種類の化合物はその濃度レベルが10-2~1 mg/m3と推定された。そのため、これらの化合物については芳香剤等の家庭用水性スプレー製品がその放散源の一つになり得ることが明らかとなった。また、呼吸器近傍で使用される家庭用品として、ウレタン製の枕やアイロン台、ジェルネイル、接着剤、床用敷物、壁紙等30製品について、マイクロチャンバーを用いて放散試験を実施し、家庭用品から放散される化学物質の放散速度および呼吸器近傍での気中濃度増分予測値を算出した。その結果、家庭用品27製品から、呼吸器や眼粘膜、皮膚等に影響を与える可能性があるイソシアネート類が放散することが判明し、呼吸器近傍の空気中濃度を予測した結果、0.0210-296 μg/m3の濃度で使用者が非意図的に曝露される可能性が明らかになった。曝露濃度推計ソフトウェアの開発に関しては、スプレー噴霧を対象としたシミュレーション手法の開発、スプレー噴霧および防虫剤の使用に関する暴露係数の収集、およびスプレー噴霧および防虫剤使用に関するシミュレーション手法の適用を試みた。その結果、スプレー噴霧を評価対象として開発したモデルは既存のモデルと同等の推定精度であった。また、防虫剤を対象としたマルチボックス(マルチゾーン)モデルの検証を実施した。モデルによる推定値は既報の再現試験の実測値とおおむね一致し、実測値の1/2~2倍の範囲内であった。開発したモデルを用いることにより、収納空間に設置された放散源の居室濃度へ及ぼす影響を考慮することが可能となる。さらに当初の計画に加えて、室内環境化学物質の健康影響評価に関する研究として、TRPイオンチャネル活性化を指標として家庭用品から放散する可能性のある化学物質の気道刺激性を評価した結果、香料アレルゲンとして表示義務のある香料17物質中8物質が濃度依存的にTRPA1の活性化を引き起こすことが判明した。
結論
瞬時放散源としてスプレー式家庭用品32製品、壁紙やカーペット等の定常放散型家庭用品、呼吸域で使用される家庭用品30製品を対象として放散化学物質の評価方法を確立し、製品使用時の室内への負荷量を定量的に解析した。曝露濃度推計ソフトウェアの開発では、スプレー噴霧や衣料用防虫剤の使用を対象としたシミュレーション手法の開発と検証を終了した。

公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201524006B
報告書区分
総合
研究課題名
家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究
課題番号
H25-化学-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部 環境科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 東野 晴行(独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門環境暴露モデリンググループ)
  • 神野 透人(名城大学 薬学部 衛生化学研究室)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 田原麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、シックハウス対策として省際的な研究班を組織し、超小形チャンバーによる放散試験等により得られる化学物質放散速度に関する情報や、実態調査で得られる室内空気中の化学物質濃度に関する情報に基づいたシミュレーション手法を確立するとともに、“時間” に関する情報を包含する曝露シナリオを構築し、これらの要素技術の集積によって室内環境での化学物質曝露に関する精緻な健康リスク評価モデルを確立することを本研究の最終的な目的とする。
研究方法
室内空気中の化学物質濃度の日内変動に関して、一般家庭を対象として実態調査を実施した。シックハウス対策として、室内環境汚染物質の発生源、ならびに呼吸域での最高曝露濃度をハイスループットに推定する方法を開発し、瞬時放散型家庭用品として家庭用スプレー式54製品、壁紙やカーペット等の定常放散型家庭用品、呼吸域で使用される家庭用品60製品を対象として放散化学物質の定量的な解析を実施し、室内空間への負荷量ならびに曝露量を推定した。曝露濃度推計ソフトウェアの開発では、スプレー噴霧や衣料用防虫剤の使用を対象としたシミュレーション手法の開発と検証を実施した。
結果と考察
室内空気中の化学物質濃度の日内変動に関して、一般家庭を対象として実態調査を実施した結果、総揮発性有機化合物濃度については、瞬時濃度を測定した住宅の88%で暫定目標値の2.5倍を超える一過性の上昇が認められること、また、一時間値では日内で15倍変動することを明らかにした。また、個別に定量したBenzene濃度の日内変動パターンから、室内のベンゼン発生源として、喫煙以外に線香等の焼香が重要であり、居住者によるこれらの行為によって室内ベンゼン濃度が急激に上昇することを明らかにした。この結果は、第18回シックハウス (室内空気汚染) 問題に関する検討会において、ベンゼンに関する指針値策定の必要性を議論する上で重要な情報として提供した。室内空気汚染の原因となる放散源に関する研究では、これまでに厚生労働省の委託調査として取り組んできた調査結果を基に、放散源スクリーニングの対象とするVOC/SVOCを選定するとともに、瞬時放散型家庭用品として家庭用スプレー式54製品、壁紙やカーペット等の定常放散型家庭用品、呼吸域で使用される家庭用品60製品を対象として放散化学物質の定量的な解析を実施し、室内空間への負荷量ならびに曝露量を推定した。その結果、室内空気汚染全国実態調査で、高頻度かつ高濃度で検出された環状ポリジメチルシロキサン類や、グリコール類及びグリコールエーテル類については、家庭用スプレー製品が重要な発生源となること、ある種の家庭用品から気道刺激/感作性が報告されているアクリル酸エステル類やそのモノマー、イソシアネート類が放散されることが判明した。さらに本研究では、これら家庭用品の使用による最高曝露濃度を推定する手法として、呼吸域曝露評価手法を確立した。曝露濃度推計ソフトウェアの開発に関しては、衣料用防虫剤の曝露濃度の推定を目的として、衣料用収納容器、収納空間、および居室の各空間をリンクしたマルチボックス(マルチゾーン)モデルに加え、スプレー噴霧を対象としたシミュレーション手法を開発した。さらに、CONTAMを用いて呼吸域曝露濃度シミュレーションへの適用可能性について検討を行い、呼吸域および室内の経時的な化学物質濃度を解析した結果、一過性に放出された化学物質の室内最高濃度の約14倍、24時間平均濃度の160倍の濃度で作業者が曝露される可能性があることを明らかにした。当初の計画に加えて実施した、室内環境化学物質の健康影響評価に関する研究では、呼吸器障害等の相談件数が増加している高残香性衣料用柔軟剤の揮発成分についてTRPイオンチャネル活性化を指標として気道刺激性を評価し、市販の高残香性衣料用柔軟剤20製品中18製品が濃度依存的にTRPA1の活性化を引き起こすことを明らかにした。
結論
室内汚染化学物質の発生源として、瞬時放散源としてスプレー式家庭用品54製品、壁紙やカーペット等の定常放散型家庭用品、呼吸域で使用される家庭用品60製品を対象として放散化学物質の評価方法を確立し、製品使用時の室内への負荷量をならびに呼吸域での曝露濃度を定量的に解析した。曝露濃度推計ソフトウェアの開発では、スプレー噴霧や衣料用防虫剤の使用を対象としたシミュレーション手法の開発と検証を終了した。

公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201524006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
シックハウス対策として、室内環境汚染物質の発生源、ならびに呼吸域での最高曝露濃度をハイスループットに推定する方法を開発した。実際に家庭用品に適用した結果、家庭用品の使用によって、平均室内濃度の160倍高い濃度で作業者が化学物質に曝露される可能性を明らかにした。さらに、家庭室内でのスプレー製品や殺虫・防虫剤を使用した際の化学物質曝露量を推定するための、時間分解型曝露シミュレーション手法を開発した。
臨床的観点からの成果
本研究は、臨床研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
室内のベンゼン発生源として、喫煙以外に線香等の焼香が重要であり、居住者によるこれらの行為によって室内ベンゼン濃度が急激に上昇し、大気環境基準を超過することを明らかにした。この結果は、第18回シックハウス (室内空気汚染) 問題に関する検討会 (2014.3.17、資料2ベンゼンの暴露について) において、ベンゼンに関する指針値策定の必要性を議論する上で重要な情報として提供した。
その他行政的観点からの成果
シックハウス対策として、瞬時放散型家庭用品として家庭用スプレー式54製品、壁紙やカーペット等の定常放散型家庭用品、呼吸域で使用される家庭用品60製品を対象として放散化学物質の定性的および定量的な解析を実施し、室内空間への負荷量ならびに曝露量を推定した。これら家庭用品からの放散化学物質に関する情報は、室内空気汚染物質の発生源を特定する際の、重要な情報として活用されることが期待できる。
その他のインパクト
本研究で実施した香料成分の気道刺激性に関する成果について、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議からの依頼をうけ、公開セミナーで講演した。また、室内製品に含まれる化学物質のヒトへの曝露量を推定するシミュレーション手法に関する本研究の成果は、産業技術総合研究所から平成28年度に公開が予定されている「消費者製品からの化学物質暴露評価ツール」の開発に貢献した。家庭用品の使用にともなう化学物質の曝露量を使用者自身が簡易に推定できるツールとして、将来的に広く国民の皆様に活用されることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201524006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,100,000円
(2)補助金確定額
13,100,673円
差引額 [(1)-(2)]
-673円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,707,788円
人件費・謝金 0円
旅費 515,262円
その他 5,877,623円
間接経費 0円
合計 13,100,673円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
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