文献情報
文献番号
201523017A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の見直しに関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 中島 一格(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
- 松崎 浩史(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
少子高齢化による疾病構造と人口構成の変化は、献血者の減少と輸血が必要な患者の増大による血液製剤の需給バランスの不均衡を招来する可能性を孕んでいる。事実、近年の若年者を中心とした献血者数の減少は、単に献血行動の変化のみならず若年人口層の減少の影響も無視できない。また、高齢化によるがん等の慢性疾患の増加は、輸血機会の増大を招来している。
本研究はこのような背景事情と献血者の健康保護の観点に立脚して採血基準の変更可能項目を同定し、将来に及ぶ安全な血液製剤の安定供給に寄与することを目的として行うものである。
本研究はこのような背景事情と献血者の健康保護の観点に立脚して採血基準の変更可能項目を同定し、将来に及ぶ安全な血液製剤の安定供給に寄与することを目的として行うものである。
研究方法
2014年10月1日から2015年9月30日の期間に成分献血を行なった献血者を日本赤十字社の献血者データ統一システムのデータから抽出した。そのうち、偶数月の計6か月の献血者データを用いて分析を行なった。当該期間の成分献血者数は、67万5,409人であったが、矛盾データなど不適切なデータを排除(PC献血の2名を含む)して67万5,407人(男性46万3,601人、女性21万1,806人)を分析の対象とした。なお、統計解析は、IBM SPSS Statistics22 を用いた。
(倫理的配慮)
研究を始めるにあたっては、東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会に申請し、内容的に倫理審査非該当の結果を得ている。
(倫理的配慮)
研究を始めるにあたっては、東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会に申請し、内容的に倫理審査非該当の結果を得ている。
結果と考察
男性の血小板献血の年齢上限値を54歳から69歳に引き上げたことにより、献血リスクが増大したデータは見出せなかった。現行基準の妥当性が検証された。ただ、若年層の献血者や体重が比較的軽い献血者の健康保護に配慮する必要性が、改めて確認された。
献血時の若年者の状態に配慮して日本赤十字社が定めている体重と献血量の関係を適用することで、採取血小板単位数の上限値の20単位を維持した上で、血小板献血を行なう男性の中高齢者の採血量の上限値を600mLにすることは、献血者の安全上問題がないものと思われる。
一方、女性の血小板献血は、55歳以降にVVRの発生が多くなることから54歳が献血可能上限年齢となっている。体重が55~70kg未満の女性では、VVRの発生が少なかった。
これらのことから、女性の血小板献血は、年齢上限は据え置いた上で、体重が55~70kg未満の献血希望者を対象にして試行的に実施することも考えられる。
体重については、男性血小板献血では、45~60kg未満の低体重献血者に副作用が多く発生していた。副作用の主体のVVRも同様に45~65kg未満で有意に多く発現していた。一方、女性血小板献血では、副作用は、40~50kg未満の低体重献血者に多く発生していた。VVRについては、40~55kg未満で有意に多く発現していた。
男性血漿献血の副作用は、45~50kg未満と55~60kg未満の体重の献血者で多く発生していた。特にVVRは、45~60kg未満で有意に多く発現していた。
女性血漿献血では、副作用は、40~50kg未満の低体重献血者に多く発生していた。VVRについては、40~50kg未満で有意に多く発現していた。
献血者の健康を保護して成分献血に伴うリスクを軽減するためには、体重に関する男性の献血基準は、少なくとも55kg以上(可能であれば60kg以上)に設定する必要がある。女性については、50kg以上(可能であれば55kg以上)とすることが必要である。
すでに全血献血では、男性の献血可能体重を55.0kg以上、女性のそれを50.0kg以上に改めることが必要であるとの結論が、平成25年度厚生労働科学研究費補助金により行なった「採血基準の見直しに関する研究」の中の『体重基準と献血者の健康保護に関する研究』で出ている。これらのことを勘案して、献血者の安全性に一層配慮した科学的な体重基準を設定する必要がある。
献血時の若年者の状態に配慮して日本赤十字社が定めている体重と献血量の関係を適用することで、採取血小板単位数の上限値の20単位を維持した上で、血小板献血を行なう男性の中高齢者の採血量の上限値を600mLにすることは、献血者の安全上問題がないものと思われる。
一方、女性の血小板献血は、55歳以降にVVRの発生が多くなることから54歳が献血可能上限年齢となっている。体重が55~70kg未満の女性では、VVRの発生が少なかった。
これらのことから、女性の血小板献血は、年齢上限は据え置いた上で、体重が55~70kg未満の献血希望者を対象にして試行的に実施することも考えられる。
体重については、男性血小板献血では、45~60kg未満の低体重献血者に副作用が多く発生していた。副作用の主体のVVRも同様に45~65kg未満で有意に多く発現していた。一方、女性血小板献血では、副作用は、40~50kg未満の低体重献血者に多く発生していた。VVRについては、40~55kg未満で有意に多く発現していた。
男性血漿献血の副作用は、45~50kg未満と55~60kg未満の体重の献血者で多く発生していた。特にVVRは、45~60kg未満で有意に多く発現していた。
女性血漿献血では、副作用は、40~50kg未満の低体重献血者に多く発生していた。VVRについては、40~50kg未満で有意に多く発現していた。
献血者の健康を保護して成分献血に伴うリスクを軽減するためには、体重に関する男性の献血基準は、少なくとも55kg以上(可能であれば60kg以上)に設定する必要がある。女性については、50kg以上(可能であれば55kg以上)とすることが必要である。
すでに全血献血では、男性の献血可能体重を55.0kg以上、女性のそれを50.0kg以上に改めることが必要であるとの結論が、平成25年度厚生労働科学研究費補助金により行なった「採血基準の見直しに関する研究」の中の『体重基準と献血者の健康保護に関する研究』で出ている。これらのことを勘案して、献血者の安全性に一層配慮した科学的な体重基準を設定する必要がある。
結論
本研究により、男性の血小板献血については採取血小板単位数の上限値の20単位を維持した上で、血小板献血を行なう男性の中高齢者の採血量の上限値を600mLにすることは、献血者の安全上問題がないことがわかった。
女性の血小板献血は、年齢上限は据え置いた上で体重が55~70kg未満の献血希望者を対象にして試行的に実施することも一法である。
本研究の成果は、献血者の健康保護を図りつつ献血可能人口の発掘に貢献することに寄与し、必要な血液製剤の確保の推進にも繋がるものである。そして、血液法の理念である血液の安全性確保と安定供給の達成に大きく寄与し、厚生労働省や日本赤十字社、地方自治体、献血関連団体の政策や活動方針の策定、血液事業の展開に貢献するものである。
女性の血小板献血は、年齢上限は据え置いた上で体重が55~70kg未満の献血希望者を対象にして試行的に実施することも一法である。
本研究の成果は、献血者の健康保護を図りつつ献血可能人口の発掘に貢献することに寄与し、必要な血液製剤の確保の推進にも繋がるものである。そして、血液法の理念である血液の安全性確保と安定供給の達成に大きく寄与し、厚生労働省や日本赤十字社、地方自治体、献血関連団体の政策や活動方針の策定、血液事業の展開に貢献するものである。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
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