薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201523013A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築に関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 玲(法政大学 大原社会問題研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、薬害関連被害者団体が所蔵している資料を対象にし、薬害関連資料の体系的な管理のために、「薬害資料データ・アーカイブズ」の基盤を構築することである。この作業は、薬害資料を活用して持続可能な研究、教育、展示などのためのインフラストラクチャー(infrastructure)、ハブ(Hub)機能を構築するものである。特に、高齢化により資料整理が難しい薬害被害者団体を中心に、資料の形態別分類、目録入力、シリーズ別(場合によってはファイルレベル)開示区分などを行って、データベース化することを目指している。この事業は、薬害事件と関連する貴重な資料が適切に管理・保管がなされないままに散逸し、失われることを防ぐために必要な作業である。
研究方法
研究方法としては、アーカイブズ学のメタデータ管理方法と手順に基づいて、対象となる資料を選別、整理、目録入力、デジタル化(今回は主に保存状態の悪い文書を対象にする)、公開資料の選別、検索機能の設計、共有方法を模索することである。メタデータとは、情報検索システムの検索対象となるデータを要約したデータであり、図書館情報学の分野では書誌情報と呼ぶこともある。例えば文書であれば作成者、表題、作成年月日等のほか、関連キーワードなどを含めるのが一般的である。本研究の特徴のなかで最も注目されるべきことは、大学を中心に民間、官庁の協力体制で作業が行われたことである。
結果と考察
本稿では薬害資料データ・アーカイブズに関する研究のベースとして、薬害8団体が所蔵している記録を対象に、リスト作成および修正、情報公開の区分、永久保存記録の選別などを実施したことを記述したい。上記の対象となる資料は 1960年代から現在に至るまで、日本各地で発生した薬害事件の被害者に関わる裁判請求資料(原告団、弁護団所蔵)、 市民運動資料、メディア関連資料などである。これらの記録群は日本の高度成長期における薬害事件に関する、主な流れと特徴が理解できる貴重な記録として、永久保存の価値があると思われる。記録は原則として原本を保存しなければならない。しかし、当面、永久保存できる施設に移管できる状態でないので、 被害者団体はもちろん、研究者が活用するための装置として、データ・アカイビング作業を行う必要性がある。本研究では、データ・ア-カイビングのシステム的作業は、現段階では難しいと判断し、一応、データ化の基礎を成す記録物のリスト化、情報公開区分の作業を行った。今年、薬害被害団体 8団体の記録に対して、文書3,066件、図書1277件、視聴覚資料1,664件、モノ資料14件など、総計6,021件に対する情報公開の区分を終了した。
結論
薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築のために、最も重要な作業は、薬害関連資料の収集、整理、情報公開区分である。本研究では、今までの薬害資料の概要調査と目録作成作業に基ついて、情報公開の区分作業を中心に推進した。薬害8団体の情報公開区分の総計は、2016年3月現在、6,021件である。総計6,021件のうち、公開区分とされた記録は3,408件(約56.6%)、非公開記録は621件(約10.3%)、要審査記録(部分公開および未整理記録)は、1,992件(約33.1%)である。この公開区分の作業は、薬害資料研究チームと資料の内容を十分把握しているそれぞれの薬害被害者団体のメンバーが協力して実施したことに意味がある。公開区分の基準では、「個人情報の保護」が必要な記録や「団体の機密事項」などが含まれている場合は、「非公開」と区分けされた。また、部分公開や詳細な整理が必要な記録については、「要審査記録」として区分された。要審査資料は、いずれ薬害資料館等へ移管された後、再区分する作業が必要であると思われる。自力で整理と評価選別が可能な団体は自らできるように指導し、高齢化・団体閉鎖などによって自力で整理が難しい団体に対しては、薬害研究チームが出向いて補助作業を行った。
今後、このようなリスト化と情報公開区分を基にして、薬害記録が安定した機関で永久保存されるようになった際には、目録記述と電算化作業に必要なメタデータ付与を実施することが望ましい。 それにより薬害記録は、歴史的アーカイブズとして永久に保存され、被害者団体も研究者も活用できるようになることで、「薬害の再発防止の仕組みとしての記録管理システム」となるべく、構築されることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201523013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は薬害資料データ・アーカイブズの基盤を構築する総合的な研究である。まず、薬害資料収集の社会的な意味を専門的・学術的に探るため、アーカイブズ学で収集戦略として論争されている民間記録物と公共記録物との関連性について検討した。その結果、薬害と関連する製薬会社・国・地方自治体などの関連資料も総合的に収集管理する必要があると提示した。また、薬害団体の現用記録物を対象に情報公開区分と非公開基準を提示したことは、レコード・マネジメントの事例として学術的にも資することができると思う
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
現用記録である薬害資料の情報区分基準のガイドラインが開発された。情報公開区分のため、公開・非公開・要審査の三つに分けて区分された。 公開はすでに公表された記録, 公表を目的に作成された記録、非公開は個人情報が含まれている記録として、公表されていない記録である。要審査は公開したら対象の人物や団体が困難に陥ることが予想される記録であるが、部分公開が可能であれば、専門家の審査を要する記録である。また、区分作業に時間がかかると予想される記録などが含まれている。
その他行政的観点からの成果
薬害に関する資料について行政的な関連は、2010年4月「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」と薬害被害者団体からの、いわゆる‘薬害研究資料館’などの設置要望があったからである。その後、厚生労働省と薬害被害者団体から、薬害関係資料の把握が必要だとの意見が出された。その実践として、厚労省科学研究費2013年度から薬害に関する資料等の調査・管理・活用等に関する研究が行われ、資料を統一的・体系的に分類・整理・保管するための手法について検討し、実践を推進してきた。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
厚生労働省での講演会(2015/8/23)    厚生労働省での発表会(2015/12/3)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201523013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 181,441円
人件費・謝金 4,113,858円
旅費 163,380円
その他 41,908円
間接経費 500,000円
合計 5,000,587円

備考

備考
銀行口座で預金利息収入(587円)が発生したため

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-