効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究

文献情報

文献番号
201523009A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学)
  • 西田 一雄(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 秋田 定伯(長崎大学病院 形成外科)
  • 瀧川 正弘(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 林 清孝(エフエム大阪音楽出版株式会社)
  • 大川 聡子(大阪府立大学 地域保健学域看護学類)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学系専攻環境社会医歯学講座政策科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 田辺善仁(所属機関名 株式会社エフエム大阪)(平成27年4月1日~27年6月30日) →林清孝(所属機関名 エフエム大阪音楽出版株式会社)(平成27年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は少子高齢化による人口動態、疾病構造の変化、臓器移植の推進などにより献血液の需要が一段と高まると予測される。他方、若者の献血離れが指摘され将来の高まる需要に見合った献血の確保は極めて重要である。我々が行った将来推計でも需要に対する供給は大きく不足すると予測された。また、昨今のHIV伝播事例を考えれば安全な献血液の確保のための方策の強化も必要である。すなわち、需要に見合った安全な献血液の確保のために有効な献血推進策の実施が今後も必要と考えられる。本研究では限られた資源で有効な普及啓発方法を明らかにする。安全な血液についてはハイリスク層の実態を把握し有効な対策を提示する。若年層の献血液の確保のための献血教育についても検討を行う。さらに海外でわが国に実状が類似した国での献血推進策を調査し、わが国の献血推進に役立てる。
研究方法
今回我々はこれまでの研究成果を踏まえ、A.効果的普及啓発方法に関する研究B.献血教育研究C.安全な献血に関する情報提供方法の研究安全対策の意義を含めた献血教育に取り組む研究D.海外の実態調査に関する研究を実施した。
結果と考察
A.効果的普及啓発方法に関する研究
研究分担1(研究分担者 田中純子)献血推進の普及啓発活動が献血実績に与える影響に関して昨年度は出生年別にみた献血本数の推移を解析、本年度は年齢や出生年を考慮した献血本数の推移につき解析を行った。研究分担2(研究分担者 西田一雄)本年度は阻害要因関連の調査・分析のため1)献血推進広報効果調査(一般の方対象)の実施2)「献血推進2014」及び「献血推進2020」への取り組みに係るアンケート調査(血液センター対象)を実施し分析を行った。研究分担3(研究分担者 秋田定伯)長崎大学医学部保健学科の学生を対象にアンケート調査を実施した。献血を敬遠するものが献血未経験者で50%以上であり献血の制度理解と積極的な参加には若年からの献血経験が必要であると示唆され、医療職を目指す学生に対しても献血に関する継続した効果的な広報活動の展開が重要であることがわかった。 
B.献血教育研究
研究分担4(研究分担者 瀧川正弘)全国学生ボランティアを対象とした研修会を実施し、より有効な献血推進を展開するためのスキル向上を図った。長年積み上げた全国学生ボランティアによる研修が互いを刺激し各地域の取り組みを参考に若年層に向けた献血推進を展開出来る環境が整いつつあることが確認できた。研究分担5(研究分担者 林清孝)献血初体験者の増加のため、高校生の音楽イベント、Ustream等での配信、番組内の血液型不足情報の放送、ガクスイメンバーからの呼びかけ、スマホのアプリ開発等を提案した。研究分担6(研究分担者 大川聡子)大学生を対象にアンケート調査を実施した。若者による若者への啓発のために大阪府藤井寺保健所薬事課・地域保健課及び大阪府赤十字血液センター南大阪事業所と連携し献血ボランティア講座を行い学生献血ボランティアを養成した。アンケート翌週にはキャンパス内の献血バスで献血を行った。
C.安全な献血に関する情報提供方法の研究
研究分担7(研究分担者 生島嗣)本年度は献血でHIV陽性が判明したMSM 2名および献血習慣のあるMSM 1名を対象に来年度に実施予定のwebアンケートのためのパイロットとしての聞き取り調査を実施した。結果、今回のインタビュー協力者の献血への動機はすべての人が社会貢献であり、検査目的はいなかった。また、ウィンドウピリオドについての知識の浸透が不十分である点、現行の献血対象の排除項目の説明がMSMには必ずしも説得力のあるものにはなっていない可能性が示唆された。
D.海外の実態調査に関する研究 
研究分担8(研究分担者 河原和夫)本研究では世界各国の血液事業の中で、国情が日本に類似している国を選択して献血推進方策や献血教育の実態を調査して、わが国の献血事業の推進に寄与するための最適解を検討した。
結論
本研究の成果については血液事業部会献血推進調査会等で報告する予定であり、厚生労働行政の施策等への活用の可能性があると考える。研究成果はその実績にも依るが、献血推進及び献血教育に関して施策への直接反映の可能性、政策形成の過程等における参考として間接的に活用される可能性もあると考える。3年間の研究で論文化も予定しており、間接的な波及効果等(民間での利活用(論文引用等)を期待できると考える。献血教育については他の政策上有意な研究への発展性などが期待できると考える。日本赤十字社の将来の血液事業の計画等への効果も大きいと考える。本研究によって将来推計で予想される需要に見合う安全な献血液供給を十分に確保できれば血液を必要とする患者に十分な医療を提供でき、結果として国民の保健、医療、福祉の向上に大きく貢献できると考える。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201523009Z