製薬企業等による薬事関連コンプライアンス違反の実態とその背景を踏まえた再発防止策の提案

文献情報

文献番号
201523008A
報告書区分
総括
研究課題名
製薬企業等による薬事関連コンプライアンス違反の実態とその背景を踏まえた再発防止策の提案
課題番号
H27-医薬A-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 理恵(日本大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究に先立ち、「医薬品の広告の在り方の見直し」に関し検討し、平成26年10月に厚生労働省に提言を行った。
提言では、医療関係者向け雑誌に掲載された広告やMRによる情報提供の実態についても把握する必要があることを指摘し、広告モニター制度が有効と思われることを提言した。情報提供を行う側の自主的な規制が重要であるが、同時に情報を受取る側が不正な広告を排除する仕組みができれば、より効果的である。そのためには、医療関係者の啓発が必要であろう。
昨今の製薬企業におけるコンプライアンス違反は、わが国を代表する企業やグローバルに展開する外資系企業で起こっている。これはコンプライアンス体制を整備しただけではコンプライアンス違反は完全には防ぎ得ないことを示している。そこで、これまでに発生した製薬企業等によるコンプライアンス違反事例について、原因を分析した上で対策を提言していく。
研究方法
製薬企業が作成するプロモーション用資材以外の手段による情報提供の実態を調査するため、医師向け雑誌に掲載されている医薬品広告を調査する。また、製薬企業がクローズドの環境下で行う情報提供活動の実態を把握するため、広告モニター制度のパイロットスタディを実施する。医療関係者が不適切な情報提供を受け入れない環境を作ることも必要であり、医療関係者に対する啓発ビデオを作成する。また、米国FDAを訪問し監視活動をどのように行っているかを調査する。コンプライアンスの在り方については、最近の事例で公表された第三者委員会の報告書等をもとに分析を行い、今後の発生を防ぐ方策を提案する
結果と考察
2014年に発行された医師向け雑誌に掲載された医薬品広告など264点について医師の薬剤選択に誤った影響を与えるものがないか調査した。その結果5広告で疑問が生じ、企業に対し見解を求めた。各社の広告の審査体制に問題があると思われるケースが見受けられた。疑問が生じた広告の中には比較試験の結果を記載すれば誤解を与える可能性を排除できたと思われるものもあった。比較試験結果の掲載に関する業界の自主規制を見直す必要があると考えられる。
広告モニター制度の実現性、実効性を検討するため、パイロットスタディを実施した。約5か月の間に20製品について22件の事例が報告された。報告された事例が収集されたのは、病院内での製品説明会が12件、MRからが7件、企業主催の学術講演会が2件であった。業界や各社の取り組みが進む中、クローズドの環境下では、不適切な情報提供が依然として行われていることが明らかとなり、広告モニター制度が有効であることが示された。将来的には、すべての医療関係者から報告を受ける制度の構築が必要であり、そのためにも、医療関係者の啓発が急がれる。
米国FDAを訪問し、医学系学会等における医薬品プロモーション活動の具体的な監視方法について情報収集を行った。FDAでは、職員が学会に出向き、企業主催のシンポジウムやセミナー、企業の展示ブースを回り、違反疑いの事例を探していたが、医薬品プロモーション監視活動の教育や啓発を行うFDAのブースを企業の隣に出展するなど、教育・啓発型の活動に切り替えている。
製薬企業によるコンプライアンス違反の最近の事例について、事件の概要、背景・原因を当該企業等により公表された第三者委員会の報告書等をもとに整理を行った。取り上げた事例は、製薬企業による事例9件と製薬企業以外の企業による事例3件である。第三者委員会等の見解では、これらのコンプライアンス違反の原因として、営業成績優先の企業の体質などが指摘されているが、今後第三者委員会等の見解も参考にしつつもコンプライアンス違反の原因をさらに考察していく
適切な情報提供のあり方については製薬協も精力的に取り組み各社でも社内体制の整備に努めている。しかし、同時に、医療関係者が不適切な情報提供を受け入れない環境を作ることも必要である。そこで、まず米国のFDAの啓発ビデオに日本語の字幕を入れることで、わが国でも活用可能な状態にした。今後、日本版の啓発ビデオを作成する。
結論
入手可能な資材については業界や各企業の努力もあり改善が見られている。クローズドの環境下で行われる情報提供の実態把握には広告モニター制度が有効と思われ、その実施上の課題等を明らかにするためにパイロットスタディを実施した。モニターからは約5か月の間に20件余りの問題事例が報告され広告モニター制度の有効性が確認された。今後、医療機関の規模や専門性、地域等を考慮してモニターを拡大するとともに薬局の薬剤師もモニターに加えていく。そして将来的には、すべての医療関係者から報告を受ける制度を構築していくことが望ましく、啓発ビデオの作成に向けて、シナリオの作成に取り組む。

公開日・更新日

公開日
2017-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201523008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 108,564円
人件費・謝金 955,933円
旅費 316,652円
その他 118,987円
間接経費 0円
合計 1,500,136円

備考

備考
利息分

公開日・更新日

公開日
2016-07-01
更新日
-