血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201523003A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究
課題番号
H26-医薬A-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 直明(帯広畜産大学 原虫病研究センター)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 血液・細胞移植部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトや物の国際間の頻繁な移動によって感染症が拡大し、これまで日本には存在しなかった病原体が国内に持ち込まれる可能性がある。国内でデング熱等が流行した場合、献血血の安全性確保のためスクリーニング法の導入が必要となる。ベクターとなる蚊に関しては行動範囲等の生態の解明が対策のための科学的基盤の一つとなる。シャーガス病は南米で流行する慢性の感染症であり、リーシュマニア症は、地中海沿岸やインド、南米に存在する。当地からの旅行者や当地での長期滞在者により日本に持ち込まれる可能性がある。バベシア症については検査法の確立を進める必要が生じている。本研究は、これらの病原体に関して、検査法開発や媒介ベクターの生態の解明によって、血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給に貢献することを目的とした。
研究方法
献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、デングウイルス、ウエストナイルウイルス等の蚊媒介性ウイルス感染症、を対象として検査・スクリーニン グ法等の開発、さらに媒介ベクターに関する研究を行った。
結果と考察
シャーガス病については、病原体であるトリパノゾーマクルージは白血球除去フィルターにより約4 Logの減少が認められた。赤血球製剤中では接種4日目から1~2 log減少し、21日目では2~4 Logの減少が認められた。低温環境下(4℃)にての培養においては増殖が認められなかった。リーシュマニア原虫については4℃、3週間保存で約2Log感染価が低下した。一方、—20℃では生存は確認できなかった。また、白血球除去フィルターを用いて除去するとアルブミン液では 5 Log、血漿では4 Logの除去が認められた。白血球除去フィルターがヒト血中に存在するリーシュマニア原虫を除去するために有効であることが示唆された。ヒトバベシア感染の検査法開発のため、イムノクロマト法および簡便で迅速な遺伝子増幅法である(LAMP)法について検討を行った。流行地のヒト血清のうち、ELISAで高いOD値を示した血清で陽性ラインが確認されが、ELISAで低いOD値を示した陽性血清では陽性ラインが認められなかった。また、ヒトサンプルを用いたLAMPはPCRとほぼ同様の陽性結果が得られた。ウエストナイルウイルスについては、輸血用血液スクリーニング用の核酸増幅検査システムに関し精度試験を行った。95%検出限界感度は23.9コピー/mLであった。また、特異性試験においても、ALT検査不適献血者検体は全て陰性で陽性又は偽陽性は確認されなかった。新たに設計したプライマーを用いることにより、日本脳炎ウイルス遺伝子I-V型に対応し、かつウエストナイルウイルスにも対応できるTaqMan系を開発した。デングウイルスの4血清型の高感度同時検出が可能な新規マルチプレックスPCR法を確立した。この検査法は、特にこれまで困難であった血液中の微量なデングウイルスの検出に有用であり、献血血液などのスクリーニングに適している。ウイルス媒介蚊については、雨水マスを単位として、アカイエカ幼虫の分布様式を調べた。アカイエカ幼虫が発生している雨水マスは調査範囲内にランダムに分布しており、また産卵期のアカイエカの行動範囲は,少なくとも450m×350mであると推測された。飛翔距離については、アカイエカは25℃では連続して0.2時間,約100 mしか飛翔しなかったが,15℃では5時間,4.5 km飛翔可能であることが示唆された。
結論
献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、および蚊媒介性ウイルスを対象として検査法等の開発、媒介蚊に関する研究を行った。シャーガス病については、全血製剤中のトリパノゾーマクルージは白血球除去フィルターにより約4 Logの減少が認められた。リーシュマニアについては白血球除去フィルターを用いて除去するとアルブミン液では 5Log、血漿では4Logの除去が認められた。ヒトバベシア感染の検査法のため、イムノクロマト法および簡便で迅速な遺伝子増幅法であるLAMP法の開発を行った。ウエストナイルウイルスの輸血用血液スクリーニング用の核酸増幅検査システムに関し、95%検出限界感度を確認した。日本脳炎ウイルス及びウエストナイルウイルス両方を検出するTaqMan PCR法を開発した。デングウイルスの4つの血清型の高感度同時検出が可能な新規マルチプレックスPCR法を確立した。ウイルス媒介蚊について、産卵期のアカイエカの行動範囲は少なくとも450m×350mであると推測された。飛翔距離については、アカイエカは15℃では5時間4.5 km飛翔可能であることが示唆された。以上の研究により、献血血の安全性確保と安定供給に貢献するための科学的基盤を進展させた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

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文献番号
201523003Z