文献情報
文献番号
201523002A
報告書区分
総括
研究課題名
地域のチーム医療における薬剤師の本質的な機能を明らかにする実証研究
課題番号
H26-医薬A-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 秀昭(明芳会イムス三芳総合病院 薬剤部)
- 富岡 佳久(東北大学大学院 薬学研究科)
- 櫻井 秀彦(北海道薬科大学 薬学部・医療マーケティング)
- 庄野 あい子(明治薬科大学 公衆衛生・疫学教室)
- 中尾 裕之(宮崎県立看護大学 看護人間学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
目的として(Ⅰ)外来患者における長期処方の薬物療法に関する介入研究、(Ⅱ)病院における薬剤師による処方変更や持参薬管理に関する専門的機能の研究、この2つの研究により薬剤師の本質的な機能を明らかにするエビデンスを得ることとした。(Ⅰ)は後ろ向きコホートの研究デザインで、薬剤師の介入度で患者アウトカムがどのような差になるかを研究する。仮説は、薬剤師の積極的な介入群は非介入群(通常介入群)に比較して患者アウトカムが有意に改善する、とした。なお、非介入群は薬剤師が従来通りに患者対応する群である。(Ⅱ)は病院での薬剤師の機能の発揮に関する観察研究で、入院患者の処方変更の実態や持参薬管理を調査し、処方変更に及ぼす職種ごとのかかわりについて解析・評価し、また持参薬管理について患者別の薬学的管理のあり方を検討し、薬剤師の本質的な役割について考察した。
研究方法
(Ⅰ)については、事後的に薬剤師が患者にどのくらい関与したかのレベルで分けて、強く関与(介入)した場合、ほとんど関与していない場合(非介入)を比較して統計学的に有意な差が生じていた、を示す研究デザインとした。デザインは、後ろ向きコホート研究とし、薬剤師の介入度(薬学的管理度)を5段階に分け、6か月後、患者に薬剤師の介入度に関する調聞票を送り、記入後に返送してもらう方法を検討した。
(Ⅱ)については、病棟薬剤業務シートを使用して研究を実施した。平成25年9月1日から平成26年2月末までに退院し病棟薬剤業務を実施した患者を対象にデータベースを構築して解析した。実施過程としては、第一にデータスクリーニングを行い、不備のあるシートを除く作業を行った。次にデータベース構築を実施した。その際には、カテゴリーの再調整が行われた。研究班内でカテゴリー化の過程で再定義を行って正確性を担保した。第三には、完成したデータベースを使用して、データ解析を行った。
(Ⅱ)については、病棟薬剤業務シートを使用して研究を実施した。平成25年9月1日から平成26年2月末までに退院し病棟薬剤業務を実施した患者を対象にデータベースを構築して解析した。実施過程としては、第一にデータスクリーニングを行い、不備のあるシートを除く作業を行った。次にデータベース構築を実施した。その際には、カテゴリーの再調整が行われた。研究班内でカテゴリー化の過程で再定義を行って正確性を担保した。第三には、完成したデータベースを使用して、データ解析を行った。
結果と考察
(Ⅰ)研究班で研究計画の立案に関する会議を5回ほど開催され、先行研究の文献精査の結果や現場の薬剤師からの意見収集など得ながら検討された。薬剤師が患者に対して積極的に介入し薬学的な管理を実施する有無で、介入群と非介入群を比較する前向き研究は、実施する上で非常に難しい、という結論になった。おそらく、多忙な診療中に研究のための事務作業を実施するのは無理であろう、と判断された。可能な限り医師の作業量を軽減する方法が検討された。また対象者の募集やどのように割り付けを実施するか、また登録した患者がどの薬局を訪問するのか、フォローをどのようにするかなど議論された。積極的に介入する薬剤師(薬局)は圧倒的に少ないと予測された。また交絡要因の排除、研究倫理の問題もあり実施が難しいとなった。そこで、研究デザインは、後ろ向きコホート研究とし、薬剤師の介入度(薬学的管理度)を5段階に分け、6か月経過した時点で患者に薬剤師の介入度に関する質問票を送り、記入後に返送してもらう方法を検討した。
(Ⅱ)チーム医療において、薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することは、薬物療法の質の向上と安全確保の観点から非常に有益であることを示した。外来から入院、入院から退院、そして退院後まで「切れ目のない薬物療法」を実践する際に、持参薬に関して幅広く、多くの情報を収集し、収集した情報に基づいた処方の解析評価による処方変更提案は、薬剤の有効性を高め重篤な副作用を回避するための薬剤師の重要な役割であることを示した。
また、観察研究を実施し、薬剤師は医師と異なり重篤な副作用の予兆(自覚症状)の確認、薬物の吸収・代謝、分布・排泄の体内動態を左右する肝機能、腎機能など入院時の検査値などの情報に基づき入院時持参薬を解析評価し、薬剤投与量の調節や薬剤の変更、中止などの処方提案(情報提供)を実施していたことを明らかにした。
(Ⅱ)チーム医療において、薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することは、薬物療法の質の向上と安全確保の観点から非常に有益であることを示した。外来から入院、入院から退院、そして退院後まで「切れ目のない薬物療法」を実践する際に、持参薬に関して幅広く、多くの情報を収集し、収集した情報に基づいた処方の解析評価による処方変更提案は、薬剤の有効性を高め重篤な副作用を回避するための薬剤師の重要な役割であることを示した。
また、観察研究を実施し、薬剤師は医師と異なり重篤な副作用の予兆(自覚症状)の確認、薬物の吸収・代謝、分布・排泄の体内動態を左右する肝機能、腎機能など入院時の検査値などの情報に基づき入院時持参薬を解析評価し、薬剤投与量の調節や薬剤の変更、中止などの処方提案(情報提供)を実施していたことを明らかにした。
結論
薬剤師が専門的な職能を発揮できる地域医療システムを構築しなければならない。そのエビデンスを確立するために、地域におけるチーム医療で薬剤師が積極的に薬学的管理の観点から介入することで患者のアウトカムが改善することを明らかにする研究計画を検討した。チーム医療において薬剤師の処方変更提案は本質的な機能であることを示唆できた。今後、テイラーメイド医療の導入など薬物治療のさらなる高度化に伴い、医療チームの一員として医師、看護師、医療スタッフとの協働を図り、薬剤師の積極的な取り組みが期待された。
公開日・更新日
公開日
2016-06-29
更新日
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