鶏肉及びその関連製品中の抗ウイルス剤の一斉分析法の開発

文献情報

文献番号
201522043A
報告書区分
総括
研究課題名
鶏肉及びその関連製品中の抗ウイルス剤の一斉分析法の開発
課題番号
H26-食品-若手-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 敬行(一般財団法人 東京顕微鏡院 理化学検査部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 1997年に香港で高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)が流行した後、日本においても、数か所の養鶏場で鳥インフルエンザが発生した。日本においては、周辺養鶏場への伝播による被害の拡大を防ぐため殺処分によって感染を局限して周囲への伝播を阻止するという対応を行っている。また、治療や感染防止対策の1つとしてワクチンを投与して免疫を獲得させ、これによって感染の予防に役立てようという対応策もある。実際に2005~6年に中国で大々的に鶏などにワクチンを投与して大きな効果を上げたといわれている。また、中国ではH5N1ウイルスに効くとされた抗ウイルス剤のアマンタジンを餌に混ぜ込み広く使用された。2012年には実際に中国産鶏肉から抗ウイルス剤であるアマンタジンとリバビリンが検出され、わが国でも社会的な問題となった。しかし、これらの薬剤はわが国において動物用医薬品として指定されておらず、その残留の有無は食品衛生上大きな問題である。
昨年度、10種類の抗ウイルス剤を対象とした「鶏肉及びその加工品中の抗ウイルス剤の多剤分析法」を作成した。本年度は、完成した分析法の実用性についての評価を行うこととした。
研究方法
 試験法作成の対象としたのは、検出事例のあるアマンタジンとリバビリンに加え、抗インフルエンザ薬として汎用されるオセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル、リマンダジン、アルビドール、アシクロビル及びイミキモドの計10種の抗ウイルス剤とした。
試験法は、鶏肉からの抗ウイルス剤の抽出には0.1vol%塩酸・メタノール混液を用い、ODSミニカラムおよび強陽イオン交換体ミニカラムを用いて精製後、LC-MS/MSを用いて定量する方法である。
 本試験法を7試験所による妥当性評価を行った。併せて、厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価も行った。
結果と考察
 作成した試験法を外部の機関を含む7試験所による妥当性評価を行ったところ、スクリーニング手法としての一定の評価を得られるものであった。さらに、厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価では真度、精度共にガイドラインの評価基準に適合した。
結論
 作成した「鶏肉中から抗ウイルス剤を定量する一斉分析法」の開発を行った。
外部機関を含む7試験所による妥当性評価において、スクリーニング手法としての一定の評価を得られるものであった。また、厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価では真度、精度共にガイドラインの評価基準に適合した。そこで、一斉分析法としては、アマンタジン,リマンタジン,オセルタミビル,イミキモド,ペラミビル及びラニナミビルの6剤の同時分析法として、他のザナミビル、アシクロビル、アルビドール及びリバビリンを含む10種のスクリーニング試験法として、採用できると考えられた。
今後、抗ウイルス剤の分析の必要性等について再検討し、最終的には6~8剤の同時分析法としたい。

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-02-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201522043B
報告書区分
総合
研究課題名
鶏肉及びその関連製品中の抗ウイルス剤の一斉分析法の開発
課題番号
H26-食品-若手-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 敬行(一般財団法人 東京顕微鏡院 理化学検査部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1997年に香港で高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)が流行した後、日本においても、数か所の養鶏場で鳥インフルエンザが発生した。日本においては、周辺養鶏場への伝播による被害の拡大を防ぐため殺処分によって感染を局限して周囲への伝播を阻止するという対応を行っている。また、治療や感染防止対策の1つとしてワクチンを投与して免疫を獲得させ、これによって感染の予防に役立てようという対応策もある。実際に2005~6年に中国で大々的に鶏などにワクチンを投与して大きな効果を上げたといわれている。また、中国ではH5N1ウイルスに効くとされた抗ウイルス剤のアマンタジンを餌に混ぜ込み広く使用された。2012年には実際に中国産鶏肉から抗ウイルス剤であるアマンタジンとリバビリンが検出され、わが国でも社会的な問題となった。しかし、これらの薬剤はわが国において動物用医薬品として指定されておらず、その残留の有無は食品衛生上大きな問題である。
そこで、本研究では、まず鶏肉及びその加工品中の抗ウイルス剤の多剤分析法について検討することとし、次いで完成した分析法の実用性についての評価を行うこととした。
研究方法
対象としたのは、検出事例のあるアマンタジンとリバビリンに加え、抗インフルエンザ薬として汎用されるオセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル、リマンダジン、アルビドール、アシクロビル及びイミキモドの計10種の抗ウイルス剤を分析対象とした。
鶏肉および肝臓中からの抗ウイルス剤の抽出には0.1vol%塩酸・メタノール混液を用い、ODSミニカラムおよび強陽イオン交換体ミニカラムを用いて精製後、LC-MS/MSを用いて定量する方法を作成した。
 本試験法を関を含む7試験所による妥当性評価を行った。併せて、厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価も行った。
結果と考察
10種の抗ウイルス剤を0.1vol%塩酸・メタノール混液を用い抽出を行い、ODSミニカラムおよび強陽イオン交換体ミニカラムを用いて精製後、LC-MS/MSを用いて定量する方法とした。LC-MS/MSでの定量は、ESIポジティブモードにより行った。LCカラムには親水性相互作用を有するHILICカラムを用いることにより10種類の抗ウイルス剤を分離測定することことができた。また、作成した試験法を外部機関を含む7試験所による妥当性評価を行ったところ、スクリーニング手法としての一定の評価を得られるものであった。さらに、厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価では真度、精度共にガイドラインの評価基準に適合した。
結論
鶏肉中から抗ウイルス剤を定量する一斉分析法の開発を行った。
対象としたのは、検出事例のあるアマンタジンとリバビリンに加え、抗インフルエンザ薬として汎用されるオセルタミビル、ザナミビル、近年、開発されたペラミビル、ラニナミビル、諸外国で使用実績のあるリマンダジンとアルビドール、さらに、その他の抗ウイルス剤として、ヘルペスウイルスに対するアシクロビル、尖圭コンジローマに対するイミキモドを加え、計10種の抗ウイルス剤を分析対象とした。
2.鶏肉および肝臓中からの抗ウイルス剤の抽出には0.1vol%塩酸・メタノール混液を用い、ODSミニカラムおよび強陽イオン交換体ミニカラムを用いて精製後、LC-MS/MSを用いて定量する方法を作成した。
3.LC-MS/MSでの定量は、ESIポジティブモードにより行った。LCカラムには親水性相互作用を有するHILICカラムを用いることにより10種類の抗ウイルス剤を分離測定することことができた。
4.筋肉および肝臓に0.1 mg/kg相当の10種の抗ウイルス剤を添加し、添加回収試を実施した結果、マトリックス検量線を用いた、筋肉では回収率96.2~111.3%、標準偏差11.3%以下、肝臓では回収率100.1~109.2%、標準偏差7.9%以下と良好な結果がえられた。
なお、本法の定量下限値は0.01 mg/kgであった。
5.外部機関を含む7試験所による妥当性評価において、スクリーニング手法としての一定の評価を得られるものであった。
6. 厚生労働省の妥当性ガイドラインに従った妥当性評価では真度、精度共にガイドラインの評価基準に適合した。
7.一斉分析法としては、アマンタジン,リマンタジン,オセルタミビル,イミキモド,ペラミビル及びラニナミビルの6剤の同時分析法として、他のザナミビル、アシクロビル、アルビドール及びリバビリンを含む10種のスクリーニング試験法として、採用できると考えられた。
8.今後、抗ウイルス剤の分析の必要性等について再検討し、最終的には6~8剤の同時分析法としたい。

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201522043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本法は10種の抗ウイルス剤のスクリーニング法としては十分な感度を有しており、定性法として有用であると考える。
スクリ―ニングによって検出された場合に備え、個々の抗ウイルス剤に最適な個別分析法を開発するか、今回取り上げた抗ウイルス剤の種類を整理し、化学的性質等の近い物質を組み合わせた同時定量法の開発が必要であると思われ、継続して同時定量法について検討している。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本研究は厚生労働省で動物用医薬品として指定されていない多種類の抗ウイルス剤の一斉分析
法の作成に関するものであり、厚生労働行政の中で食品衛生法違反となる事例を検証する手法
の開発である。特に中国等からの輸入の多い鶏肉については、先のアマンダジンとリバビリンの検出事例からも明らかなように、行政監視の対象となると思われ、検疫所のモニタリング検査等に新たな監視項目を提供するものである。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第108回学術講演会(日本食品衛生学会)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-10
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201522043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,250,000円
(2)補助金確定額
2,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,561,722円
人件費・謝金 215,190円
旅費 98,240円
その他 511,310円
間接経費 0円
合計 2,386,462円

備考

備考
その他において、外部機関での試験法評価の委託費を400,000円と見積もっていたが参加していただける機関が増えたことにより、委託費が増加した。また、合わせて評価試験に使用するためのカラム等の消耗品も増加したため。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-