食品由来薬剤耐性菌の発生動向及び衛生対策に関する研究

文献情報

文献番号
201522030A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来薬剤耐性菌の発生動向及び衛生対策に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 川西 路子(農水省動物医薬品検査所)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター)
  • 倉園 貴至(埼玉県衛生研究所)
  • 浅井 鉄夫(岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
  • 富田 治芳(群馬大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家畜を対象に行われているJVARM とヒトにおけるJANISのデータを協調的および総合的に解析できるようにする。JVARM-JANISの相互変換の構築とその効果の評価を行うこと、及び食品由来細菌の耐性状況のデータを組織的に収集し、動物―ヒトのデータに繋ぐ体制の構築を行うことを目的とする。JVARM-JANISにおいては、食品由来細菌やヒトからの食中毒関連細菌の薬剤耐性のデータが収集できていないので、その分野の検査を行っている地方衛生研究所(地研)の集まりである全国地方衛生研究所協議会を班員に加え、協力体制を組むことにした。国内で分離された臨床、食品および家畜由来耐性菌の比較解析を行い、その関連性を解明することにより、耐性菌のグローバルな循環を明らかにし、リスク評価および行政対策に供することができる。これらのデータの作成とその維持管理を行える体制を構築することにより、WHOが求める”One Health”におけるintegrated surveillanceが構築でき国際的なネットワークへの対応が可能となる。
研究方法
(1)JANIS 集計用プログラムを一部改変し、JVARMの大腸菌のアンチバイオグラムを 作成する。JANIS と JVARM での測定薬剤の相関の確認を各薬剤のMIC について、相関係数(スピアマン)、感度及び特異度を計算し、相関性について検討する。
(2)ヒト、食品、家畜から分離される腸内細菌に関して薬剤耐性状況を調査するとともに、分離菌について分子生物学的手法等を用いて比較解析し、耐性菌あるいは耐性遺伝子の伝播経路を解明する。
(3)国内で市販される国産鶏肉及び輸入鶏肉を供試検体とし、ESBL産生大腸菌,VREを分離する。
(4)薬剤耐性菌検査を実施している地研を対象に、感染症法等で規定される薬剤耐性菌株、及び食中毒・感染性胃腸炎起因菌株(薬剤耐性菌株を含む)の保有・保管数について調査する。
結果と考察
(1)JANIS と JVARM での測定薬剤の相関の確認:CTXとCTF の MIC との相関係数、感度、特異度はそれぞれ 0.764、0.98、1.00.であった。また、LVFX の MIC に対する、ERFX 及び CPFX の相関係数、感度、特異度はそれぞれ 0.763、1、0.899 及び 0.929、1、0.980 であった。相互比較が可能であった。
(2)JVARMとJANISのデータの相互比較が可能となり以下のことが判明した;JVARMのデータでは国内のブロイラーから分離される大腸菌やサルモネラにおいて、第3世代セファロスポリン耐性が2004年ごろから顕著に増加していたが、2010年頃から農場の鶏糞からのESBL/AmpC産生大腸菌の検出が急減した。その理由として、国内においても生産者団体が養鶏にセフチオフルを使用することを自主的に禁止した結果、選択圧が低下したためであると考えられた。一方、JANISのデータからは、ヒトの大腸菌の第3世代セファロスポリン耐性は依然として増加傾向であり、家畜とヒトの間での乖離がみられた。市販鶏肉の調査においては、第3世代セファロスポリン耐性菌は依然として分離された。
(3)地研における薬剤耐性菌検査の実施状況:アンケート回答75地研のうち、何らかの薬剤耐性菌検査を実施していると回答した地研は59(78.7%)で、8割近い地研が同検査を実施していることが判明した。3年間の検査総数において、食品由来菌の陽性(耐性)率(68.0%)がヒト由来菌の陽性率(43.6%)よりも高い傾向が認められた。
結論
JVARM と JANIS で測定薬剤の異なるフルオ ロキノロン系抗菌剤及び第 3 世代セファロスポリンについて、いずれの薬剤においても高い相関が認められたことから、JVARMとJANISで得られてデータの相互比較が可能となった。
地研におけるヒト及び食品由来菌の薬剤耐性検査の実態調査を行い、全国におけるこれらの菌株を対象とする薬剤耐性検査の実施地研数、耐性検査件数、耐性菌株の保有・保管数、耐性検査の実施形態が初めて明らかにされ、地研において食品由来菌の薬剤耐性検査が相当な規模で実施されていることが判明した。これらのデータは、環境―動物―食品―ヒトを包括するワンヘルス・アプローチにおいて重要であり、JANIS、JVARMと合わせデータを協調させるシステムの開発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201522030Z