バイオテクノロジーを用いて得られた食品のリスク管理及び国民受容に関する研究

文献情報

文献番号
201522026A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテクノロジーを用いて得られた食品のリスク管理及び国民受容に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 手島  玲子(徳島文理大学 香川薬学部)
  • 今村  知明(奈良県立医科大学)
  • 小関  良宏(東京農工大学大学院 工学研究院生命機能科学部門)
  • 太田  大策(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科)
  • 堀内 浩幸(広島大学大学院 生物圏科学研究科)
  • 近藤  一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多様な機能を有する遺伝子組換え(GM)食品が実用化に向けて開発され、バイオテクノロジー技術も多様化していることから、それらの安全性評価並びに規制のあり方、検知法、さらにはリスクコミュニケーションのあり方などについて検討する。多様化・複雑化するバイオテクノロジー応用食品の安全性評価に対応するためのオミクス手法の整備、定量解析手法並びに規格への反映化をめざすこと、消費者に受容されにくい状況が続いているGM食品の本質的原因の究明並びに社会的受容の促進を大きな柱とし研究を行う。加えて未承認GM食品の検知技術の開発及びスタック品種の検知法について検討を行う。
研究方法
オミクス解析などによる安全性評価に関する実証的データの蓄積・整備では、バイオテクノロジー技術を用いて開発されたGM微生物食品、GM動物等に関して、それらの安全性評価への網羅的技術(トランスクリプトーム、プロテオーム及びメタボローム)による解析結果を総合することで、モデルGMを対象として安全性評価法の検討を行った。さらに新開発食品の安全性評価で現在最も重要となっているアレルゲン性に関するデータベース化、多様化するバイオテクノロジー技術並びに多様化するGM食品の機能に関する情報収集を行った。リスクコミュニケーション関連では、消費者に受容されにくい状況が続いているバイオテクノロジー応用食品の本質的原因の究明並びに社会的受容の促進を試みた。GM食品が受容されない本質的原因の究明に取り組むとともに、動植物の育種や品種改良の現場における技術として、重要性が増す一方であるGM及びNBT技術について、国民の正しい理解と判断を手助けするために必要なコミュニケーションツールおよび手法の開発に取り組んだ。
結果と考察
モデルGM動物の作出として、第一世代生殖細胞キメラニワトリでは,ランダムインテグレーション法により,GFP やその他の遺伝子を導入したGM候補ニワトリを確保した。これらを用いて遺伝子発現の違いをマイクロアレイ解析により調査した。
モデルGM乳酸菌のトランスクリプトーム解析により、GM乳酸菌で細胞膜関連の酵素活性が上昇していることが示された。トランスクリプトーム解析は、手技が簡単でありGMと非GMを比較し、プロテオームやメタボローム解析などの必要性を評価するスクリーニング法として有用と思われた。プロテオーム解析では、モデルGM乳酸菌株並びに挿入抗原結合乳酸菌株(非組換え抗原結合株)の2D-DIGEで、両者のタンパク質の発現の網羅的比較解析を行い、約2400のスポットのうち、3倍以上の発現の差異のあるスポットが20 個確認された。
多様な遺伝子組換え作物を検出するための検査手法開発では、近年、導入遺伝子やその発現制御因子であるプロモーター/ターミネーターの種類が多様化しており、多様な未承認遺伝子組換え食品の監視に実用が可能と思われる手法の検討を行った。
3種のアレルゲンタンパク質のlinear epitope、及び2種のアレルゲンタンパク質のconformational epitopeの新規情報を得、これらの情報をアレルゲンデータベース(ADFS)に追加する作業を実施した。
消費者の年代別の生物の基礎的知識やリテラシーの違いを把握し、年代別のコミュニケーション手法を検討した。生物の基礎的知識やリテラシーと、GM食品に対するリスク認知や需要判断との関係性を明らかにし、円滑なリスクコミュニケーションに必要な要因を抽出した。日米のGMサーモンに対する報道状況を整理し、消費者の反応の実態を比較検討した。
結論
本研究班の各種オミクス技術の解析結果を総合することで、多様化するバイオテクノロジー技術を用いて開発された遺伝子組換え作物やGM微生物食品のリスク管理に通じる知見を提供し、アレルゲン低減化ニワトリの検討では今後の動物等のGMの安全性評価基準策定に重要な基礎的知見を提供した。リスクコミュニケーションの研究では、作用機序の分かっていないGM食品が社会に受容されない本質的な原因を究明することにより、その社会的受容の拡大に資する、効果的な情報提供の指針を得ること、国民のGM食品に対するリスク認知と受容性のねじれを解消し、正しい理解と判断を促進するために効果的な情報提供の在り方を得ることができる。科学的リスクと消費者のリスク認知のかい離が大きい他の事象(ワクチンの副作用等)に対しても、応用可能なリスクコミュニケーション手法を確立することができ、厚労省のGM食品のQ&Aやパンフレットへの活用を予定している。未承認GMの検知技術の開発により、GM食品の合法的な流通を検証し、違法な流通を監視するためのシステムの構築が期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201522026Z