文献情報
文献番号
201522023A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍性病変をエンドポイントとするオルガノイド系を用いる食品添加物等の遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発
課題番号
H27-食品-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
研究分担者(所属機関)
- 筆宝 義隆(千葉県がんセンター 研究所 発がん制御研究部)
- 戸塚 ゆ加里(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 発がん・予防研究分野)
- 落合 雅子(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
我々はこれまでに、マウス正常器官・組織を用いて、主に小腸や大腸、肺などのオルガノイド調製法の検討を行ってきた。本研究では、野生型マウス、がん関連遺伝子改変マウス、レポーター遺伝子導入マウス等から調製したオルガノイド系あるいはそれらにshRNAを用いて発がん関連遺伝子の発現変化を加えたオルガノイド系につき、食品添加物等の遺伝毒性試験法としての適用性と腫瘍性病変をエンドポイントとする発がん性試験法としての妥当性を検証し、遺伝毒性・発がん性短期包括的試験法の開発を目的としている。
研究方法
大腸のオルガノイドに対しレンチウイルスを用いて種々のがん関連遺伝子発現の変化させることによる発がんへの影響を解析するとともに、大腸については2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine（PhIP）、肺については4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone（NNK）の発がん性を検討した。遺伝毒性については、gpt deltaマウス由来の肝臓及び膀胱のオルガノイドについて、背景データとしてのspontaneousな変異頻度について解析した。また、オルガノイドを用いる試験法については調製条件の違いにより施設間で得られる試験結果のばらつきを生じさせない対策が必要であり、結果に重大な影響を及ぼす培養条件を明らかにするため、異なる条件下で調製したオルガノイドについて基盤的なデータの蓄積を開始した。今年度は、オルガノイドの調製に用いるマウスの週齢差による発現遺伝子の違いを解析した。
結果と考察
PhIPについては発がん性が確認され、NNKについては検証を継続している。また、gpt deltaマウスの肝臓由来のオルガノイドにおける変異頻度は、肝臓組織から直接ゲノムDNAを抽出した場合の変異頻度と同程度であることを確認した。一方、膀胱由来の細胞は肝臓と同じ培養条件では殆ど増殖せず、引続きの条件検討を要する。更に、4、5及び6週齢のC57BL/6J雄マウスの肝臓（胆管）由来のオルガノイドとgpt delta雄マウスの肺由来のオルガノイドについて発現遺伝子を比較した結果、前者では化学物質代謝に関連するCypファミリーやUDPGTファミリー関連遺伝子のほか、発がん進展に関連するとの報告があるtrefoil factor 2の発現において、後者では化学物質代謝に関連するN-acethyltransferase 1などの発現に週齢差がみられた。
結論
各種マウスから調製したオルガノイド系あるいはそれらにshRNAを用いて発がん関連遺伝子の発現変化を加えたオルガノイド系につき、遺伝毒性試験法としての適用性と腫瘍性病変をエンドポイントとする発がん性試験法としての妥当性の検証を継続する。また、オルガノイド系を遺伝毒性試験法・発がん性試験法に応用する際には、マウスからの組織採取時期に注意を要することが示された。
公開日・更新日
公開日
2016-07-06
更新日
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