検査機関の信頼性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201522021A
報告書区分
総括
研究課題名
検査機関の信頼性確保に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 食品衛生事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性確保のために精度管理体制の整備や適正な精度管理用調査試料の開発とこれに付随した精度管理を実施し、食品衛生検査機関における検査成績の信頼性の確保に貢献することを目的とした。
研究方法
外部精度管理調査用適正調査試料の作製において、理化学検査では、コメを基材とした規格基準が設定された農薬の長期安定性を検討し、微生物学検査では、定性検査として腸炎ビブリオは低温輸送における接種菌への影響を、定量検査としてセレウス菌(米飯)の長期安定性を検討した。アレルギー物質検査については、還元剤の変更された新ELISAキットを用いてコムギの反応性について確認した。また、カビ毒検査では、特異性の高い総アフラトキシン簡易測定法としての直性競合ELISAの開発を行った。残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、協力機関の連携の下、GCMS測定における食品成分によるマトリックスの影響とその制御法について検討した。食品に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、固相を反応媒体として用いる固相蛍光誘導体化法を検討した。同位体希釈質量分析法(IDMS)による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、残留農薬のQuEChERS法にIDMSを適用し、一斉分析法と比較した。
結果と考察
食品衛生外部精度管理調査用適正試料の作製と信頼性確保に関する研究のうち、理化学検査では枝豆ペーストについては、水分と油添加で凍結融解(3回)安定性及び冷蔵(14日)安定性が確認され、水分5%添加が最も良好であった。コメ類については、長期冷蔵保存(270日)の安定性及び冷凍保存(34日)における安定性が終了した。現時点では、いずれの農薬においても冷蔵より冷凍の方がより良好な安定性が、また、精米より玄米の方が長期の冷蔵保存安定性において良好な結果が得られている。微生物学検査では、セレウス菌(米飯)の大量作製の前段階として、冷蔵での芽胞液として1年間の長期安定性及び輸送安定性も確認された。また、寒天基材を用いた時の生菌数のばらつきを解消するために用いたゼラチン基材は冷蔵で約7ヶ月の保存安定性が確認でき、基材として有用であることがわかった。残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、多種類混合標準液を使用すると、標準溶液に含まれる農薬自体がマトリックス効果を生じることを確認した。具体的には、測定対象の3農薬だけを含む標準液と3農薬に同濃度の166農薬を含む標準溶液を比較すると、多種類混合標準液で測定対象3農薬のピーク応答が明らかに強く、高極性農薬ピーク形状の改善も含めてマトリックス効果の発生を確認した。多種類混合標準液から作成した検量線を用いて定量すると定量値が約10~25%程度小さくなり、各機関独自の試験液調製法を用いた協力機関の研究結果においても同様の傾向が確認された。このピーク応答の差は、特に試験液を希釈し食品由来のマトリックス効果が減衰した際に顕在化した。この場合、希釈した試験液に補助マトリックスを添加することによりマトリックス効果の制御に一定の効果が認められた。食品中に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、2濃度(高濃度、低濃度)の外部精度管理用試料(香辛料)を作製し、8検査機関にて試験を実施中である。また、基準値が設定された乳中のアフラトキシンM1について固相蛍光誘導体化法を適用し、新たな試験法を構築した。同位体希釈質量分析法による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、IDMS2法によって、平成27年度食品衛生外部精度管理調査試料中のクロルピリホスとマラチオンを分析したところ同法による結果はよく一致しており、さらに、試料調製時の農薬調製濃度とも一致しており、試料の調製濃度とIDMSの正確さが互いに担保された。一方、QuEChERS法の評価においては、検討した3農薬(マラチオン、エトフェンプロックス、チアメトキサム)の分析値は、一斉試験法による分析値と一致していた。これよりQuEChERS法はホモジナイズ等を行わない簡易な抽出法であるにもかかわらず、一斉試験法と同等の抽出能力を有することが示された。
結論
多種類混合標準液を使用すると、標準溶液に含まれる農薬自体がマトリックス効果生じることを確認した。また、残留農薬のQuEChERS法にIDMSを適用し、一斉分析法と分析値がよく一致していることが確認された。さらに、理化学と微生物の検査における適正な外部精度管理調査試料の開発を進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201522021Z