広域・複雑化する食中毒に対応する調査手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201522020A
報告書区分
総括
研究課題名
広域・複雑化する食中毒に対応する調査手法の開発に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 猿木 信裕(群馬県衛生環境研究所)
  • 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 齊藤 剛仁(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 高橋 琢理(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 山口 亮(北海道釧路保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)広域食中毒疫学調査ガイドライン(ガイドライン)への現場での活用に関する検討,2)腸管出血性大腸菌(EHEC)O157感染症の散発事例における人口寄与危険率算出(PAR%)の試み,3)EHEC,細菌性赤痢,腸チフス,A型肝炎の広域散発例の検討,4)感染症発生動向調査登録の食品媒介感染症の把握と解析に関する研究,5)地域レベルにおける広域食中毒対策方法の導入と改善策の研究,6)食品由来感染症の下痢症疾患の被害実態推定,7)広域食中毒事例調査における保健所間の連携に関する研究,8)自治体におけるEHEC感染症の散発例のリスク推定の試行,9)地域レベルにおける広域食中毒対策方法の導入と改善策の研究,10)ウイルスを主とした広域事例調査手法検討,11)クドア様症状を示す原因不明食中毒の危害物質探査
研究方法
1)ガイドラインへの最新知見導入と現場での活用方法整理に関する研究,2)O157感染症の散発事例におけるPAR%の算出の試み,3)O157の広域散発例の検討,4)細菌性赤痢,腸チフス,A型肝炎の国内感染例散発例の調査方法の検討,5)NESID登録の食品媒介感染症の把握と解析に関する研究,6)EHEC感染症で溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した患者を対象とする追跡研究,7)宮城県および全国における積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握,8)広域食中毒事例調査における保健所間の連携に関する研究,9)自治体におけるEHEC感染症散発事例のリスク推定の試行,10)地域レベルにおける広域食中毒対策方法の導入と改善策の研究1-EHEC感染症の早期探知システム,2-流通食材における食中毒原因菌の汚染状況調査,3-感染症・食中毒業務担当者を対照とした疫学研修とその効果,11)ウイルスを主とした広域事例調査手法の検討,12)クドア食中毒様の症状を示す原因不明食中毒に関する研究
結果と考察
1)ガイドラインの基本方針は支持され,食中毒調査の基礎的事項の講義を作成出来た.2)PAR%の算出より,牛ホルモンの対策が重要.3)キムチ,牛ホルモンの喫食がO157VT2の発症と有意に関連.症例対照研究からO157による発症と有意に関連.さかのぼり調査から牛ホルモンが原因の可能性.4)細菌性赤痢の共通感染源の仮説設定には至らなかった.5)コレラは海外渡航歴のある者のみ.細菌性赤痢は国内で集団発生.EHECは主な感染経路が肉類と推定.パラチフスは海外渡航例が殆ど.E型肝炎の感染経路は飲食物.A型肝炎は国内感染が多数.6)NESIDからEHECによるHUSの発生報告は0-4歳が最多.7)人口10万対下痢症の食品由来患者数推定食品由来患者数はCampylobacter 4,642人,Salmonella 897人,Vivrio parahaemolyticus 47人.8)行政の迅速な公表等は報道の重要な役目.9)EHEC O157の発症は同居家族の血便,EHEC患者,公衆浴場,国内旅行,喫食が有意に関連.10)1-早期探知システムの構築に問題はなかった.2-鶏肉類からカンピロバクター,リステリア,サルモネラ04群,もやしからセレウス菌が検出.3-疫学研修の質問票調査から研修の効果があった.11)ノロウイルスの遺伝子型別に限り株間の相同性が検証出来ない.12)粘液胞子虫を検索し,U.seriolaeが検出された.K.septempunctataをマウスの腹腔内に投与したが,アレルギー反応は現れなかった.
結論
1)ガイドラインについては我が国における食中毒への対応を底上げの改訂ができた.今後,現場での活用と周知,更なる改訂を予定.2)牛ホルモンの喫食に関する予防行動の知識や啓発等の整備が必要.3)分子サブタイピングを用いた症例対照研究は我が国でも利用可能.4)調査票の検討や調査方法を広めることが課題.5)パラチフスは今後も増加する可能性.その他は感染源の推定が難しい.6)追跡調査は30歳未満を対象とすることが現実的.7)我が国は生食が多く,食品由来感染症の発生割合が米国よりも高い可能性を考慮する必要がある.8)広域連携や感染拡大防止策を進める会議を目指すことが重要.9)症例対照研究のアウトブレイク発生時における対策への応用,さかのぼり調査の実施が課題.本研究は長期的な食中毒対策に利用できる.10)1-EHEC感染症の早期の探知により早期治療や二次感染の防止が迅速に可能.2-菌が検出された食材は加熱調理食材だが,二次汚染を引き起こす可能性.3-疫学調査向上のための研修会のニーズがある.11)解析ソフトの自動化により負担が軽減.12)鯛類のクドア族粘液胞子虫汚染の可能性は低い.K.septempunctataは強いアレルギー反応は現れず,IgE抗体産生誘導能を確認.

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201522020Z