文献情報
文献番号
201522019A
報告書区分
総括
研究課題名
非定型BSE(牛海綿状脳症)に対する安全対策等に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 岩丸 祥史(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
- 柴田 宏昭(国立開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
- 飛梅 実(国立感染症研究所 細胞化学部 )
- 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部)
- 長谷部 理絵(北海道大学 大学院獣医学研究科)
- 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場)
- 室井 喜景(帯広畜産大学 畜産学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
英国で発生して世界各地に広がったBSE(定型BSE [C-BSE])は、ヒトに感染して変異CJDを起こすことから大きな社会問題となったが、現在その発生は制御下にある。しかし、能動サーベイランスの結果、定型BSEとは性質が異なるBSE(非定型BSE)が、主に高齢牛で発見され、ヒトへの感染リスクや定型BSEの原因となる可能性が指摘されている。非定型BSEは、実験的に牛やヒトPrP遺伝子発現マウスに伝達することから、感染拡大リスクを考慮した管理措置が必要である。本研究では、これまでに培った技術・知見を活用して、サル、ウシおよび各種モデル動物を用いる感染実験、in vitroの実験を含む多角的な試験を実施して、1) 非定型BSE感染動物における感染病態機序、2) 非定型BSEのヒトへの感染リスクの推定、3) 潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定および非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定、に係る研究を進め、非定型BSEに関して、食品を介した感染拡大を防ぐための安全対策等に貢献することを目的とする。
研究方法
1)非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明に資する研究
・L-BSEおよびH-BSE脳内接種牛におけるPrPScの脳内出現部位を経時的に解析して、PrPScが検出される時期を調べた。
・L-およびH-BSE感染牛の可食部位のプリオン感染価をバイオアッセイにより調べた。
・L-BSE接種ハムスターにおけるPrPScの伝播、蓄積を解析した。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・L-BSE経口接種カニクイザルの臨床経過の観察、運動機能試験を継続した。また、採材可能な体液(唾液、尿、脳脊髄液)からPMCA法を用いてPrPScの検出を行った。
・H-BSEのヒトへの感染リスクの推定のために、カニクイザルの経口接種試験と脳内接種試験を開始した。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・潜在的な非定型BSEの調査には、高濃度の組織乳剤存在下でも反応が阻害されないRT-QuIC法が必要であるため、組換えPrPおよび反応条件の組み合わせで、それを達成できる条件を検討した。
・L-BSEおよびH-BSE脳内接種牛におけるPrPScの脳内出現部位を経時的に解析して、PrPScが検出される時期を調べた。
・L-およびH-BSE感染牛の可食部位のプリオン感染価をバイオアッセイにより調べた。
・L-BSE接種ハムスターにおけるPrPScの伝播、蓄積を解析した。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・L-BSE経口接種カニクイザルの臨床経過の観察、運動機能試験を継続した。また、採材可能な体液(唾液、尿、脳脊髄液)からPMCA法を用いてPrPScの検出を行った。
・H-BSEのヒトへの感染リスクの推定のために、カニクイザルの経口接種試験と脳内接種試験を開始した。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・潜在的な非定型BSEの調査には、高濃度の組織乳剤存在下でも反応が阻害されないRT-QuIC法が必要であるため、組換えPrPおよび反応条件の組み合わせで、それを達成できる条件を検討した。
結果と考察
1)非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明
・L-BSEを脳内接種した牛で最初にPrPScが検出された時期は4.7ヶ月あった。本実験系では接種後11ヶ月頃から臨床症状が認められるので、その6ヶ月前頃にはPrPScが検出されることが確認できた。
・L-BSE感染ウシの筋肉における感染価測定のため、TgBovPrPへの感染実験を開始した。接種後200日を経過したが、これまで伝達は認められていない。
・L-BSE接種ハムスターでは末梢組織でPrPScの蓄積が認められず、中枢神経系組織で血管周囲や脳室周囲器官でPrPScの蓄積が認められることから、L-BSE病原体は、血管周囲器官依存性あるいは血行性に中枢神経系組織内で蓄積部位が拡大することが示唆された。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定
・L-BSEを経口接種したカニクイザルは、接種後3年を経過した時点で明らかな臨床症状を呈していないが、1頭のサルの唾液から、PMCA法によりPrPScが検出された。L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示唆する結果と考えられる。
・H-BSEのヒトへの感染リスクを推定するために、平成27年度新たに、カニクイザルにH-BSEを経口接種し、経過観察を継続している。
・ヒトPrP過発現マウス (TgHuPrP) を新たに作製し、L-, C-, H-BSEを脳内接種した。L-BSEはTgHuPrPを高発現するTgマウスにはattack rate 100%で伝達した。一方、H-BSEは伝達しなかった。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・組換えシカPrP (rCerPrP) を基質に用いることで、潜在的なL-BSEの存在を調査可能なレベルの感度を有し、かつ高濃度の組織乳剤存在下でも反応が阻害されないRT-QuIC法が確立できた。
・L-BSEを脳内接種した牛で最初にPrPScが検出された時期は4.7ヶ月あった。本実験系では接種後11ヶ月頃から臨床症状が認められるので、その6ヶ月前頃にはPrPScが検出されることが確認できた。
・L-BSE感染ウシの筋肉における感染価測定のため、TgBovPrPへの感染実験を開始した。接種後200日を経過したが、これまで伝達は認められていない。
・L-BSE接種ハムスターでは末梢組織でPrPScの蓄積が認められず、中枢神経系組織で血管周囲や脳室周囲器官でPrPScの蓄積が認められることから、L-BSE病原体は、血管周囲器官依存性あるいは血行性に中枢神経系組織内で蓄積部位が拡大することが示唆された。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定
・L-BSEを経口接種したカニクイザルは、接種後3年を経過した時点で明らかな臨床症状を呈していないが、1頭のサルの唾液から、PMCA法によりPrPScが検出された。L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示唆する結果と考えられる。
・H-BSEのヒトへの感染リスクを推定するために、平成27年度新たに、カニクイザルにH-BSEを経口接種し、経過観察を継続している。
・ヒトPrP過発現マウス (TgHuPrP) を新たに作製し、L-, C-, H-BSEを脳内接種した。L-BSEはTgHuPrPを高発現するTgマウスにはattack rate 100%で伝達した。一方、H-BSEは伝達しなかった。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・組換えシカPrP (rCerPrP) を基質に用いることで、潜在的なL-BSEの存在を調査可能なレベルの感度を有し、かつ高濃度の組織乳剤存在下でも反応が阻害されないRT-QuIC法が確立できた。
結論
・L-BSE感染牛では臨床症状が確認される約6ヶ月前頃からPrPScが検出されることが明らかとなった。
・L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示唆が示唆された。
・TgHuPrPマウスへの伝達試験の結果から、ヒトに感受性の高いと思われる順は、L-BSE>C-BSE>H-BSEと推測された。
・rCerPrPを用いることで、高濃度の組織乳存在下でも実用レベルの感度でL-BSEを検出用可能なRT-QuIC法を確立した。
・L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示唆が示唆された。
・TgHuPrPマウスへの伝達試験の結果から、ヒトに感受性の高いと思われる順は、L-BSE>C-BSE>H-BSEと推測された。
・rCerPrPを用いることで、高濃度の組織乳存在下でも実用レベルの感度でL-BSEを検出用可能なRT-QuIC法を確立した。
公開日・更新日
公開日
2016-07-08
更新日
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