文献情報
文献番号
201522015A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所の連携による食品由来病原微生物の網羅的ゲノム解析を基盤とする新たな食品の安全確保対策に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-016
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
調 恒明(山口県環境保健センター)
研究分担者(所属機関)
- 猿木信裕(群馬県衛生環境研究所)
- 佐多徹太郎(富山件衛生研究所)
- 四宮博人(愛媛県立衛生環境研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,943,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
米国における食中毒による社会的損失は年間1.55 兆円に上ると米国農務省により試算されている。我が国においても、食中毒患者数は発表されている実数よりも遙かに多く、食中毒による社会的損失は多大なものがあると考えられる。本研究班では、食中毒患者由来細菌株と食品由来細菌株のゲノムを、次世代シークエンサー(NGS)を用いて解析する事により、食中毒菌と食品との関連を明らかにすること、また広域的食中毒事例の新たな早期探知手法の開発のための基礎的データを得ることを目的として研究を行った。
研究方法
食品、患者、動物由来のサルモネラ属菌分離株及びカンピロバクター属菌分離株についてゲノム解析を行い、SNPsを抽出し系統樹解析によりゲノム配列を比較した。
結果と考察
サルモネラ属菌及びカンピロバクター属菌のSNPs解析では菌株の遺伝的同一性をPFGEよりも高い分解能で区別でき、食中毒の原因究明、食品由来分離株と患者由来の分離株の関連を高い精度で示すことが出来ることがわかった。S. InfantisについてのNGS解析により、患者由来株と食材・動物由来株からなる近縁のペアが認められ、感染源となっていることが示唆された。特に患者由来株と鶏肉由来株で、NGSによるドラフトゲノム配列が完全に一致した例があり、直接的な関連が示唆された。さらに、S. Infantis株のうち薬剤耐性を示す株(患者由来株、食材由来株)における食品は全て鶏関連であり、鶏飼養における抗菌薬使用を検討する際の参考になると思われた。また、食中毒の原因と思われるCampylobacter lariのゲノム解析を実施し、病原性に関連する遺伝子の探索を行った結果53個の病原遺伝子が検出され、この様な解析が食中毒の原因究明に有用であると考えられた。さらに、カンピロバクター属菌についても網羅的遺伝子解析を行い、その有用性について評価を行った。
結論
愛媛県で分離された患者,食材(鶏肉,豚肉),家畜(豚)から分離されたS. Infantis 70株のNGSゲノム解析を実施し,食品もしくは家畜由来株と患者由来株との関係をより詳細に解析した。同一SNVを示した鶏肉由来と患者由来の2株は,同一クローンの可能性が高く,原因食品である可能性を強く示唆する。これらの結果は,NGSによる迅速ゲノム解析が,病原体の同定や分子疫学に基づく食品の安全確保対策に極めて有用であることを示している。また、カンピロバクターについてもNGS解析を行うことにより、詳細なデータを得ることであった。
今後、より多くの自治体で分離された食品由来、患者由来のサルモネラ属菌、カンピロバクター属菌等についてゲノムデータを蓄積し、その情報を共有することで、広域食中毒の早期探知のために役立てていく仕組みを構築する必要がある。
今後、より多くの自治体で分離された食品由来、患者由来のサルモネラ属菌、カンピロバクター属菌等についてゲノムデータを蓄積し、その情報を共有することで、広域食中毒の早期探知のために役立てていく仕組みを構築する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2016-07-06
更新日
-