畜水産食品中に含まれる動物用医薬品等の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201522005A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中に含まれる動物用医薬品等の安全性確保に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 吉田 敏則(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,096,000円
研究者交替、所属機関変更
鈴木和彦(平成25年4月1日~25年10月31日)→吉田敏則(平成25年11月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
動物薬の発がん性に関して、細胞周期障害に焦点を当てた発がん性短期予測指標の確立、ニトロフラン(NF)類の腎遺伝毒性発がん機序の解明、新たな非遺伝毒性発がん機序の解明を目指す。
研究方法
細胞周期指標解析では、ラットを用いて、腎発がん物質を最長28日間投与時の腎臓での各種チェックポイント関連分子の発現解析と、反復投与での反応性に乏しい肝発がん物質/プロモーターのポストイニシエーション期投与における肝臓での反応性を検討した。NF類の腎遺伝毒性解析では、Nrf2欠損gpt deltaマウスでのニトロフラントイン(NFT)とニトロフルフラール (NAF)のNRF2制御下の抗酸化酵素発現と8-OHdGレベルを解析した。また、非ミクロソームROS産生源であるNOXに着目し、高脂肪飼料給餌による高NOX状態で、抗真菌剤・肝毒性物質ジメトリダゾール(DRZ)の肝発がん促進作用を検討し、実験的な大腸炎誘発による肝臓への炎症波及による評価系の改良を行った。
結果と考察
細胞周期変化の解析では、腎発がん物質は肝発がん物質と異なり、発がん物質特異的な発現変動を誘発しなかった。肝発がん物質/プロモーターは、細胞毒性の増強により再生性増殖を誘発し、一方で、遺伝毒性発がん物質は、細胞増殖の亢進を伴わずにM期スピンドルチェックポイント機能の破綻を誘発することが推察された。NF類の解析では、Nqo1のmRNA及び蛋白発現レベルがNrf2ホモ欠損マウスで野生型に比べ低値を示した。8-OHdGレベルはNrf2ホモ欠損マウスのNFT高用量群で上昇し、NFTのin vivo変異原性に対する酸化的DNA損傷の関与が強く示唆された。肝発がん促進シグナルの解析では、DRZは血漿総コレステロールと中型以下の大きさの肝前がん病変を増加させ、それらはNOX阻害剤アポシニンにより抑制され、不完全ではあるがDRZのNOX依存的な肝発がん促進作用が見出された。
結論
動物薬等の反復投与での反応性に乏しい肝発がん物質・プロモーターは、ポストイニシエーション期での投与により、それらの発がん性の予測が可能であることが示唆された。NF類の酸化ストレス産生には、ニトロフラン骨格の側鎖の化学構造が重要であることが明らかとなった。大腸炎を負荷した状態での高NOX環境下のDRZによる発がん促進過程にNOXの関与が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201522005B
報告書区分
総合
研究課題名
畜水産食品中に含まれる動物用医薬品等の安全性確保に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 吉田 敏則(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門 )
  • 鈴木 和彦(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
鈴木和彦(平成25年4月1日~25年10月31日)→吉田敏則(平成25年11月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
動物薬の発がん性に関して、細胞周期障害に焦点を当てた発がん性短期予測指標の確立、ニトロフラン(NF)類の腎遺伝毒性発がん機序の解明、新たな非遺伝毒性発がん機序の解明を目指す。
研究方法
細胞周期指標解析では、ラットを用いて動物薬等の肝ないし腎発がん物質の最長90日間投与時ないし肝発がん物質/プロモーターのポストイニシエーション期投与での、標的臓器における細胞増殖活性や各種チェックポイント関連分子の発現解析を行った。NF類の腎遺伝毒性解析では、Nrf2欠損gpt deltaマウスでのニトロフラントイン(NFT)とニトロフルフラール (NAF)の腎臓でのin vivo変異原性と8-OHdGレベルを解析した。また、非ミクロソームROS産生源であるNOXに着目し、高脂肪飼料給餌による高NOX状態で、肝発がん性や肝毒性が知られている動物薬での肝発がん促進作用を検討し、実験的な大腸炎誘発による肝臓への炎症波及による評価系の改良を行った。
結果と考察
細胞周期変化の解析では、28日間投与で発がん物質特異的なM期スピンドルチェックポイント機能の破綻を示した肝発がん物質は、特異的にG1/Sポイント機能を破綻させること、腎発がん物質にもスピンドルチェックポイント機能の破綻を示すものがあること、反復投与による細胞増殖誘導性に乏しい肝発がん物質・肝発がんプロモーターは、ポストイニシエーション期投与で細胞毒性の増強により再生性増殖を誘発すること、遺伝毒性肝発がん物質は、細胞増殖の亢進を伴わずにスピンドルチェックポイント機能を破綻することが見出された。NF類の解析では、NFTのみでホモ欠損マウスにin vivo変異原性と8-OHdGレベルの上昇を認め、NFTのin vivo変異原性に対する酸化的DNA損傷の関与が強く示唆された。肝発がん促進シグナルの解析では、高脂肪飼料給餌による高NOX状態や大腸炎誘発による肝臓への炎症波及により、部分的ないし不完全なNOX依存的な肝発がん促進作用が見出された。
結論
動物薬等の28日間反復投与とポストイニシエーション期投与の組み合わせにより、発がん性の予測が可能であることが示唆された。NF類の酸化ストレス産生には、ニトロフラン骨格の側鎖の化学構造が重要であることが明らかとなった。脂肪負荷による高NOX環境下で大腸炎を誘発した状態での発がん促進過程にNOXの関与が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201522005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
動物薬等の発がん初期過程の細胞周期解析で検討している短期発がん予測指標候補として、M期スピンドルチェックポイント機能の障害指標等が得られ、28日間投与モデルと二段階発がんモデルを組み合わせた検出系が有効であることが証明された。ニトロフラン類の安全性評価法の確立研究では、遺伝毒性発現機序に関して、ヒトへの潜在的な発がんリスクを計る上で有用な情報が得られた。肝発がん促進シグナルの解析では、高NOX状態での非遺伝毒性機序の関与がはじめて見出され、慢性疾患時での発がんリスクに関する研究への道を開いた。
臨床的観点からの成果
今回の研究成果には、臨床的事項に該当する物は含まれていない。
ガイドライン等の開発
短期発がん予測指標候補として見出された細胞周期関連分子は、OECDテストガイドライン407等の28日間反復投与試験の枠組みで、発がん標的性の異なる発がん物質に共通して反応する短期発がん予測指標としての有用性が期待できる。
その他行政的観点からの成果
ニトロフラン類によるin vivo変異原性に酸化性ストレスの関与が見出され、それがニトロフラン骨格の側鎖構造に依存することが見出されたことにより、今後これらの物質のヒトへの潜在的な発がんリスクを評価する際に重要な基礎資料となり得る。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura, M., Mizukami, S.,Yoshida, T., Shibutani, M., et al.
Disruption of spindle checkpoint function ahead of facilitation of cell proliferation by repeated administration of hepatocarcinogens in rats.
J. Toxicol. Sci. , 40 (6) , 855-871  (2015)
原著論文2
Kimura, M., Mizukami, S.,Yoshida, T., Shibutani, M., et.al
Disruption of spindle checkpoint function in rats following 28 days of repeated administration of renal carcinogens.
J. Toxicol. Sci. , 41 (1) , 91-104  (2016)
原著論文3
Kijima, A., Ishii, Y., Nohmi, T., Umemura, T., et.al
Chemical structure-related mechanisms underlying in vivo genotoxicity induced by nitrofurantoin and its constituent moieties in gpt delta rats.
Toxicology , 331 , 125-135  (2015)
原著論文4
Kimura, M., Abe H., Yoshida T., Shibutani, M., et.al
Onset of hepatocarcinogen-specific cell proliferation and cell cycle aberration during the early stage of repeated hepatocarcinogen administration in rats.
J. Appl. Toxicol. , 36 (2) , 223-237  (2016)
原著論文5
Kimura M, Mizukami S, Watanabe Y, Onda N, Yoshida T, Shibutani M.
Aberrant cell cycle regulation in rat liver cells induced by post-initiation treatment with hepatocarcinogens/hepatocarcinogenic tumor promoters.
Exp Toxicol Pathol. , 68 (7) , 399-408  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-06-10
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201522005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,323,000円
(2)補助金確定額
5,323,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,705,723円
人件費・謝金 0円
旅費 167,830円
その他 1,222,447円
間接経費 1,227,000円
合計 5,323,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-