飲食店の労働災害防止のための自主対応を促進するサポート技術の開発とその展開方法に関する研究

文献情報

文献番号
201521013A
報告書区分
総括
研究課題名
飲食店の労働災害防止のための自主対応を促進するサポート技術の開発とその展開方法に関する研究
課題番号
H27-労働-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 一博(公益財団法人 労働科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 司(公益財団法人大原記念労働科学研究所)
  • 鈴木 一弥(公益財団法人大原記念労働科学研究所)
  • 余村 朋樹(公益財団法人大原記念労働科学研究所)
  • 松元 俊(公益財団法人大原記念労働科学研究所)
  • 松田 文子(公益財団法人大原記念労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.飲食業の労働災害防止のための自主対応を促進するサポートツール開発とその展開方法を策定するために,関連団体,労働組合,個別企業への半構造化面接調査によって各組織,また大・中・小規模の飲食店における労働災害防止活動の取り組みの実施状況を収集する。
2.個別企業のトップを集めて,労働災害対策の重要な背景要因となる勤務制、物理環境、人材育成などに関する優良企業事例を紹介するシンポジウムを開催し,その良好事例を学ぶとともに,飲食業における労働災害対策への取り組みの実態とニーズを整理する。
3.自主対応型の労働災害防止ツールの開発を達成するために,第12次労働災害防止計画の重点項目に挙げられている飲食業に対する都道府県労働局・労働基準監督署がすでに行っている法規準拠型アプローチ方法に学ぶ。
研究方法
半構造化面接は,4つの飲食業に関わる関連団体(協会,労働組合),また大・中・小規模の飲食店10個所に対して行った。シンポジウム「外食産業における働きやすさ向上シンポジウム(2016年3月2日)」は,外食産業関連団体および企業,労働組合に属する全90名を集めて東京国際フォーラムで開催した。労働局・労働基準監督署の飲食業へのアプローチ方法は,都道府県労働局,またHPに飲食業の労働災害に関する情報を掲載していた労働局・労働基準監督署への電話インタビュー及び,5労働局,3労働基準監督署への現地ヒアリングにより明らかにした。

結果と考察
ヒアリングの結果:勤務制、物理環境、人材育成についての現状と課題が明らかになった。
シンポジウムの結果:第三次産業独自の共通した自主対応型の仕組みを作りあげていることが明らかになった。それは、「働き甲斐(労働者満足度)」を通じて,技術伝承が継続的に行われることを示すものであった。その中には,自ずと「働き易さ(労働安全衛生)」も盛り込まれていた。
都道府県労働局・労働基準監督署へのヒアリングの結果:啓発・指導などを積極的に行っている様子が聴取できた。出席率は低く。食品衛生協会や保健所による講習会の一部での啓発もごく短時間であった。飲食業に特化した労働災害統計の分析が行われていない県が多いが、少数の死亡事例を詳細に分析して対策を独自に行っている労働局もあった。「飲食店本社連絡会議」を開いて,安全衛生対策の普及に努めている事例もあった。
勤務シフト、非正規の多さから安全衛生に対する伝達系が明確でないことが問題と考えられる。安全衛生の重要性の浸透とともに,簡便で効率的な取り組みの手法の開発と普及が望まれている。
企業規模別に共通する対策と異なる対策の2つの側面から行うことが肝要と思われる。共通対策として働き甲斐の中に働き易さを入れながら展開すること。そして、小規模飲食業を対象として,働き易さの重要性を「見える化」するツールの開発を通して,効率的にPDCAを回していくことが重要と思われる。
結論
飲食業のヒアリングに関する結果として,共通してあげられた項目は,勤務制に関すること,物理環境に関すること,人材育成に関することの3点であった。その中には,さまざまな工夫を凝らして課題を乗り越えている良好事例が多数みられた。
外食産業を対象としたシンポジウムの結果を整理すると,企業規模別に消費者目線に立ちつつも,「働き甲斐(労働者満足度)」の中に「働き易さ(労働安全衛生)」を取り入れた対策が取られていた。
自主対応型の労働災害防止ツール作成のために法規準拠型で行われれている都道府県労働局・労働基準監督署のアプローチに学ぶ点では,法規準拠型の対策の有効性が示された反面,第12次労働災害防止計画の施行にあたって,3年間の数値目標がある第三次産業の中で,とくに中・小規模の飲食店への対策の難しさが示された。また第二次産業のような安全衛生部門が確立されていない飲食業で,労働災害事例を調査分析する手法の難しさがあった。しかしながら,少ない重大労働災害事例数が特徴の飲食業においても,ヒアリングを通して得た良好事例を横展開することで安全衛生意識が底上げされる余地が十分あることも明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201521013Z