文献情報
文献番号
201521010A
報告書区分
総括
研究課題名
じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究
課題番号
H26-労働-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
芦澤 和人(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 臨床腫瘍学)
研究分担者(所属機関)
- 岸本 卓巳(岡山労災病院 呼吸器内科学)
- 荒川 浩明(獨協医科大学病院 放射線診断学)
- 大塚 義紀(北海道中央労災病院 呼吸器内科学)
- 加藤 勝也(川崎医科大学附属川崎病院 放射線医学(画像診断2))
- 高橋 雅士(医療法人友仁会 友仁山崎病院)
- 仁木 登(徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部)
- 野間 恵之(天理よろづ相談所病院 放射線部 診断部門)
- 本田 純久(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科医学統計学)
- 五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科医薬政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成22年5月のじん肺法における、じん肺健康診断等に関する検討会の報告書のなかで、胸部CT検査に関する3つの課題(1. 放射線被曝量が、単純X線写真に比べて高いこと、2. 事業者がじん肺健康診断の費用を負担すること、3. 読影技術の普及が必要であること)が示されており、これらについて検討する必要がある。
本研究では、胸部CT検査を行うことで、じん肺の診断の確信度が有意に上昇する症例、或いは胸部CT検査を用いなければ、的確な診断ができない症例の収集・分析を行い、胸部CT検査の有用性を検証し、じん肺健康診断における適切な診断基準及び手法の確立を目的とする。
本研究では、胸部CT検査を行うことで、じん肺の診断の確信度が有意に上昇する症例、或いは胸部CT検査を用いなければ、的確な診断ができない症例の収集・分析を行い、胸部CT検査の有用性を検証し、じん肺健康診断における適切な診断基準及び手法の確立を目的とする。
研究方法
本年度は、昨年度に引き続きデータベースの構築を行う。
質的診断に関しては、珪肺とサルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症等の鑑別が重要である。鑑別診断すべき疾患群の画像の収集を終了し、じん肺群と鑑別すべき疾患群の、胸部単純X線写真群とCT群に分けて読影実験を行い、CTの有用性を検討する。また、珪肺のPR0/1と1/0の鑑別に焦点をおき、CTにおける粒状影の定量化、コンピューター支援診断の応用を試みる。珪肺以外で溶接工肺に関してもCT 所見を検討する。さらに、胸部CT検査による被爆リスクに関する知見を収集する。最新CTでは、新たな逐次近似再構成法により、画質を保持したままで、胸部単純X線撮影と同程度の、低線量での撮像が可能となってきた。逐次近似再構成法による、低線量CT画像と通常線量CT画像における診断能に差がないかを、読影実験にて検討するために、画像の収集を行う。また、読影実験の準備を進める。
じん肺診査へのCT導入を考慮する前段階として、じん肺診査の過程で、地方じん肺診査医が胸部単純写真のみで診断を下している現状で、どの様な問題がどの程度存在するのかを明らかにすることを目的として、全国の診査医に対してアンケート調査を行う。
質的診断に関しては、珪肺とサルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症等の鑑別が重要である。鑑別診断すべき疾患群の画像の収集を終了し、じん肺群と鑑別すべき疾患群の、胸部単純X線写真群とCT群に分けて読影実験を行い、CTの有用性を検討する。また、珪肺のPR0/1と1/0の鑑別に焦点をおき、CTにおける粒状影の定量化、コンピューター支援診断の応用を試みる。珪肺以外で溶接工肺に関してもCT 所見を検討する。さらに、胸部CT検査による被爆リスクに関する知見を収集する。最新CTでは、新たな逐次近似再構成法により、画質を保持したままで、胸部単純X線撮影と同程度の、低線量での撮像が可能となってきた。逐次近似再構成法による、低線量CT画像と通常線量CT画像における診断能に差がないかを、読影実験にて検討するために、画像の収集を行う。また、読影実験の準備を進める。
じん肺診査へのCT導入を考慮する前段階として、じん肺診査の過程で、地方じん肺診査医が胸部単純写真のみで診断を下している現状で、どの様な問題がどの程度存在するのかを明らかにすることを目的として、全国の診査医に対してアンケート調査を行う。
結果と考察
質的診断に関して、じん肺と鑑別すべき疾患群として、サルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症、粟粒結核等の症例の収集が終了した。そこで、胸部単純X線写真群とCT群に分けて読影実験を行い、胸部CTの有用性が証明された。特に、放射線科医よりも呼吸器内科医で有用であった。
岡山労災病院のじん肺症例で、逐次近似再構成法による低線量CT画像と通常線量CT画像を撮像し、前向きの画像データ収集が終了した。低線量CT画像の通常線量CT画像に対する診断能の非劣性を証明するために、読影実験の準備を行った。また、これらの画像データの一部において、1mm再構成厚のデータに関しては、コンピューター支援診断の応用を試みた。コンピューター支援診断は、3mm以上の粒状影に対しては良好な検出能を示した。
じん肺症例(PR0/1)と粉じん吸入対照群(PR0/1)の胸部単純X線写真における上肺野主体の粒状影の差はわずかであり、判定は容易ではない。胸部CTでは、いずれも粒状影は認められるものの、その違いは胸部単純写真よりは大きい。今後、PR0/1,1/0症例を用いて読影実験を行う予定で有り、画像解析に適した症例を選択した。
地方じん肺診査医へのアンケート調査に関しては、各都道府県の労働局に対して2015年度1年間分のアンケートを送付した。データ解析後、PR0/1とPR1/0の鑑別およびじん肺と他疾患の鑑別において、地方じん肺診査医がCTを必要と感じていることが明らかとなった。
岡山労災病院のじん肺症例で、逐次近似再構成法による低線量CT画像と通常線量CT画像を撮像し、前向きの画像データ収集が終了した。低線量CT画像の通常線量CT画像に対する診断能の非劣性を証明するために、読影実験の準備を行った。また、これらの画像データの一部において、1mm再構成厚のデータに関しては、コンピューター支援診断の応用を試みた。コンピューター支援診断は、3mm以上の粒状影に対しては良好な検出能を示した。
じん肺症例(PR0/1)と粉じん吸入対照群(PR0/1)の胸部単純X線写真における上肺野主体の粒状影の差はわずかであり、判定は容易ではない。胸部CTでは、いずれも粒状影は認められるものの、その違いは胸部単純写真よりは大きい。今後、PR0/1,1/0症例を用いて読影実験を行う予定で有り、画像解析に適した症例を選択した。
地方じん肺診査医へのアンケート調査に関しては、各都道府県の労働局に対して2015年度1年間分のアンケートを送付した。データ解析後、PR0/1とPR1/0の鑑別およびじん肺と他疾患の鑑別において、地方じん肺診査医がCTを必要と感じていることが明らかとなった。
結論
じん肺およびじん肺と鑑別すべき疾患群における読影実験の結果から、胸部単純X線写真と比較して胸部CTの有用性が証明された。また、地方じん肺診査医へのアンケート調査から、PR0/1とPR1/0の鑑別およびじん肺と他疾患の鑑別において、地方じん肺診査医がCTを必要としていることが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2016-06-01
更新日
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