事業場におけるメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の研究

文献情報

文献番号
201521007A
報告書区分
総括
研究課題名
事業場におけるメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の研究
課題番号
H25-労働-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 明純(北里大学医学部)
  • 原谷隆史(労働安全衛生総合研究所)
  • 吉川 徹(労働安全衛生総合研究所)
  • 島津明人(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
  • 小田切優子(東京医科大学公衆衛生学・予防医学)
  • 錦戸典子(東海大学健康科学部看護学科)
  • 五十嵐千代(東京工科大学医療保健学部)
  • 森口次郎(一般財団法人京都工場保健会産業保健推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、事業場における職業性ストレスのリスクアセスメントと改善の手法について、(1)事業場規模や業種等に対応した実効性のある複数のモデル枠組みを開発し、(2)中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクアセスメントおよび対策のためのツールおよびマニュアルを開発し、(3)モデル事業を実施し、職業性ストレスのリスクアセスメントの実施可能性、有効性、残された課題を明らかにし、(4)事業場における職業性ストレスのリスクアセスメント手法の普及・支援方策をまとめ提案することである。
研究方法
本年度は以下の研究を行った。(1)国内外の情報収集を継続した。(2)異なったリスクアセスメントモデルとして、職業性ストレスのアセスメントツールの改善と開発,職業性ストレスの改善ツールの改善と開発,職場環境へのポジティブアプローチの開発を行った。(3)京都市および東京都大田区の中小規模事業場において職場環境改善モデル事業を行い,開発されたツール類や手法の実施可能性,有効性,残された課題を明らかにした。
結果と考察
1)国内外の情報収集とリスクアセスメントモデルの提案:イタリアでは,PRIMA-EF(European Framework For Psychosocial Risk Management)を活用し,労使がチェックリストを使って自らの職場のリスクアセスメントに取り組んでいることがヒヤリングにより明らかにされた。国内情報に関しては,経営分野の動向分析および良好実践事例分析を通じて,経営と健康管理との協調を積極的に推進することの重要性が明らかにされた。以上の情報を整理し、6つの手順からなる職業性ストレスのリスクアセスメントの基本要素を作成した。
2)ツールの開発と見直し:職業性ストレスのリスクアセスメントに関しては,新職業性ストレス簡易調査票の項目をチェック項目とし,専門家の助言やモデル事業での試行を通じて,ツールとマニュアルを作成した。職業性ストレスの改善ツールの改善と開発に関しては,中小規模事業場における職場環境改善ツールの要件を検討し,良好事例集,新職場改善ヒント集(新メンタルヘルスアクションチェックリスト),改善計画・報告シートの3点から構成される「新改善ツール」が開発された。職場環境へのポジティブアプローチに関しては,職場の資源(強み)に注目し,資源の充実を図ることを目的とした職場の資源(強み)チェクリスト,Excel集計マクロ,職場活性化グループワークのタイムテーブル,同記録シート,マニュアルの5点が開発された。
3)モデル事業の実施:京都市でのモデル事業では,リスクアセスメントツールを利用した事業場Aとポジティブアプローチを適用した事業場Bの2ヶ所で各手法の効果と課題が検討され、多くの社員の意見反映や効率的な活動に貢献する可能性が明らかにされた。大田区では,リスクアセスメントツールを利用した2つの事業場でモデル事業が行われ,リスクアセスメントツールが職場で活用できる有用であることが明らかにされた。
結論
最終年度の研究では、わが国の職場の心理社会的要因のリスクアセスメント対策の基本手順(6ステップ)が提案され、中小規模事業場でも適応可能な複数のリスクアセスメントモデルが開発され、それぞれについてツールとマニュアルが開発された。これらのツールを使用したモデル事業が実施され,これらのツールを用いた職場改善活動が中小規模事業場でも適応可能であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2017-03-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201521007B
報告書区分
総合
研究課題名
事業場におけるメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の研究
課題番号
H25-労働-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 明純(北里大学医学部)
  • 原谷隆史(労働安全衛生総合研究所)
  • 島津明人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 吉川 徹(労働安全衛生総合研究所)
  • 小田切優子(東京医科大学)
  • 錦戸典子(東海大学健康科学部看護学科)
  • 五十嵐千代(東京工科大学医療保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、事業場における職業性ストレスのリスクアセスメントと改善の手法について、(1)事業場規模や業種等に対応した実効性のある複数のモデル枠組みを開発し、(2)中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクアセスメントおよび対策のためのツールおよびマニュアルを開発し、(3)モデル事業を実施し、職業性ストレスのリスクアセスメントの実施可能性、有効性、残された課題を明らかにし、(4)事業場における職業性ストレスのリスクアセスメント手法の普及・支援方策をまとめ提案することである。
研究方法
本研究では3年間に以下の研究を行った。(1)事業場規模に応じた職業性ストレスのリスクアセスメント手法モデルを開発するために,国内外の情報収集を行った。(2)職業性ストレスのアセスメントツールの改善と開発,職業性ストレスの改善ツールの改善と開発,職場環境へのポジティブアプローチの開発を行った。(3)京都市および大田区の中小規模事業場において職場環境改善モデル事業を行い,開発されたツール類や手法の実施可能性,有効性,残された課題を明らかにした。
結果と考察
1.事業場規模に応じた職業性ストレスのリスクアセスメント手法のモデル開発:WHO仕事と健康部門・技術専門官のエヴェリン・コルトム博士を招へいしたシンポジウムでは、同博士から労働者の健康の重要性、心理社会的ハザードを管理することの重要性が増していること、職場を全人的な視点からみることとその利点、心理社会的ハザードの評価・管理について講演がなされた。英国でのヒヤリング,オランダおよびカナダの研究者・実務家との電話会議を通じて,法制化によりリスクアセスメントを義務化し、事業場の資源に合わせて方法を選択できることが対策の普及に効果的であること,評価結果に基づく対策について事業場の資源により選択の幅を持たせることの重要性が明らかにされた。イタリアでは,PRIMA-EFを活用し,労使がチェックリストを使って自らの職場のリスクアセスメントに取り組んでいることがヒヤリングにより明らかにされた。国内情報に関しては,経営分野の動向分析および良好実践事例分析を通じて,経営と健康管理との協調を積極的に推進することの重要性が明らかにされた。以上の情報を整理し、6つの手順からなる職業性ストレスのリスクアセスメントの基本要素を作成した。
2.リスクアセスメントおよびツールの開発と見直し:職業性ストレスのリスクアセスメントに関しては,新職業性ストレス簡易調査票の項目をチェック項目とし,専門家の助言やモデル事業での試行を通じて,ツールとマニュアルを作成した。職業性ストレスの改善ツールの改善と開発に関しては,中小規模事業場における職場環境改善ツールの要件を検討し,①良好事例集,②新職場改善ヒント集(新メンタルヘルスアクションチェックリスト),③改善計画・報告シートの3点から構成される「新改善ツール」が開発された。職場環境へのポジティブアプローチに関しては,職場の資源(強み)に注目し,資源の充実を図ることを目的とした①職場の資源(強み)チェクリスト,②Excel集計マクロ,③職場活性化グループワークのタイムテーブル,④同記録シート,⑤マニュアル,の5点が開発された。
3.モデル事業の実施:京都市でのモデル事業では,リスクアセスメントツールを利用した事業場Aとポジティブアプローチを適用した事業場Bの2ヶ所で各手法の効果と課題が検討された。いずれの事業場においても,事前にツールを記入して分析結果を用いたワークショップを行うことには課題があるものの,多くの社員の意見反映や効率的な活動に貢献する可能性が明らかにされた。大田区では,リスクアセスメントツールを利用した2つの事業場でモデル事業が行われ,リスクアセスメントツールが職場で活用できる有用であることが明らかにされた。一方で,経営層の理解に向けての工夫,労働者が間違いなく実施するための改善,活動を支援する産業保健職などの専門的な人材とその育成が必要であることも明らかにされた。
結論
国内外の文献レビュー、関連学会の動向調査,海外動向の情報収集をもとに、わが国の職場の心理社会的要因のリスクアセスメント対策の基本手順(6ステップ)を提案した。専門家および現場担当者の意見をふまえながら中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクおよび職場環境における強み(資源)のアセスメントおよび対策のためのツールとマニュアルが開発された。また,これらのツールを使用したモデル事業が実施され,これらのツールを用いた職場改善活動が中小規模事業場でも適応可能であることが示されるとともに,普及促進に必要な要因が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2017-03-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201521007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
事業場における職業性ストレスのリスクアセスメントと改善の手法について、(1)事業場規模や業種等に対応した実効性のある複数のモデル枠組みを開発し、(2)中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクアセスメントおよび対策のためのツールおよびマニュアルを開発し、(3)モデル事業を実施し、職業性ストレスのリスクアセスメントの実施可能性、有効性、残された課題を明らかにした。
臨床的観点からの成果
中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクおよび職場環境における強み(資源)のアセスメントおよび対策のためのツールとマニュアルが開発された。また,これらのツールを使用したモデル事業が実施され,これらのツールを用いた職場改善活動が中小規模事業場でも適応可能であることが示されるとともに,普及促進に必要な要因が明らかになった。
ガイドライン等の開発
わが国の職場の心理社会的要因のリスクアセスメント対策の基本手順(6ステップ)を提案した。
その他行政的観点からの成果
第12次労働災害防止計画における職場における過度のストレスの要因となるリスクを特定、評価し、必要な措置を講じてリスクを低減するリスクアセスメントのような新たな手法の開発に貢献した。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kim YH, Yoshikawa E, Yoshikawa T, et al
Utility of Action Checklists as a Consensus Building Tool
Industrial health , 53 (1) , 85-94  (2015)
原著論文2
Eguchi, H., Kawakami, N., Inoue, A et al.
Work engagement and high-sensitivity C-reactive protein levels among Japanese workers: A 1-year prospective cohort study
International Archives of Occupational and Environmental Health , 88 , 651-658  (2015)
原著論文3
Yoshikawa T, Ogami A, Muto T
Evaluation of participatory training in managing mental health for supervisory employees in the financial industry
J Hum Ergol (Tokyo) , 42 (1-2) , 45-54  (2013)
原著論文4
五十嵐千代、原谷隆史
中小規模事業場における職場環境改善モデル事業 (2)-大田区中小規模事業場におけるリスクアセスメントツールモデル事業の研究報告-
産業精神保健 , 24 , 223-232  (2016)
原著論文5
森口次郎、原谷隆史
中小規模事業場における職場環境改善モデル事業(1)
産業精神保健 , 24 , 217-222  (2016)
原著論文6
島津明人、錦戸典子
職場環境へのポジティブアプローチの開発
産業精神保健 , 24 , 211-216  (2016)
原著論文7
堤明純、小田切優子
仕事のストレスのリスクアセスメントツールの開発
産業精神保健 , 24 , 198-203  (2016)
原著論文8
錦戸典子
経営者の視点に沿った中小企業におけるメンタルヘルス対策促進 手法の検討
産業精神保健 , 24 , 193-197  (2016)
原著論文9
島津明人
事業場のメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の開発
産業精神保健 , 24 , 192-197  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-06-06
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201521007Z