文献情報
文献番号
201521005A
報告書区分
総括
研究課題名
中小企業用産業保健電子カルテの開発とそれによる効果的・効率的な産業保健手法に関する検討
課題番号
H25-労働-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 只野 祐((公社)全国労働衛生団体連合会)
- 櫻木園子(一般財団法人京都工場保健会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、国内中小企業における健康診断の活用実態を調査し、中小企業に提供可能な健康診断統合電子カルテあるいはツールを開発し、より実効的な産業保健サービスの定着と産業保健活動の充実を図ることを目的とする。
研究方法
1. iPHR実証実験
昨年までの本研究にて考案された概念に基づき、電子カルテおよびツールを企業外健診機関の協力の下、中小事業場2社を対象に健康診断データ管理と事後措置体制に組み込む介入実証実験を行った。
2.産業保健のためのiPHRに準じた情報コード体系作成の試み
健診システムやネットワークによるデータベースの互換性の向上と、産業保健の場における就業判定や包括的分析を行う等の活用のために、労働安全衛生法における健診データを核とした標準的なコード体系を策定し、これを産業保健の場でのデータ格納体系に提供することでiPHR活用を図ることとした。
3.保健指導の手引の作成
前年度に保健指導の手引き作成委員会により考案された「保健指導の手引」をさらに推敲し、労働衛生機関の保健師・看護師が、定期健康診断後の労働安全衛生法第66条の7に基づく保健指導を実施する場合、対象者の選定、対象者情報の収集、保健指導の実施、結果評価、事業者への報告という一連の流れの中で、留意すべき事項等を取りまとめた。
昨年までの本研究にて考案された概念に基づき、電子カルテおよびツールを企業外健診機関の協力の下、中小事業場2社を対象に健康診断データ管理と事後措置体制に組み込む介入実証実験を行った。
2.産業保健のためのiPHRに準じた情報コード体系作成の試み
健診システムやネットワークによるデータベースの互換性の向上と、産業保健の場における就業判定や包括的分析を行う等の活用のために、労働安全衛生法における健診データを核とした標準的なコード体系を策定し、これを産業保健の場でのデータ格納体系に提供することでiPHR活用を図ることとした。
3.保健指導の手引の作成
前年度に保健指導の手引き作成委員会により考案された「保健指導の手引」をさらに推敲し、労働衛生機関の保健師・看護師が、定期健康診断後の労働安全衛生法第66条の7に基づく保健指導を実施する場合、対象者の選定、対象者情報の収集、保健指導の実施、結果評価、事業者への報告という一連の流れの中で、留意すべき事項等を取りまとめた。
結果と考察
1. iPHR実証実験(報告)
事例 1:福岡県内の従業員約330名の製造業A社に勤務する社員を対象に、産業保健スタッフ主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。
事例 2:福岡県内の従業員約80名の製造業B社に勤務する社員を対象に、外部ベンダー主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。
事例1では産業保健スタッフ主導型のiPHRを導入し実証実験を行い、事例2では外部ベンダー主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。iPHR導入による具体的な効果の検証については今後の課題ではあるが、システム構築から実用までの間で、ネットワークの構築、事業場との連携、情報の伝達、法的整備、データフォーマットなどの課題が見受けられた。
2. 産業保健のためのiPHRに準じた情報コード体系作成の試み
この情報コード(OHEC)が取り扱う情報種類としては、以下のような項目を想定した。
1)個人属性情報:産業保健に必要な情報を網羅する。
2)病歴(既往歴・現病歴・治療状況):医療記録として耐えうるコード構造を持つ。
3)業務歴情報:有害業務や取扱物質に関する情報全てを網羅する。
4)問診情報:一般健診で使用されている問診、有害業務で用いる所定の問診、その他数千種類がカバーできる。
5)一般定期健診データ:労働基準監督署への報告に耐えうる構造を持ち、個別追加項目の取扱も可能。
6)特殊健診データ:数百に及ぶ健診項目があり、それらを全て取扱可能。
7)各種判定情報:上記特殊健診等に対応する各種判定を網羅し、就業上の判定もカバーする。
大凡の構造としてOHECは、大項目、中項目、細項目データアトリビュートなど計14桁程度のコードからなるものを策定した。
3.保健指導の手引の作成
概念として重用視した事項は、職域における保健指導の指導方針として、就業環境(作業内容、作業量、労働時間、勤務形態等)に着目し、生活習慣改善指導(栄養指導、運動指導、生活指導)にも留意しながら指導を行い、標準的な内容と手順のもとに実施・記録するということである。
保健指導の具体的内容においては、大項目として栄養指導・運動指導・生活指導の3項目を挙げた。保健指導対象者の有所見の状況にあわせて、「保健指導に当たってのチェックポイント」表を基に保健指導における情報収集ポイントと保健指導ポイントを整理し実際の指導に活用するものとした。
保健指導実施結果は「保健指導記録票」を考案し、結果をこの記録票に整理する。こととした。この記録票はiPHR(industrial Personal Health Record)との連携を図るため、コードを付した。
事例 1:福岡県内の従業員約330名の製造業A社に勤務する社員を対象に、産業保健スタッフ主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。
事例 2:福岡県内の従業員約80名の製造業B社に勤務する社員を対象に、外部ベンダー主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。
事例1では産業保健スタッフ主導型のiPHRを導入し実証実験を行い、事例2では外部ベンダー主導型のiPHRを導入し実証実験を行った。iPHR導入による具体的な効果の検証については今後の課題ではあるが、システム構築から実用までの間で、ネットワークの構築、事業場との連携、情報の伝達、法的整備、データフォーマットなどの課題が見受けられた。
2. 産業保健のためのiPHRに準じた情報コード体系作成の試み
この情報コード(OHEC)が取り扱う情報種類としては、以下のような項目を想定した。
1)個人属性情報:産業保健に必要な情報を網羅する。
2)病歴(既往歴・現病歴・治療状況):医療記録として耐えうるコード構造を持つ。
3)業務歴情報:有害業務や取扱物質に関する情報全てを網羅する。
4)問診情報:一般健診で使用されている問診、有害業務で用いる所定の問診、その他数千種類がカバーできる。
5)一般定期健診データ:労働基準監督署への報告に耐えうる構造を持ち、個別追加項目の取扱も可能。
6)特殊健診データ:数百に及ぶ健診項目があり、それらを全て取扱可能。
7)各種判定情報:上記特殊健診等に対応する各種判定を網羅し、就業上の判定もカバーする。
大凡の構造としてOHECは、大項目、中項目、細項目データアトリビュートなど計14桁程度のコードからなるものを策定した。
3.保健指導の手引の作成
概念として重用視した事項は、職域における保健指導の指導方針として、就業環境(作業内容、作業量、労働時間、勤務形態等)に着目し、生活習慣改善指導(栄養指導、運動指導、生活指導)にも留意しながら指導を行い、標準的な内容と手順のもとに実施・記録するということである。
保健指導の具体的内容においては、大項目として栄養指導・運動指導・生活指導の3項目を挙げた。保健指導対象者の有所見の状況にあわせて、「保健指導に当たってのチェックポイント」表を基に保健指導における情報収集ポイントと保健指導ポイントを整理し実際の指導に活用するものとした。
保健指導実施結果は「保健指導記録票」を考案し、結果をこの記録票に整理する。こととした。この記録票はiPHR(industrial Personal Health Record)との連携を図るため、コードを付した。
結論
iPHR導入による具体的な効果の検証については今後の課題ではあるが、システム構築から実用までの間で、ネットワークの構築、事業場との連携、情報の伝達、法的整備、データフォーマットなどの課題が見受けられた。今後の運用に当たっては事業場や健診機関の協力を得ながら、効果を検証していくとともに、各ステークホルダーが導入しやすいシステムに改訂していく必要があると思われた。本研究を通じ、有効な健康診断ツールを開発提供することで、中小企業における産業保健推進のモデルを構築することができると思われる。
公開日・更新日
公開日
2016-06-01
更新日
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