臨床研修の到達目標と連動した研修診療科に関する研究

文献情報

文献番号
201520053A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研修の到達目標と連動した研修診療科に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-021
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大滝 純司(北海道大学大学院医学研究科 医学教育推進センター)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 臨床疫学センター)
  • 野村 英樹(金沢大学附属病院 総合診療部)
  • 奈良 信雄(順天堂大学 医学部 医学教育研究室)
  • 前野 哲博(筑波大学 医学医療系臨床医学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年度に開始された現在の医師臨床研修制度は、平成22年度と27年度の二度にわたって見直しが行われた。平成27年度の見直しにあたって、医道審議会医師臨床研修部会は、次回の改定(平成32年度研修より適用予定)時に、臨床研修の到達目標と評価をも見直すことを提言している。
本研究は、到達目標と評価を見直す過程で必要になると考えられる情報を収集し、見直しの議論を建設的かつ効率的に進めるうえで有用と考えられる提案-具体的には、新たな到達目標、方略及び評価の案を作成し提示-することを目的とする。
研究方法
Ⅰ 新たな到達目標・方略・評価の原案作成
前年度に収集した関連情報をもとに本研究班の研究分担者・協力者が議論を重ね、新たな到達目標・方略・評価の原案を作成した。
Ⅱ 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループからのフィードバック
上記案を、医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループで提示し検討に供し、その検討結果を踏まえて、研究分担者・協力者でさらに議論を重ね、到達目標・方略・評価案をより精緻なものにする手順を繰り返した。
Ⅲ 医師の生涯にわたる共通到達目標作成に向けた調整
医学部卒前教育から卒後臨床研修、専門医養成研修、生涯学習という医師としてのキャリア全般の学習・研修段階に適用される共通の到達目標(水平軸-広さ-についての共通化であり、垂直軸-深さ-は各段階で異なる)とすべく、卒前医学教育のモデル・コア・カリキュラムの改定作業にあたっている委員会を始め、各段階に関わる省庁・団体・学会・委員会などとの調整を開始した。
結果と考察
本報告書作成時点での新到達目標案は、Ⅰ臨床研修の到達目標、Ⅱ臨床研修の方略、Ⅲ臨床研修の評価、そして、Ⅰ臨床研修の到達目標は「医師としての基本的な価値観」4項目、「資質・能力」9項目からなるものである。
本案は、コンピテンシーの概念に則って作成された。そうして、本到達目標を医師の生涯全般にわたる学習・研修の共通目標(水平軸-広さ-についての共通化であり、垂直軸-深さ-は各段階で異なる)とすべく、さまざまな省庁・団体・学会・委員会と調整にあたっていて、修正・統一化を図っているところである。
2016年5月時点の案は、医師のプロフェッショナリズムで扱われる基本的価値観・行動規範の部分を「医師としての基本的な価値観」として4項目、医師の能力として観察できる部分を「資質・能力」9項目(各項目にはさらに下位項目を有する)列挙している。今後とも、研究班の分担者・協力者間での議論のみでなく、医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループからのフィードバック、医師の生涯を通じた各段階での到達目標の作成に関わる省庁・団体・学会・委員会との意見調整などを経て、案の修正作業を続ける予定である。
医学部の卒前教育におけるモデル・コア・カリキュラムが2016年度に見直されることになり、日本専門医機構による専門医養成プログラムは今まさに策定されつつある。それに連動して日本医師会の生涯カリキュラムも部分的に改変がなされつつある。医師の生涯全般にわたって適用される共通の到達目標(水平軸-広さ-についての共通化であり、垂直軸-深さ-は各段階で異なる)を作成するにはまさに千載一遇のチャンスと言え、たとえ完璧な統一化でなくても、将来への布石となる共通化を図りたい。
結論
医学や診療に特化した知識・技術だけでなく、人格や行動規範といった人間の全体的な能力を対象とする<コンピテンシー>と表現されている概念に則り、医師のプロフェッショナリズムを中核に据えた、新たな到達目標・方略・評価案を作成し、修正作業を続けている。
医師としてのキャリア全般の学習・研修段階に適用される共通の到達目標(水平軸-広さ-についての共通化であり、垂直軸-深さ-は各段階で異なる)とすべく、各段階に関わる省庁・団体・学会・委員会などとの調整が行われている。

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520053C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医師臨床研修制度の次回(平成32年度)の見直しでは、到達目標をも見直すことになっていて、そのための原案作りを本研究班が担っている。①医学や診療に特化した知識・技術だけでなく、人格や行動規範といった人間の全体的な能力を対象とした、1990年代以降の教育学で<コンピテンシー>などと表現される概念に則った様式を採用したこと、②医師としてのキャリア全般の学習・研修段階に適用される共通の到達目標とすべく、関係団体と調整していること、の2点において、これまでにない成果が期待できる。
臨床的観点からの成果
すべての医師は医学部卒業後、国が定めた卒後臨床研修プログラムを修了しなくてはならない。したがって、本研究班が原案を策定している新たな到達目標は、将来のわが国の医師の臨床能力を決定するだけの影響力を有するものである。医学や診療に特化した知識・技術だけでなく、人格や行動規範といった人間の全体的な能力をも対象とした目標が策定されつつあり、医師の臨床能力の底上げ医繋がることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究班が作成している新たな到達目標の案は、医師臨床研修制度の次回(平成32年度)の見直しに向けて、「医道審議会医師臨床研修部会」および「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」での審議に供される。見直し時には、省令として公布、施行されるはずである。
その他行政的観点からの成果
本研究班で作成された案は「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」で検討された後、「医道審議会医師臨床研修部会」での審議に付される。「医道審議会医師臨床研修部会」で、すでに2回にわたって中間的な報告を行った。
その他のインパクト
現在までのところ、公開シンポジウムの開催は行っていないが、本研究班での討議内容や新たな到達目標の案は医学教育学会のシンポジウムや医療系のマスコミで扱われている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520053Z