将来の医療需要を踏まえた全国的な医師養成数の分析に関する研究

文献情報

文献番号
201520051A
報告書区分
総括
研究課題名
将来の医療需要を踏まえた全国的な医師養成数の分析に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-019
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 伸輔(千葉大学 予防医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井出 博生(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 土井 俊祐(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 竹内 公一(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究全体の目的は、将来の医師数について検討し、これと整合的な医師の養成数を考察することである。一度養成した医師は、働き続ける限り国内の医師供給数に影響を与えるので、医師の養成数、つまり医学部定員数は半世紀以上の長期を見据えた計画でなければならない。そのため、将来の医師供給数の動向を検討した上で、適切な医師養成数を求めることが重要である。一方で、各人が実際に勤務する時間は勤務形態、診療科等の専門性、ライフスタイルによって異なっているため、単純な人数のみを用いて医師の供給数等を比較検討することには問題があるだろう。そこで本研究では、研究を2つのパートに分けそれぞれ分担研究として実行した。1つ目は、今後の医学部定員数について複数のシナリオを作成した上で、医師・歯科医師・薬剤師調査の実績値に基づき性別・年齢別の就労状況を検討し、将来の医師供給数を推計したものである。2つ目は、医師個人の働き方を加味した検討を行うことを目的とし、千葉県の医師を対象として、過去の働き方とリタイアに関する目処等を調査したものである。
研究方法
医師供給数の推計については、医師・歯科医師・薬剤師調査の医師票及び医籍登録者一覧、及び医学部合格者数・国家試験に関するデータを取得し、データの整理と突合を行った上で解析し、過去の実績値を推計用のパラメータとして利用した。その上で、将来の医師供給数として医学部の定員数を複数の仮定とシナリオに基づき設定し、パラメータを基に将来の就業者数を算出した。過去の実績値については、基本的には入手可能な最新10年分のデータの傾向が維持されるものと仮定した。
医師個人の働き方を加味した検討を行うために、千葉県で勤務する医師を対象としてアンケートを実施した。アンケートはインターネット上に回答サイトを構築し、調査の実施の案内を千葉県県医師会、県内の23地区医師会、各医療施設の管理者(283病院)に対して発出した。調査項目は性別、年齢、居住市町村、勤務先市町村、医籍登録年、業務の種別、主たる業務内容、主たる診療科、高校卒業時の居住地、出身大学の所在地、医籍登録後の初回の勤務地、過去の週平均勤務時間、リタイアの目処とする年齢とした。
結果と考察
医師供給数の推計については、今後の医学部定員数を最も多く設定したシナリオでは2050年に約40.3万人と見込まれ、最も少なく設定したシナリオでも約37.8万人と、2014年現在と比べ約1.22~1.3倍の水準まで増加すると推計された。また、我が国の人口減少に伴い、将来の人口10万人対医師数は継続的に増加し、2012年現在のOECD単純平均を今後15年ほどで上回り、その後も増加が続くものと推計された。
医師個人の働き方を加味した検討については、調査の結果384名から回答が得られた。回答者の属性は、三師調査と比較して男性の割合が高く、年代もより高齢に偏っていた。週平均勤務時間については年代別、性別の差を見出すことはできなかったが、年齢が高くなるほど勤務時間が短くなり、30歳時点と比較して60歳時点での週平均勤務時間は8割であった。リタイアの目処については、男女共に「働ける限り働き続けたい」という回答が最多であった。
 本推計では、医師供給数はいずれのシナリオにおいても今後30年以上の長期にわたり継続的に増加していくことが示された。そもそも医学部定員数は医師不足の指摘を受け、各法整備のもと増員されており、2016年の9262人は我が国の歴史上最も多い定員数である。医師の養成には10年の年月を要すること、一度養成した医師は平均50年近くにわたり就労すること、今後の人口対医師数の伸び等を考慮すると、いずれ定員数の削減が必要になると考えられる。また、「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」において発表された目標では、2025年までに全国の病床を1割削減することを提唱しており、これを考慮すると病床が削減される病院で雇用される医師が大きく増加することは考えづらい。定員増により増えた医師が、将来どこでどのように働くのかについても、養成の段階から検討する必要があるようにも思われる。
結論
推計結果からは、医師供給数・総人口対医師数共に継続的に増加することが示された。今後、医師個人の性別や年齢別の就労状況について、就労時間や勤務場所、診療科や専門医等、あらゆる属性を考慮した検討が必要である。この検討に資する取り組みとして千葉県内に勤務している医師に対して、過去の働き方とリタイアに関する目処等を調査した。その結果、年齢を重ねるごとに医師の勤務時間は短縮し、例えば30歳時点と60歳時点では週平均勤務時間が2割短縮することがわかった。また多くの医師は生涯または70歳代まで勤務する意向を持っていることも明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201520051C

収支報告書

文献番号
201520051Z