中小医療機関向け医療機器保守点検のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201520050A
報告書区分
総括
研究課題名
中小医療機関向け医療機器保守点検のあり方に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-018
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 眞(公益財団法人 医療機器センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 第5次医療法改正(平成19年施行)により医療機関に対して医療機器の安全確保のための体制確保が義務づけられた。しかし、総務省の報告などによれば、臨床工学技士などの専門家が不足している中小医療機関では現実的な対応に苦慮しているものと推察される。そこで、本研究においては、施設の規模や専門家の有無によらず活用可能な中小医療機関向けの医療機器保守点検ガイドライン(以下、中小向けガイドライン)などを作成することを目的とする。
研究方法
1. 中小医療機関向け保守点検ガイドラインの対象医療機器の選定 生命維持に関連する医療機器から対象を選定した。
2. 既存の保守点検ガイドラインなどの分析 学会や職能団体などが作成・公表している医療機器保守管理に関連するガイドラインなどのうち、1.の対象に関するものを収集・分析し、中小向けガイドラインに必要と考えられる事項を検討した。
3. 中小医療機関向け保守点検ガイドラインの記載内容の検討 2.の点検内容について、中小向けガイドラインに記載すべき内容とその重要度について検討した。なお、その際、4.で調査した医療機器の運用などの現状を考慮した。
4. 中小医療機関における医療機器保守管理の現状の把握 厚生労働科学研究、医療機器関連団体などによる調査データを分析した。また、中小医療機関を訪問し、面接調査を行い、保守点検、スタッフに対する研修および安全性情報の管理の状況を調査した。
 なお、本研究班は、中小医療機関で医療安全や医療機器の保守管理の業務経験を有する臨床工学技士や看護師を中心に、アカデミア、医療機器関連団体により組織した。その他にオブザーバとして行政関係者(厚生労働省医政局経済課)が参加した。
結果と考察
1. 中小医療機関向け保守点検ガイドラインの対象医療機器の選定 生命維持に関連する医療機器のうち、医療法の特定機器として定められていること、中小医療機関で汎用されること、医療事故などが多数報告されていることなどの観点から、(1)人工呼吸器、(2)除細動器(AEDを含む)、(3)輸液ポンプ・シリンジポンプ、(4)閉鎖式保育器、(5)生体情報モニタの5製品群を選択した。
2. 既存の保守点検ガイドラインなどの分析 収集した5製品群の保守管理に関連するガイドラインは34種であった。これらを分析したところ、中小向けガイドラインの作成にあたり留意すべき点として、①患者の治療やケアを時間軸として日常点検の実施時期を示すこと、②使用後の「次回の使用に向けた点検(準備)」に重点をおくよう示すこと、③点検内容を重要度などにより分類し、自施設の診療内容などによって日常点検に必要な項目を検討できるように示すことなどがあげられた。
3. 中小医療機関向け保守点検ガイドラインの記載内容の検討 中小向けガイドラインに記載すべき点検内容について検討した。なお、本年度、抽出した点検内容は案であり、今後、医療機器企業や医療従事者の意見を聴取する。
4. 中小医療機関における医療機器保守管理の現状の把握 種々の調査データから、医療機器の中央管理部門がない施設では保守点検の実施率が概ね低いこと、病床数100床未満の施設では中央管理を実施している割合が少ないことが明らかとなった。そこで、徳島県および愛媛県の100床程度の4施設を対象に訪問面接調査を行った。いずれも看護師が中心となって医療機器の保守管理を行っていたが、①帳票類(管理台帳、保守点検計画書、研修計画書など)が整備されていないこと、②内容が適切か疑問を感じているものの専門家もおらず判断できないこと、③人的・時間的余裕がなく、保守点検のマニュアルやチェックリストなどが作成できていないこと、④安全使用のための研修や安全性情報の管理が充分とは言い難いことなどの現状を把握することができた。
結論
 医療機器の保守管理は、個々の医療機関において診療の内容や医療機器の運用方法などを考慮して立案・実施すべきものである。しかし、臨床工学技士などの専門家が不在あるいは不足している中小医療機関などにおいては、学会のガイドラインなどを参考に臨床現場に適応するものを立案することが困難であると考える。平成27年度は、既存の保守点検に関するガイドラインなどを分析し、中小医療機関にて活用可能なガイドラインとするために必要な事項を検討するとともに、記載されている点検内容について重要度を整理した。また、病床数100床程度の施設に対して訪問面接調査を行い、医療機器保守管理の現状を把握した。
 平成28年度以降は、この結果を基にガイドライン化の作業を進める。また、医療機関の訪問面接調査の結果から、医療機器の保守管理全般にわたる解説などの必要性も示されたことから、これらについても検討に加えることとする。

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520050Z