遠隔診療の有効性・安全性の定量的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201520049A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔診療の有効性・安全性の定量的評価に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-017
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
酒巻 哲夫(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本多正幸(長崎大学大学院医歯学系研究科)
  • 中島 直樹(九州大学医学部附属病院)
  • 森田 浩之(岐阜大学 医学部)
  • 齋藤 勇一郎(群馬大学医学部附属病院)
  • 郡 隆之(利根中央病院)
  • 野口 貴史(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔から医師の遠隔介入により、看護師単独より訪問看護の質的向上(迅速性、適切性など)が図れるとの仮説検証のための臨床研究をデザインし、プレスタディを行う。
研究方法
1.ニーズ調査
臨床試験対象の絞り込みのため、下記のニーズ調査を行った。
①遠隔医療従事者研修、受講者調査(2015.11 東京・大阪)
②患者調査
 本庄市、高松市、陸前高田市
③訪問調査
 北海道庁、岩手県庁、茨城県庁、和歌山県庁、香川県庁、名寄市、遠軽市、大船渡市、由利本荘市、伊勢崎市、新見市、旭川医科大学、岩手医科大学、和歌山県立医科大学、佐賀大学、徳之島
2.先行研究調査
①文献調査(医学中央雑誌収載文献)による遠隔医療エビデンスの有無
②本班の先行研究データ精査(平成22~23年度前向き研究データの再精査)レトロスペクティブ解析
3.在宅医療の診療報酬体系の調査
遠隔医療の請求対象候補、試験デザインの参考となる報酬項目の有無
結果と考察
1.結果
(1)ニーズ調査
・遠隔医療に取り組みたい医療者向け調査(研修会)
実施可能行為や処方、法的制約、請求できる診療報酬、可能な事業等への具体的疑問が多い。在宅患者へのテレビ電話診療、慢性疾患モニタリング、専門医から地域医師への指導などのニーズが高い。
・患者
しっかりした情報提供の元では、遠隔医療への関心や意識は高まる。
・地域行政
地域医療行政の調査では、医師確保・育成が各地共通の課題だった。若手研修・専門資格更新への遠隔教育や遠隔指導への期待が高い。地域包括ケア推進のためのICT活用の期待も高いが、目標が具体的に定められず苦労している。
・地域施設
在宅医療の提供能力拡充、域外の専門医療による在宅医療支援等のニーズが高い。未実施施設は可能行為や請求できる報酬が不明で躊躇し、実施施設では財源や担当者の不足の課題が大きい。エビデンス収集、質や記録管理、組織的運営スキームの整備が進んでいない。 
・共通課題
ガイドライン、事業立ち上げや業務支援サービス、実施の正当性保証、財源確保、エビデンス分析のニーズが高い。
(2)先行研究調査・文献等調査
下記形態の実施例を見出した。多施設研究は希である。
①DtoNtoP形態 医師不足の在宅医療地域内で、訪問看護師への指導
②DtoDtoP形態 同一診療科間の指導医・被指導医の支援
③DtoD形態 放射線科画像診断・病理診断など、事例が多い。
④モニタリング(D/NtoP形態) 心臓ペースメーカ等の具体的事例が増加。
(3)先行研究データ精査
2010~2011年度厚生労働科学研究「遠隔医療技術活用に関する諸外国と我が国の実態の比較調査研究」の収集データへレトロスペクティブ研究を実施した。遠隔からの医師指導により、訪問看護師の業務拡大・向上を示唆する結果を得た。
(4)在宅医療の診療報酬体系調査
新規追加の可能性を調査した。報酬項目整備が進み、追加・新設は困難であり、エビデンスも不足。電話等再診さえ活用経験が乏しく有用性や限界も検討不足だった。
2.考察
診療報酬拡大にはエビデンス不足である。また在宅医療の診療報酬は整備が進み新規加算の追加余地が少ない。すでに請求できる電話等再診さえエビデンス不足で、実態も課題も明らかではなかった。そのため多施設臨床試験の対象はニーズも高い「訪問診療とのセットによるDtoNtoPモデル」を選び、訪問看護の指導・支援強化の実証を行う必要がある。そこで事例収集、安全性と有効性エビデンス検証、新規参入時の支援手法、請求可能な診療報酬等をまとめた指針作りなどを進める必要がある。
 本研究により、在宅患者向け遠隔診療の研究が一段落する。遠隔医療総体に診療報酬を求める等の絞り込みが欠けた議論から脱却すべき時期が来た。今後は対象別に絞り込んだ研究を進めて、質向上・改善や普及活動に力点を移すべきである
結論
・電話等再診対象とした有効な対象、安全な実施の手法を示す具体的な遠隔診療指針の必要性が明らかになった。
・遠隔診療を立ち上げる支援手法の必要性が明らかになった。
・平成28年度に多施設パイロットスタディの研究ターゲットが定まった。
・処方指示や服薬減量・中止に関する安全性・有効性データを収集、評価する。
・上記研究の成果より在宅医療向け遠隔診療の実施指針を作る。

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
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収支報告書

文献番号
201520049Z