医療計画の評価と実効性の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201520047A
報告書区分
総括
研究課題名
医療計画の評価と実効性の向上に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-015
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
  • 藤森 研司(東北大学大学院 医療管理学分野)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院 医療政策情報学分野)
  • 石川 ベンジャミン光一(国立がん研究センター)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学)
  • 本田 浩(九州大学大学院 臨床放射線科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の医療計画については、その策定上の問題などが明らかになっていない。また、DPCやNDBに基づき国が提示した指標の使用実態や指標の意義、使われ方についても明らかではない。加えて、病床規制以外のCT装置やMRI装置の地域での配置の実態も明確ではない。そこで、これらの実態を解明し、来る平成30年度から始まる第7次(次期)医療計画の策定に寄与するために本研究を実施した。
研究方法
都道府県庁の医療計画担当部署に対するアンケート調査を実施し、問題点と次期医療計画に関する都道府県の考えを分析した。補足的に6か所の都道府県を選定し、聞き取り調査を行った。次に、「今後の医療需要を踏まえた医療機能の分化・連携を促すための地域医療ビジョン策定に向けて把握すべきデータやその活用方法に関する研究」により作成された地域医療に関するデータ集を医療計画策定にあたってどのように活用すべきかについて検討した。さらに病床機能報告制度のデータ等を用いて、それぞれの医療機関のCT装置、MRI装置の台数を集計、機能別の台数も集計した。加えてCT装置設置台数と診断専門医の配置の関係、診断専門医数と人口当たり診断専門医数などを分析した。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、必要に応じて研究分担者等が所属する施設の研究利益相反委員会および倫理審査委員会の承認を得ている。
結果と考察
都道府県に対する調査から、医療計画を策定する上で有用な指標とそうでないものとが峻別できた。指標とそれがどのような事業や結果を生むかについて、都道府県は理解しにくいことも明らかとなった。このように本研究により、指標をめぐる問題が同定された。また、次期医療計画の策定に向けて医療計画に関する都道府県の自主性や特色をいかにして発揮していくかという課題も浮き彫りとなった。
わが国のDPC及びNDBは諸外国の類似データに比較して非常に詳細であり、かつ悉皆性も高いことが再確認できた。しかも、経時的にそのデータが提供されることから医療計画策定及び進捗管理にあたって非常に重要なデータであることもわかった。これらのデータが適切に活用されることで、長年課題であったPDCAサイクルに基づく科学的な医療計画の策定と進捗管理が行われるようになることが期待されるという結論が得られた。
代表的な医療機器であるCT装置およびMRI装置の地域での設置状況については、病床機能報告制度では、CT装置は8892台、MRI装置は4765台であった。診療報酬施設基準届出では、CT装置は10621台、MRI装置は4350台であった。平成23年医療施設調査ではCT装置は12945台、MRI装置は5990台であった。病床機能報告制度では無床診療所の装置台数が報告されないことを考慮すると、装置数は概ね妥当な数と考えられた。CT装置・MRI装置1台当たりの患者数は、「0-99人/月」の階級が最も多かった。今回の調査によって、現在のCT装置、MRI装置の多くが、診断専門医等の管理下にないことが推察され、適切な安全管理や精度管理、被ばく情報管理等が行えていない可能性が示唆された。また、低稼働率のCT装置、MRI装置が多く存在することが示唆された。
結論
今後は、医療計画を病床の機能分化と病床数の規制のみならず、医療機器の適正配置も視野に入れて効果的・効率的なものにすることにより、地域の医療体制の改善や地域医療の質の向上、そして患者の利便性の向上などが図られるものと考えられる。加えて、都道府県における医療計画の策定体制と計画の内容・構成要素、国と都道府県の役割の明確化なども検討する必要がある。このように本研究成果は、厚生労働省における医療計画の見直しの検討及び平成28年度に次期医療計画の策定指針を定める際の基礎的・科学的な資料等として活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201520047Z