HIVの病原性決定因子に関する研究

文献情報

文献番号
199800518A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの病原性決定因子に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
田代 啓(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本庶佑(京都大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、SDF1遺伝子多型(3'A/3'A)によるAIDS発症遅延がどのような分子メカニズムによるのかを解明することを目的としている。
研究方法
内因性SDF-1タンパク質量測定系が無かったので、その樹立を行った。まず、抗SDF-1抗体を作製し、サンドイッチELISAの樹立を試みたが、感度が不十分で、ヒト血中SDF-1濃度の測定には至らなかった。そこで、より強くSDF-1を認識する抗体を得るために抗体作製を試みた。SDF-1タンパク質の7カ所のエピトープに対する抗ペプチド抗体及びMAP法による抗ペプチド抗体の作製と、SDF-1全長タンパク質及び得られた抗ペプチド抗体のうち、最も強くSDF-1を認識する抗体と同じペプチドを抗原として用いてモノクローナル抗体の作製を試みた。
結果と考察
SDF-1に対して高い親和性をもつ抗体は得にくかったが、一連の試みで、イムノアッセイに使える抗体のペアを得ることができた。一方、ランタノイド金属Eu3+を検出系に用いるイムノアッセイ系の導入と条件最適化を行った。それらを用いて樹立したイムノアッセイ系によって、血中SDF-1濃度測定が可能になった。米国NCIのO'Brien博士らは、十分な感度の測定系をもつアメリカ国内の共同研究者を見つけることができず、我々と共同研究を再び開始した。このことから、我々の樹立したSDF-1イムノアッセイ系は、現在のところ世界最高の感度と信頼性をもつと考えられる。我々は、本研究で樹立した測定系により、アメリカのコホートサンプル中のSDF-1タンパク質量を評価中である。また、世界唯一のSDF-1測定系を持つ利点を活かして、HIV感染からAIDによる死亡に至る各病期のSDF-1量の変動や、長期未発症者血中のSDF-1タンパク質量の測定を行っている。
もう一つの可能性として、AIDS発症遅延をもたらしているのは、SDF13'A遺伝子型そのものではなく、その近傍の連関する遺伝子である可能性がある。それを検討するため、SDF1遺伝子座の近傍に別の遺伝子が存在するかどうかを検討中である。
結論
主たるHIV-1ウイルス感染の場であるヒト胸腺やリンパ節内のSDF-1タンパク量測定は、現実には不可能なので、それら局所のSDF-1濃度と平衡関係にあり、局所SDF-1濃度を反映することが期待できる循環血中のSDF-1濃度を測定する系の樹立に成功した。現在、米国NCIのS. O'Brien博士らのグループから送られてきた米国のHIV-1感染者の血液中のSDF-1量を測定し、SDF1遺伝子系との相関の有無を検討中である。

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研究報告書(紙媒体)

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