アウトリーチ(訪問)型看護管理能力支援モデルの開発

文献情報

文献番号
201520034A
報告書区分
総括
研究課題名
アウトリーチ(訪問)型看護管理能力支援モデルの開発
課題番号
H26-医療-指定-031
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
手島 恵(千葉大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,479,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中小規模病院の看護管理者の人材育成能力における課題を明らかにし、支援の仕組みを検討する。
研究方法
1.平成26年度に検討した中小規模病院における看護管理能支援モデルの精錬、2.教材の開発、3.支援モデルの試行を行った。
結果と考察
平成26年度に実施した全国調査の結果で、中小規模病院からの回答の多くは、人材不足により、看護管理者が管理業務に専念できない状況にあり、研修を受ける時間の確保困難が示されていた。さらに、多様な背景をもつ中途採用者の管理に難渋しており、人材不足に対応するため、広告費用や派遣業者に支払う費用が経営を圧迫し、看護職員の研修費が削減されている現状や、大部分の研修が都市部で開催され、物理的、経済的に派遣できない状況、看護管理者が相談できる窓口を求めていることが明らかになった。一方、好事例の分析からは、看護管理が次世代育成に注力することにより、看護職員の定着がはかられ、良質なケアを提供することで大きな事故を回避することができ、経営への貢献が組織から評価されていた。
これらの結果を反映させ、看護管理能力支援モデルを、A看護管理能力開発に自ら取り組める組織、B看護管理能力開発方法を示すことでそれを活用して自ら取り組むことができる組織、C取組みに支援を必要とする組織と大きく3つに類別して検討した。
 自立して看護管理能力向上に取組むことができるように、好事例から抽出した内容ならびに全国調査から明らかになった課題を反映した教材をガイドとして作成し、Web上に公開した。
A自治体の中小規模病院270件余りに中小規模病院の看護管理者の能力向上のための研修会の案内状を送付し、研修会を実施しした。個別支援は、参加施設のうち支援を希望した3施設と、別に紹介を受けた2施設の合計5施設に対して実施した。
実施に際し、職場の状況を明らかにするために、支援の開始前に看護職員557名を対象として仕事や職場環境に対する意識を調査した。離職について明確な意思をしめした回答は、10%にとどまっているが、40~50%がわからないと回答していた。5施設に対し、5名の研究者が支援者として訪問し、個別の看護管理上のニーズや課題を聞き取りながら、中堅看護師を対象とした研修計画の企画などについて支援をおこなった。
結論
看護部門の責任者は、この取り組みを通し、多様性をふまえた人的資源管理のあり方について理解することで、管理の方向性を理解したと述べていた。組織全体への効果の波及は、継続的に評価を行い明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201520034B
報告書区分
総合
研究課題名
アウトリーチ(訪問)型看護管理能力支援モデルの開発
課題番号
H26-医療-指定-031
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
手島 恵(千葉大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中小規模病院の特性をふまえた看護管理者の看護管理能力向上における課題を明らかにし、支援の仕組みの検討と仕組みづくりを目的として取組む。
研究方法
平成26年度は、1.文献検討、2.好事例施設の看護管理者のインタビュー調査、3.全国の中小規模病院の病院長、事務部門責任者、看護部門責任者を対象とした質問紙調査を実施し、これらの結果から、4.中小規模病院の看護管理者の人材育成能力向上を支援する仕組みを検討した。平成27年度は、5.看護管理能支援モデルの精錬、6.教材の開発、7.支援モデルの試行を行った。
結果と考察
文献検討から中小規模病院は、組織構造からトップの影響を受けることが明らかになった。そのため、看護管理者に加え、病院長、事務部門責任者を調査の対象にした。協力が得られた好事例病院の看護管理者3名を対象としたインタビューを行い、その内容を分析し、共通する特徴を明らかにして、これらの内容を調査票作成の際に反映させた。看護管理者の能力は、Chase Nurse Manager Competency Instrument:CNMCI (Chase, 2010)を使用し全国の300床未満の中小規模病院6,985施設から層化無作為抽出した500施設を対象に調査票を送付した。結果、調査票の回収数は、40都道府県の96病院(回収率19.2%)であった。病院長、事務部門責任者、看護部門責任者の回答について因子分析を実施したところ、「問題解決技法の活用」「経営知識の活用」「エンパワメントの推進」「人間関係の調整」「人材の育成」「臨床実践の垂範」「業務の管理」「ポジティブ志向」の8因子が得られた。記述データの分析結果から、人材不足により、看護管理者が管理業務に専念できない状況にあり、研修を受ける時間の確保、多様な背景をもつ中途採用者の管理に難渋しており、人材不足に対応するため広告費用や派遣業者に支払う費用が経営を圧迫し、看護職員の研修費が削減されている現状が明らかになった。また、多くが都市部で開催される研修に、物理的、経済的に派遣できない現状や、看護管理者が相談できる窓口を求めていることが明らかになった。これらの結果を基に、中小規模病院における看護管理者の人材育成能力向上のための支援モデルを検討した。
この支援モデルを精錬するとともに、自立して看護管理能力向上に取組むことができるよう好事例から抽出した内容ならびに全国調査から明らかになった課題を反映した教材をガイドとして作成し、Web上に公開した。
訪問支援の試行にあたっては、A自治体の中小規模病院270件余りに中小規模病院の看護管理者の能力向上のための研修会の案内状を送付し、研修会を実施して周知した。訪問支援は5施設に対して実施した。訪問支援の対象となった職場の状況を明らかにするために、支援の開始前に5施設の看護職員557名を対象として仕事や職場環境に対する意識を調査した。離職について明確な意思を示した回答は、10%にとどまっているが、40~50%がわからないと回答していた。5施設に対し5名の研究者が支援者として訪問し、個別の看護管理上のニーズや課題を聞き取りながら、中堅看護師を対象とした研修計画の企画などについて支援をおこなった。看護部門の責任者は、この取り組みを通して多様性をふまえた人的資源管理のあり方やスキルを理解することで、管理の方向性を理解したと述べており、言動に看護管理者としての自信が生まれていた。組織全体への効果の波及は、継続的に評価を行い明らかにして、実用性や汎用性の確認をする必要がある。
結論
1.中小規模病院の看護管理者は、人材不足により、看護管理者が管理業務に専念できない状況にあり、研修を受ける時間の確保、多様な背景をもつ中途採用者の管理に難渋しており、人材不足に対応するため広告費用や派遣業者に支払う費用が経営を圧迫し、看護職員の研修費が削減されている現状が明らかになった。
2.好事例の病院では、看護管理者が、組織の中でリーダーシップを発揮することにより、看護職員が生き生きと看護することが楽しいと感じて仕事をしていた。
3.全国調査の結果、好事例から抽出した特長を反映した内容のガイドを活用することで、看護管理者に必要な基盤となる知識を得ることができると考えた。
4.開発した訪問型支援モデルの試行により、支援を受けた看護管理者の自信が生まれたり、研修計画の立案、組織における支援の仕組みづくりに取り組んだりして、一定の成果が明らかになった。
5.中小規模病院の看護管理能力向上の支援モデルを標準化するためには、継続して
看護管理や看護職員を対象として評価するのみならず、組織全体への波及効果について調査する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、日本では明らかになっていなかった300床未満の中小規模病院の看護管理者に必要な能力について、病院責任者、事務門責任者、看護部門責任者の観点から明らかにし、中小規模病院看護管理者能力向上を支援するガイドの作成、アウトリーチ(訪問)型支援モデルを構築した。これらをもとに5病院に対し各施設の多様性を反映した支援に取り組み、看護管理者の看護管理への理解の促進や看護管理実践への自信へとつながった。今後、組織全体への波及効果についても評価を継続し、本支援モデルの実用性や汎用性の検討をおこなう。
臨床的観点からの成果
日本全国の病院 の82%を占める 300 床未満の中小規模病院の看護管理者の能力の向上は、地域連携を推進しながら質の高い医療提供体制を構築するための鍵となる。しかし、看護管理者が研修を受ける機会は病院規模で格差があり、特に中小規模病院の管理者は、時間的負担や代替職員の確保が困難なことから参加が難しい状況にある。本研究で開発した中小規模病院の看護管理能力向上支援ガイドやアウトリーチ型の看護管理者支援は、中小規模病院の看護管理者の実態に即した、能力向上のための支援体制構築の基盤となる。
ガイドライン等の開発
平成26年度の文献検討と調査結果をもとに「中小規模病院の看護管理能力向上を支援するガイド」を開発し、平成28年2月26日に以下、厚生労働省サイト内に公開した。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113488.html
その他行政的観点からの成果
厚生労働省サイト内に公開された、「中小規模病院の看護管理能力向上を支援するガイド」は、地方の看護協会、医師会のサイトに引用されており活用が期待される。今後は、支援モデルの実施により明らかになった支援のあり方を基に、支援者の育成を検討する必要がある。また、支援方法についても、より効率的かつ効果的な支援方法について吟味し、それぞれの組織やグループに適した方法を検討することで、活用可能性が高まると考える。
その他のインパクト
ガイドの公開直後より、医療関連のブログやコラム等で本ガイドが取り上げられた。また、全国の中小規模病院看護管理者より、看護管理者のネットワークを介し本ガイドを知り、施設内での検討会や研修の資料として用いられていることが報告された。本ガイドが看護管理者の能力開発のツールとして更なる活用が期待されるとともに、本研究において研究班が支援を実施した施設の管理者を介し、各地域の看護管理者へとアウトリーチ(訪問)型看護管理者支援モデルによる支援の輪が広がることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,222,000円
(2)補助金確定額
3,222,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 114,067円
人件費・謝金 244,817円
旅費 770,428円
その他 1,349,688円
間接経費 743,000円
合計 3,222,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
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